この頃は、平家物語の朗読をよく聴く。成り上がりの清盛も、無茶をせず、善政を行っていれば、もっと長く平家の御代が続いていたのだろうと思う。少なくとも滅亡することはなかった。頼朝が挙兵するということもなかっただろう。
母親曰く、実家の先祖は平家の落人、説が正しければ、私なども貴族として優雅な暮らしを送る子孫である可能性もあった。それも荒唐無稽な話ではなく、先祖代々の菩提寺のすぐ裏に、私の先祖の室町時代から続く墓がある。時代的にあり得ないことでもない。
そんなことを思いめぐらしながら老いつつある自分からの現実逃避でごまかしている。
平家物語と言えば、平家滅亡までを悲しい楽調で、琵琶法師たちによって今日まで語り継がれたものだが、ビワの木も、それに似た私の身の上を察知したか、今では2mの実を付けるまで成長した。去年からようやく実が付きだした。それで今年は実を増やすことにした。結果、40個くらいの大きさの楕円形の実を収穫した。少し、渋みはあるものの、店頭に出ているものよりも甘い。
琵琶にまつわる迷信など、この歳になるともう、どうでもよい。庭には、大実サンザシが毎年実をつけるし、グミも実も山猿のように口に放り込んだ。桑の実もジャムに小さな鍋いっぱいに煮込んだ。秋には甘い香りのフェイジョアの実も楽しみだ。