独立人事総務業務請負人(人事総務IC)の木村勝です。
自動車が18日、電機大手組合も19日にベア6000円を内容とする要求書を経営側に提出しました。
金属労協JCM(なじみ深いIMF-JCから2012年9月に英文略称が変わっています)の主要産別である自動車、電機が春闘を引っ張る構図は従来通りです。
当方も以前経営者側業種団体で春闘業務を担当していたことがありますので、今後の交渉の行方には大変興味があります。
まだ、要求書を受け取った状況、交渉前段階ですが、経営側のコメントを見ると昨年12月16日の政労使会議での合意を踏まえた慎重な物言いが目立ちます。
「賃金については、ベアも一時金も含めた総報酬で検討」
「ベアも選択肢の一つ」 等々
しかしながら、(今回各社満額回答かどうかは?ですが)円安メリットを享受しているこうした自動車・電機各社の賃揚げ幅が不十分な水準では社会的にもなかなか理解は得られない状況もありますので、前年を大幅に上回る回答となることは間違いないと思います。
また、要求内容を見ても昨今の賃金制度の見直しにより、昔のように「定昇+ベア」という単純な要求ではなくなっています。
「賃金改善分」「賃金引上げ」「平均賃金改定原資」「賃金体系維持分+賃金改善分」
等々
人事担当者以外で正確にこうした「賃金カーブ維持分とベア」の区分がついている従業員は少ないのではないでしょうか。
また、更に政労使会議の合意書で触れられていますが、政労使の取組項目として「賃金体系の在り方」見直しが掲げられていますので、こうした部分も問題を複雑にしています。
(おそらく多くの企業では)こうした取組の方針を踏まえ、ベア実施の場合でも以前のような年齢給テーブルや資格手当テーブルの書き換えといったわかりやすい一律的なベアではなく、65歳雇用の義務化に対応した賃金カーブの見直し(≒年功賃金の見直し)にそのベア原資の一部が充当される場合も多いと思われます。
ただでさえわかりにくい要求内容ですが、ベアも一律的なあて方がされないとなると、「今年は自分の給料も6000円上がる!」と期待していた人も、あけてみたら期待外れというケースも頻出するのではないでしょうか。
また、一方の当事者である人事側も ”入社以来、今回がベア改訂初めて!”という人事担当の方も多いと思われます。
今年の春闘が日本の経済に与える影響(トリクルダウン含め)は大きいものがあります。
人事担当者としては、妥結から短い時間で将来の賃金カーブを睨みながら配分を考えるという難題に直面することになりますが、この時期にこうした実務を担えることは、後々振り返ると貴重な経験になるかと思います。
自動車は3月18日が集中回答日です。
今後の交渉状況、注視したいと思います。