伊勢神宮 A Social History of the Ise Shrines その2 | ReubenFan

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伊勢神宮/Ise Jingu

”A Social Histrory of the Ise Shrines”
Mark Teeuwen and John Breen -Bloomsbury Publishing. Kindle 2017/written in English

 

共著者John Breenが特に着目してページを費やしているのが、Chapter10 にある"Print Media, Propaganda and Critical Comment"から"Media and Performance"そして"CONCLUSION"のところではないでしょうか。

Johnは、ずっと「変容する伊勢」というテーマを送り続けています。それは、「古代からなにも変わらない伊勢・・」という公式?キャッチに対するメッセージなのでしょう。

彼は、「なにも変わらない伊勢」が持つ単なる歴史的事実との相違を述べているのではなく、その「なんとなくそれらしい」キャッチが発生する社会背景やそれを受け入れる一般国民が観察されています。

 

断定的な言葉を避け、社会事象を解釈しながら新聞、雑誌、パンフなど印刷メディアからTV、さらにネットにいたるマスメディアが送り続ける伊勢の概念と人々への刷り込みを、あくまでも客観的に記述しようとしているように見えます。この国の触れてはならないエリアに対するCriticism的な匂いのする活動は排除される恐れを彼は読み取っているのでしょう。

 

伊勢神宮の広報部門である神宮司庁の発する情報と取り上げるマスコミ、地方紙誌との関係も変遷していることを述べ、急速に影響力を持ちつつあるweb、SNSに対しても目を向け始めています。

Marketing Ploys というセクション以降、まとめであるCONCLUSIONでは、主要新聞の論調の変化や近年の首相を主とする政治の関りが描かれています。伊勢がまた新しい局面に入ってきていることを示唆しているのでしょうか。

この著の出版後迎えた令和の出だしでは、John Breenの捉えた動きがまさに表層化しているように感じました。

 

締めの文は、

This event offers further evidence that in the hands of Prime Minister Abe Shinzō, Ise’s divine capital is entering a new cycle of development.

PS
NHKは、2019/4/18のニュースで「皇室の祖先の『天照大神』をまつる伊勢神宮の内宮」と報じて、大きな批判を受けた後、間違いを認め釈明しています。このような記事を書いた記者、チェックした組織そしてほとんどの人は、なんの疑問も持たなかったのでしょう。気になるのでは、そこには、なんら政治的な意図はなかったことです。 「マスコミ的に大衆に受ける表現」として、すでに人々の潜在意識に入り込んでいることを感じます。これも、John Breenのいう変容なのでしょうか。
古事記、日本書紀によって創られた現人神という位置付けが、大正時代以降この国の政治にどのように利用されたのか、遠い昭和時代の記憶はもう消えていくのでしょう。

 


John Breenは、国の交付金によって運営されている大学共同利用機関「日文研」の研究者であり、その枠内から海外の出版社で英文著書として発信しています。

畑違いの輩の勝手な解釈ですが、少しづつ読みながら、加筆、修正することにします。

 

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