不妊症で鍼治療を行った後、出産後に産後うつ病になった方の施術例
※今回の掲載は本人に了解を得ている事例であることと、個人を特定できないように施しをしております。
産後うつ(周産期のうつ・不安)で困られている方やご夫婦が鍼の施術や認知行動療法を受ける参考になれば幸いです。
今回は、
クリニックで不妊治療を受けられている方に対して、鍼治療によるサポートを行っておりますが、今回は不妊治療に対する鍼治療を受けに来られていた方が6カ月で卒業されたが、その後、産後うつ病になられた方に対して鍼治療と認知行動療法の併用で施術を行った方です。
本人・30代 初産
お二人とも会社員で当ルームに来られた時は、クリニックで不妊治療を受けられていて、タイミングを2回試していたがうまくいかずステップアップした時期でした。
問診後に自律神経機能の検査を行い自律神経の状態を確認した。
次に簡単な性差のレクチャーを行い、鍼治療を行った。
鍼治療は、週1回ペースで2クール・6カ月行い問題はないということで卒業、無事に妊娠・出産となった。
ただその後、産後うつ病を発症したために精神科を受診。お薬での治療を受けていただか、抑うつ気分が今一つ回復しないために、第一子の生後5か月時に医師の紹介で当ルームに夫婦で再来室。
今回は鍼治療に加え認知行動療法を行う。
職業:会社員
性格:真面目、神経質、内向的、こだわりが強い
既往歴(過去に大きな病気をした経験):重篤な病気や入院・手術はしたこともない/うつ病や不安障害の既往もなかった。
たばこ:吸わない
お酒:たまに飲む程度
趣味:スポーツ観戦
家族:夫・30代 長男・5カ月
結婚:4年目・夫婦仲は良好
当ルームでの検査結果
●エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS):14点
●:QIDS-J(簡易抑うつ症状尺度):14(中等度)
●CMI健康調査票:領域Ⅳ(神経症の可能性が強い)
※CMI健康調査票は身体的自覚症(12系統別)と精神的自覚症(6状態別)を把握と、そこから神経症(ストレスによって精神が疲弊した状態)かどうかの確認をする検査です。
施術の方針と施術の内容
施術方針としては、産後うつ病ということで鍼治療単独では効果が期待できないので、はじめから鍼治療と認知行動療法の併用で行う。
また、毎回ご主人も一緒に来られるということなので夫婦で認知行動療法を受けてもらうこととした。
認知行動療法の進め方としては、お話をさせていただいてベーシックな認知再構成法という技法を中心に進めていけるであろうと考えた。また、途中状態によっては適時必要な技法を追加で行うことにした。
ペースは当初、週1回とする。
鍼治療として、
1、うつ病の場合、脳の血流量が低下しているために脳血流の改善とセロトニンの活性化。
●脳血流改善を目的に、四肢末端への鍼治療プラス低周波鍼通電(20分~30分程度)(どこのツボではなく肘から先と膝から先に鍼治療を行うことで、脳血流が改善することがわかっている)
●頭のてっぺん付近(ツボ名は百会<ひゃくえ>)と眉間(ツボ名は印堂<いんどう>)に鍼治療プラス低周波鍼通電(20分程度)
●脳血流改善を目的に、特に左前頭葉の2か所に鍼治療プラス低周波鍼通電(20分~30分程度)
2、上記の1、の目的同様に耳鍼と眼窩上神経、眼窩下神経、オトガイ神経に置鍼。
4、頭部や背部、頸部の張りや重だるさなどの症状に対しては、訴えたときのみ対応する。
うつ病への鍼治療の効果研究を目的にNIRSという機器で脳血流量測定。
千田が精神科医の協力のもと約1年6カ月研究を行いました。
掲載許可済
※千田の鍼治療の専門は、うつ病や心身使用などのストレス疾患と自律神経関連疾患、不妊症、痛みです。
認知行動療法として、
認知再構成法は、3つのコラムという方法からはじめて5つのコラム、7つのコラムと順次進めていった。
途中、メリット・ディメリット、行動活性化という方法を用いた。
※認知再構成法(コラム法)とは、ネガティブになっている考えやイメージを適応的な考え方に置き換えていくための練習方法です。
ホームワークは、(自宅で行ってきてもらう課題)
1、認知再構成法はノートなど書いてもらうが、産後うつの方の場合はスマホに打ち込んでもらうようにしている。
2、リラクゼーションの方法として『呼吸法』から始めて『漸進的筋弛緩法』
3、ユーチューブを参考に『ヨーガ』周産期バージョン
4、行動活性化という方法を用いる。
施術時間と1回セッションの進め方は、
施術時間は70分間とした。
はじめに認知行動療法を約40分間、その後鍼治療を約30分間行うこととした。(それぞれの施術時間については、その時々で多少変更することがある)
※施術時間について、当ルームの本来の時間は50分間又は90分間であるが、鍼治療と認知行動療法の併用では、患者さんの状態によって相談のうえで変えることもある。
⇒
初診時
現在の困りごとを伺いうつ病のスクリーニングテストとしてEPDSを行う。
次に、症状や状態の説明を認知モデル/認知行動モデルで説明を行った後に、動機づけ面接法も取り入れながら共感と支持を中心にカウンセリングを行った。
ホームワークとしては、CMI健康調査票の記入してきてもらうことと、千田が作成した認知の特徴のシートのチェックを行うこととした。
※認知モデル/認知行動モデルとは、認知行動療法で状態を説明するときに用いる方法。
簡単に言うと、状況に対してどのような認知(捉え方)をしたかによって、気分や行動、身体化に影響を及ぼすという仮説である。
状況⇒認知(物事の捉え方)⇒気分-行動-身体化
今回の施術イメージ
認知行動療法で『認知』と『行動』修正を行い、鍼治療で『身体化(脳と自律神経)』の脳の血流量改善や自律神経のバランス調整も行うことで、『認知』『行動』『身体化』の3つの方向から同時にアプローチをしていく。
2セッション~3セッション(1週間隔)
前回の施術後の確認。鍼当たりがあったかどうかなどネガティブな要因と考え方などのポジティブな変化についての確認を行う。
鍼治療の方法に変更はない。
動機づけ面接法を取り入れながら、共感と支持を中心としたカウンセリングを3セッションまで行った。
4セッション~10セッション
鍼治療の方法に変更はない。
夫婦を対象に認知行動療法を行うことにする。
技法としては、ベーシックな再構成法から始める。
途中にメリット・ディメリットという技法も行った。
ホームワークは、
・コラム法については『3つのコラム』⇒『7つのコラム』を行う。
・呼吸法とユーチューブを用いて『ヨーガ』周産期バージョン(5分程度)
8セッションからは施術間隔を隔週とした。
11セッション~16セッション
鍼治療の方法と夫婦を対象に認知行動療法に変更はない。
12セッション時
エジンバラ産後うつ病自己評価票 (EPDS) :8点
ホームワークは、
・『7つのコラム』
・ユーチューブを用いて『ヨーガ』周産期バージョン(10分程度)
14セッションから施術間隔を隔週から1か月1回とした。
16セッション時
エジンバラ産後うつ病自己評価票 (EPDS) :5点
問題がない状態のために、3か月後に再度状態を確認(フォローアップ)するために来ていただきたいことをお願いして終了となる。
3か月後も問題なしであった。
施術回数:16回
頻度:週1回~隔週1回で治療終盤は月に1回
期間:8カ月プラス3か月後の確認セッション
当ルームでは、
不妊治療を行っている方に対して鍼治療によるサポート、
産後うつ病に対する鍼治療と認知行動療法による問題解決を行っております。
※お申込み等は以下の当ルームのホームページでご確認ください。
なお、スマホ対応サイトに移行中のため、現在のサイトはスマホ対応になっていませんので見ずらいとは思いますがご了承ください。
新横浜の鍼灸治療室
千田 恵吾