昨日外来で出会った患者さんは30代の女性で、昨年11月にご主人を突然亡くされた方でした。
もともとの生活史には特に問題はなく、今の仕事に就いて長いとの事でした。
これまでに一度だけ心療内科受診歴があります。
職場のストレスで不眠や頭痛があったそうですが、受診した時には
医者からされた質問をいくつか“はい”と答えただけで、
“うつ病です、この薬を飲んで”
と言われたそうです。不信のため、1回で通院を止め、その後すぐに元気になったそうです。
近医から「うつ病疑い、御高診お願いします」という紹介状を持参されて来ました。
患者さんに会って実際にお話をしてみると、最初に想像していた感じではありませんでした。
主訴は動悸、頭痛、眩暈など身体的な愁訴が主で、不眠(中途覚醒)がありました。
しかし、抑うつ感はあまり苦ではなく、趣味も気分転換になっている様子でした。
お子さんがいらっしゃるので、子供を育てながら毎日仕事をしており、
新しい暮らしに疲れが伺えるといった感じでした。
うつのエピソードの基準は満たさず、うつ病とは言えません。
身体症状に関してもご本人も疲れやストレスからくる症状であると考えておられ、
身体化障害や心気障害とも全然違います。
診断は適応障害にしました。
患者さんはどうやら仕事を休んだり一時的にでも少なく出来るような、診断書を
希望しているようでした。確かに今の状況に休息は必要で、本当のうつを招かない
ように、周囲の理解と配慮が必要だと感じました。
私なら処方するなら寝る前のminorを少量。でも、それよりも休息だけで随分良く
なるのではないかとも考えました。
上級医の診断も適応障害、もしくは不眠症でも良いかもしれないとのことでした。
睡眠薬が処方されました。
ただ、うつ病とは呼べず、病気から仕事を休まなければいけないという程のものでは
ない、という意見でした。
診断書に嘘は書けない。仕事を休まなければいけない状態ではない。
それはわからなくはないのですが…。
患者さんも仕事は休みたくないと思っていると思うんですよ。
中学校や高校を休むのとは話が違うのです。
独りで子供を育てなくてはいけない。仕事を失ったり給料を減らされたりする
事は怖いと思うのです。それでも辛いから少し休みたいのならば
どうして少し休ませてあげないのかな、と感じました。
そのことを上級医の先生に尋ねたところ、そうだね、という事になり
「適応障害」で、しばらく仕事を少なくした方が望ましいです、というちょっと曖昧な
内容の診断書を書く事になりました。
医師のみなさんであれば、どのような対応をしますか?
どんな薬を出しますか?このような診断書は書きませんか?
私が昨日考えたのは、まずこの患者さんが昔かかった診療内科について。
これは本当なら最悪だと思います。
どうしても医者は薬の処方ばかりにごだわり過ぎる傾向にあるのではないかと思います。
出すことが悪いとは言いません。しかし、
①どういう理由でこの病気と考えるのか。
②薬を飲むとどれくらいでどういった効果が期待出来るのか。
③副作用は?
④飲まなかったら、どのような心配があるのか。
このような説明に説得力がなければ、私も初対面の医者の出す薬など飲みたくは
ないと思います。
それから、薬以外でどれだけ患者さんを助けられるのか。
これが精神科の醍醐味ではないのかな、と思います。
薬なんて誰にでも出せますから。
患者さんが求めるものはそういう事じゃないでしょうか。
また、医者は精神科疾患の患者さんを「甘やかしてはいけない」と考える風潮があるように
感じています。下手に支えることで患者さんの病気をますます悪くしてしまう。
症状が「固定化する」という表現も聞いたことがあります。
もちろん解離性障害や人格障害では一部そういった可能性は考えておくべきでしょう。
しかし、そういう方はそんなに多いのでしょうか?
まことしやかに言われているこの考えは、果たしてどれだけのエビデンスが
あるのでしょうか?
身体疾患の患者さんは支え、精神疾患の患者さんは支えない方が良い。
そんなバカな話はない、と私は考えています。
患者さんは苦しんでいるのです。
助けを求めて病院に来ているのです。
怠けたくて来ているのではないのです。
医の基本です。