よく見ると、その堰堤の右側が大きく崩壊している。
嫌な予感を抱きつつ、堰堤の上までよじ登ってみた。
そして、かつての池の底は、イノシシのヌタ場と化していた。
ただ、最近こうなったわけではなく、
決壊してからかなりの年月が経過しているようだった。
あれは何だ?
えぐれた谷底に横たわる不審な石柱を発見。
さらに接近すると、薄っすらと文字が彫り込んであるのがわかった。
〝溜池復旧
昭和十四年十月〟
これは、今から80年前にこの溜め池を修復した際の、復旧記念碑であった。
碑を建てるのは、
過去にも決壊を起こした事を後世に伝える、という意味もあるのだろうが、
それでも、長年にわたって下流の田畑を潤してきたこの溜め池に対する、
地域住民の愛着の表れのような、
そんな気もしてくる。
そしてこの溜め池は、戦後の食糧事情の向上とともに、最後の決壊を機にその役目を終えたのである。
昭和37年当時の溜め池。かつては多くの田畑へ水を供給していたのがわかる(写真:国土地理院)
しかし、道中に見かけたレンガ小屋にしても、水田跡にしても、
己に課せられた使命をただひたすらに全うし、ゆっくりと自然に還っていく姿は、
どことなく誇らしげで、神々しさすら漂っている。
人間たるわたくしも、いづれはかくありたい…










