<2016改訂版>フレンチポリッシュで使用する天然塗料 シェラック(セラック) | リストリーアンティーク家具修復の世界|名古屋

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フレンチポリッシャーという仕事とその作業道具

 

※2013年10月公開、2014年10月に更新した、この記事ですが「シェラックニス」・「フレンチポリッシュ」でのGOOGLE検索では常に1位表示され、みなさんこちらの記事を見てくださっている様なので2年ぶりに更新です。

 

 

まずは、
フレンチポリッシャーって何?

参照リンク: フレンチポリッシュに使用するシェラックとは(THE RESTORY WEB)

 

「フレンチポリッシャー」普段の生活ではまったく耳にしない職業ですよね。

私もロンドンのアンティーク工房に就職するまでは、全く聞きなれない言葉でした。

簡単に言えば、家具構造の木工作業を行う職人がキャビネットメーカーと呼ばれ、
家具塗装(フレンチポリッシュ)を行う職人のことを フレンチポリッシャー と呼びます。

私が勤めていたロンドンの家具工房はThe Guild of Master Craftsmen認定店だったので
一定以上のレベルが保証された職人が集まるプロ集団でしたが、
当時飛び込みで就職活動していた私を拾ってくれ、アンティーク家具修復のノウハウをこれでもかと叩き込んでくれました。
後にも先にもズブの素人であの会社の門を叩いたのは私だけ。おかげで今の生活があるんです。

話がずれてしまいましたが、
フレンチポリッシャーと言うのはフレンチポリッシュをする者の意味です。

フレンチポリッシュは日本ではタンポと呼ばれる塗装技術で
コットンをキメの細かい布で包みシェラックニスを染み込ませキュッと絞ってパッと塗る。
塗る という感覚よりも撫でながらのせる?のような
非常に繊細で説明が難しい塗装技術です。

 

化学塗料を使った塗装とは全く異なり
シェラックニスが何ミクロン単位の層しかできないので、数分で固まります。
ですので、塗っては磨き、塗っては磨きを一日に何度も何度も繰り返し層を増やしていきます。

幾度も塗り重ねる事によって光の屈折を作り出し、通常の塗装では得られない深みのあるアンティーク独特の輝きに近づきます。

熱やアルコール類には滅法弱いですが、完全な自然物で構成されている塗装は日本の漆のように家具の呼吸を妨げることなく、人体への影響もありません。
昨今のウレタン塗装などとは比べられる物ではありません。

 

 

・シェラック(セラック)ってなに?
参照リンク: フレンチポリッシュに使用するシェラックとは(THE RESTORY WEB)

19世紀頃のアンティーク家具と呼ばれる家具たちのほとんどがこのシェラックを使って塗装されています。

元の原料は東南アジア、主に亜熱帯地域に多く生息する虫、ラックカイガラムシ。

ネットでそのものを見たことがありますが、この美しい仕上げからは想像もできない代物です。
このラック虫を精製したものが・・・

 

 

 

このシェラックフレークです。(日本ではセラックとも)
フレーク状になっている事からシェラックフレークと呼ばれます。

光に反射すると美しくキラキラした宝石のようにも見えます。

ヨーロッパではこのシェラックフレークをアルコールで溶かし
ポリタンクに入った状態の商品(Mylans社製LIBERON社製Jenkinsなど)が販売されていて、私の工房でも溶かした状態で仕入れ、使用していました。ちなみにMylansとJenkinsのものを使っていました。

ですが、日本で自らの工房を持つ準備をしていた所でアルコールを使った製品の輸入コストと入手方法が簡単ではなく、別の方法を考えた結果。
(日本国内でも販売している業者はありますが、大変高価です。)

シェラックフレークを輸入し、自社工房でメタノールで溶かす事にしました。

手間ではありますが、こうすることでその時の環境にあった適度な濃度のポリッシュが可能になるわけです。

 


ひとくちにシェラックと言ってもたくさんの種類があります。

実際に私が使用しているシェラックフレークは4種類で、

 

 

ガーネットラック

宝石のガーネットが名前の由来となっています。

ラックカイガラムシの色素を残し、油分だけを取り除いたシェラックです。木色の薄い気に添付するとほんのりと赤茶色に仕上がります。

 


ワックス成分を含んだガーネットラック

上記のガーネットラックの原型となるシェラック。

色素も油分もそのままに、特質手を加えていないオリジナルにちかいものです。

ワックス成分を多く含んでいますので、仕上がりが柔らかく、艶もまた違います。

 

 

レモンシェラック

ガーネットラックの茶色の色素を脱色させたシェラックです。

色素が薄くなった分、塗装する際に下地の色を邪魔しないので修復の際にはとても重宝します。

 

 

スーパーブロンズシェラック

レモンシェラック以上にブリーチし、極限まで色素を落としたシェラックです。

シェラックの中でも最も高価で、塗膜も硬く、テーブルトップなどの仕上げに好んで使います。

 

このように、シェラックにもいろいろな種類があります。

これらを作品に応じて具合のよい割合で調合していきます。
一般では「シェラック1カット(12g): エタノール100cc」で計算して2~3カット家具塗装に適していると言われています。
私の場合大体30%シェラックをワックス成分の有り無しで薄めて使います。

 

 


左から、

エタノール・レモンシェラック・油性ガーネット・ガーネットラック

※個人で溶解する場合は薬局で手に入る無水エタノールのように水分が含まれないものが好ましいです。
このようにエタノールで溶かした状態のシェラックがシェラックニスとなります。

 

以上のようにエタノールで溶解したものを…

 

 

 

綿を布で包んだものに染み込ませて何度も何度も重ね塗装していきます。
塗っては磨いて塗っては磨いてを繰り替えすわけです。

 

一般的な塗装は平均して3度塗りで終わってしまうのに対して、

フレンチポリッシュは同じ厚みに到達するまで、200~300以上の塗りを施します。

 

最終出来上がりは材質によって様々ですが、

 

 

アンティーク家具独特の深みある色艶に仕上がります。
シェラックを使ったフレンチポリッシュでなければこのような仕上がりにはなりません。

他にもシェラックを使った塗装方法がありますので、ご紹介します。

この方法はシェラックニスの他にベジタブルピグメント(天然顔料)を使用し、

新しく作り直した箇所や、色落ちしてしまった場所に塗装し、全体のバランスを整える作業です。

 

 

 

顔料少量をシェラックニスで溶かし多種筆で木目を描いたり、補修跡を色合わせして消したりします。

こうして描いた上に更にフレンチポリッシュを施すと、周りと馴染んでどこを描いたのかわからない程に自然に仕上がります。

 

このように、フレンチポリッシュは他の塗装方法にはない素材と技術で仕上がるため、大変高価な職人技法です。

 

家具の世界に限らず、ヴァイオリンの登場と共にチェロ、ギターなどの木製楽器の塗装技術や食品の加工(主にチョコレートの塗膜)さらにはネイルペイントまで広く知られています。


昨今のウレタン塗装と比べると熱に弱い特性がありますが、100%天然素材ですので、木材の呼吸を妨げることなく、人体にも悪影響がありません。

 

当店ではアンティーク家具の価値を下げることなくこれからも長く、大切にお使い頂くためにシェラックによるフレンチポリッシュ仕上げをお勧めしております。

長くなってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございました。
フレンチポリッシュやシェラックについて少しご理解いただけたかと思います。

フレンチポリッシュ仕上げの鏡面具合をみる

フレンチポリッシュを施したリメイク事例はこちら

 

フレンチポリッシュによる修復事例はこちら

 

 

 

 

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国内でのフレンチポリッシュの需要はかなり少ないと思うのですが、嬉しい事に全国からお問い合わせを頂きます。シェラックの購入を検討されている方へは必要分お譲りする事も可能ですし、教えてと言われれば塗装方法も教えます。ただ弟子をとる気は今のところありませんので、求人は他を当たってください。

 

 

 

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