皆さん、せん妄の評価は何で行っていますか?

混乱が強いと会話も成立しませんし、長谷川式なんかはたとえ取れてもあまり評価には

つながりませんね。当院の精神科では、ニーチャム混乱・錯乱スケールを使っています。

注意力、認知、見当識、概観、動作、話し方、生命機能、SpO2、排尿機能をそれぞれ

スコアリングしてどの程度のせん妄があるかを判断するスケールです。

当院ではこれを初診時、3日目、7日目…と評価し、治療の効果判定に用いています。

ウェブ上で日本語があればリンクしようと思いましたが、見つかりませんでした。

まぁ、簡単な英語ですし、内容は看護師でも評価出来るように専門的な判断が

不要で使いやすくなっています。参考にしてみて下さい。


http://www.nhcqf.org/Providers/NursingHome/ADL_PI_Manual/Tab10/NEECHAMScale.pdf


今日の勉強会で出てきたので、まとめておこうと思います。


SIADH(syndrome of inappropriate secretion of ADH)

横文字で今ひとつわかりにくいですね。


どんな疾患か、一言で言うと、

ADHというホルモンが不適切に分泌され、


濃い尿が出て、低ナトリウム血症をきたす。脱水所見がないのがポイント。

ひどくなると意識障害、痙攣等の症状が出て命にかかわる。


という病気です。低Naがあったら、かならず鑑別に入れます。


色々な疾患(癌や脳炎など)に続発して起こりますが、カルバマゼピン(テグレトール)や

トフラニール(イミプラミン)、トリプタノール(アミトリプチン)等の薬の副作用

としても(稀ですが)知られています。SSRIやSNRIでも、一応重大な副作用

の欄に記載があります。


今日の診断基準(第5版)のP.1104に診断基準が出ています。


1.適合基準

①低Na血症がある

130mEq/Lで疑う。120mEq/L以下では本症が強く疑われる。

血清Na125mEq/Lを下回る低Na血症の50%が本症

なのでまず最初に疑う疾患である。

②低浸透圧血症がある

目安は265mOsm/kg以下。

③尿浸透圧が血漿浸透圧を上回る

④尿中Na排泄が持続する

20mEq/L以下または20mEq/日以上が持続する


2.除外基準

脱水所見がない

口腔内乾燥や皮膚の乾燥、しわ等は?

②腎機能低下がない

クレアチニンの上昇や尿酸の上昇を参考に。

③副腎機能低下がない

血清コルチゾール濃度は5μg/dL以上であること。

副腎機能低下は大切な鑑別疾患のひとつ。この疾患では脱水なのに

尿中Na排泄が保たれ、血圧低下、低血糖を伴うことが特徴として挙げられる。

④甲状腺機能低下がない

TSH上昇がないことは確認。

⑤浮腫、腹水がない

腎機能や肝硬変ではこれらの所見が出やすい。


3.参考基準

①血漿ADH濃度が相対的に上昇する

正常値でも否定出来ない。

②血漿レニン活性が低地にとどまる

③尿酸値の上昇がない


ここで注意するのは、血漿ADHを測定しても参考にしかならず、診断は

その他の症状やdataによるということです。


治療

多くは15ml/kgの水制限で数日で改善。意識障害や筋痙攣がみられる場合は

フロセミドと高張食塩水静注により速やかに改善します。


ただし、急激な補正(12mEq/L/日)補正した場合、橋中心性髄鞘崩壊

(Central Pontine Myelolysis)という恐ろしい合併症があることは

かならず念頭において、何が何でも速く補正すれば良いわけではありません。

長期的には基礎疾患が予後を左右します。


バソプレッシン濃度が5pg/mlを超えるものでは、悪性度の高い異所性バソプレシン

産生腫瘍を考えます。

昨日外来で出会った患者さんは30代の女性で、昨年11月にご主人を突然亡くされた方でした。

もともとの生活史には特に問題はなく、今の仕事に就いて長いとの事でした。


これまでに一度だけ心療内科受診歴があります。

職場のストレスで不眠や頭痛があったそうですが、受診した時には

医者からされた質問をいくつか“はい”と答えただけで、

“うつ病です、この薬を飲んで”

と言われたそうです。不信のため、1回で通院を止め、その後すぐに元気になったそうです。


近医から「うつ病疑い、御高診お願いします」という紹介状を持参されて来ました。

患者さんに会って実際にお話をしてみると、最初に想像していた感じではありませんでした。

主訴は動悸、頭痛、眩暈など身体的な愁訴が主で、不眠(中途覚醒)がありました。


しかし、抑うつ感はあまり苦ではなく、趣味も気分転換になっている様子でした。

お子さんがいらっしゃるので、子供を育てながら毎日仕事をしており、

新しい暮らしに疲れが伺えるといった感じでした。

うつのエピソードの基準は満たさず、うつ病とは言えません。

身体症状に関してもご本人も疲れやストレスからくる症状であると考えておられ、

身体化障害や心気障害とも全然違います。

診断は適応障害にしました。


患者さんはどうやら仕事を休んだり一時的にでも少なく出来るような、診断書を

希望しているようでした。確かに今の状況に休息は必要で、本当のうつを招かない

ように、周囲の理解と配慮が必要だと感じました。


私なら処方するなら寝る前のminorを少量。でも、それよりも休息だけで随分良く

なるのではないかとも考えました。


上級医の診断も適応障害、もしくは不眠症でも良いかもしれないとのことでした。

睡眠薬が処方されました。


ただ、うつ病とは呼べず、病気から仕事を休まなければいけないという程のものでは

ない、という意見でした。

診断書に嘘は書けない。仕事を休まなければいけない状態ではない。

それはわからなくはないのですが…。

患者さんも仕事は休みたくないと思っていると思うんですよ。

中学校や高校を休むのとは話が違うのです。

独りで子供を育てなくてはいけない。仕事を失ったり給料を減らされたりする

事は怖いと思うのです。それでも辛いから少し休みたいのならば

どうして少し休ませてあげないのかな、と感じました。

そのことを上級医の先生に尋ねたところ、そうだね、という事になり

「適応障害」で、しばらく仕事を少なくした方が望ましいです、というちょっと曖昧な

内容の診断書を書く事になりました。


医師のみなさんであれば、どのような対応をしますか?

どんな薬を出しますか?このような診断書は書きませんか?


私が昨日考えたのは、まずこの患者さんが昔かかった診療内科について。

これは本当なら最悪だと思います。

どうしても医者は薬の処方ばかりにごだわり過ぎる傾向にあるのではないかと思います。

出すことが悪いとは言いません。しかし、


①どういう理由でこの病気と考えるのか。

②薬を飲むとどれくらいでどういった効果が期待出来るのか。

③副作用は?

④飲まなかったら、どのような心配があるのか。


このような説明に説得力がなければ、私も初対面の医者の出す薬など飲みたくは

ないと思います。


それから、薬以外でどれだけ患者さんを助けられるのか。

これが精神科の醍醐味ではないのかな、と思います。

薬なんて誰にでも出せますから。

患者さんが求めるものはそういう事じゃないでしょうか。


また、医者は精神科疾患の患者さんを「甘やかしてはいけない」と考える風潮があるように

感じています。下手に支えることで患者さんの病気をますます悪くしてしまう。

症状が「固定化する」という表現も聞いたことがあります。

もちろん解離性障害や人格障害では一部そういった可能性は考えておくべきでしょう。

しかし、そういう方はそんなに多いのでしょうか?

まことしやかに言われているこの考えは、果たしてどれだけのエビデンスが

あるのでしょうか?


身体疾患の患者さんは支え、精神疾患の患者さんは支えない方が良い。

そんなバカな話はない、と私は考えています。


患者さんは苦しんでいるのです。

助けを求めて病院に来ているのです。

怠けたくて来ているのではないのです。



医の基本です。

むずむず脚症候群(Restless leg syndrome;以下RLS)という病気をご存知でしょうか?

夜間床に就いたあと、下肢を中心に耐え難い不快な感覚が起こり、そのために寝付けない

という症状があります。睡眠障害の中では神経性不眠症や睡眠時無呼吸に次いで有病率が

高く、1~3%と考えられています。医師の無知で長い期間苦しんでいる患者さんが

いる事実を覚えておいて下さい。


異常感覚は、痛み、不快感、虫が這う感じ、むずむず感、かゆい等と表現されます。

常に脚を動かしたいという欲求があり、動かすと楽になる場合、本症を疑います。

夕方~夜間、臥床状態で出現または増悪することも特徴です。診断には、

睡眠時無呼吸の検査でもある、ポリソムノグラフィーが有用です。


治療は通常、リボトリール(クロナゼパム)が第一選択になる場合が多いようです。

他にレボドパ(メネシット)等のドパミン製剤やパーロデル(ブロモクリプチン)等が

用いられるようです。


注意しておきたいのは、以下の条件は、RLSの原因となり得るという事です。

これらの原因を除くことで症状が良くなる場合もあります(どうにもならない

ものもありますが)。


①妊娠

鉄欠乏貧血

③慢性腎不全

④うっ血性心不全

⑤胃切除後

⑥慢性関節リウマチ

⑦パーキンソン病

⑧多発神経炎

⑨脊髄疾患

葉酸欠乏

⑪バルビタール系の離脱期

三環系抗うつ薬

カフェイン

アルコール


鉄欠乏貧血では、血清鉄は正常でもフェリチンが低下している事が多く、

鉄剤で改善するため、フェリチンの測定もすべきです。


以下に大変勉強になるサイトがありますので、ご紹介します。

http://www.geocities.jp/yoshinobu3710/

日本サイコオンコロジー学会のホームページに掲載されていた記事を

ご紹介します。原文を読みたい方は、


http://www.jpos-society.org/news/index.html


から、ニューズレターの、

『がん疼痛にオピオイド投与を受けている患者における鎮静及び他の症状に対するドネペジルの効果。』

という記事をご覧下さい。


どんな記事かと申しますと、


オピオイドを使用中の患者さんに起こる鎮静、眠気に対して、アリセプトを使うと

眠気が改善しますよ


という内容。アリセプトはアルツハイマー型痴呆に適応のあるコリンエステラーゼ阻害剤。


更に、


倦怠感、健康感、不安、便秘を有意に改善させることが認められた。

試験終了後20名中17名がドネペジルの継続を希望した。


とのこと。


ただ、ESASというスケールを用いて出した結果が、


sedation/drowsiness及び倦怠感/疲労感のベースライン値はかなり重篤(20名、sedation 6.70±1.1、

fatigue 7.35±1.5)であったが、3日目(sedation 4.48±2.4、p=0.0008、fatigue 4.03±2.7、

p=0.0002)、7日目(sedation 4.5±2.9、p=0.004、fatigue 5.15±2.9、p=0.002)も有意に改善した。


と聞くと、症例数が少ないし観察期間が短いし、そんな劇的な改善なの???という印象も

なくはないです。プラセボもあるかもしれないですし。

よく読むと吐き気等の副作用で内服を中止した人もいるみたいです。


しかし、抗コリン作用によるside effectが、本剤で改善する可能性があるというのは

なんとなく想像出来ますし、末期がんの眠気、倦怠感、便秘は時に難治であり、

効果のある薬剤が少ないので、薬の選択肢が増える事は心強いと思います。


ちなみにこのstudyでは、年齢の中央値は52歳の、アルツハイマー型の認知症のない

方が対象です。


ESAS(Edmonton Symptom Assessment System)は終末期の9つの主な症状

(倦怠感、食欲不振、痛み、抑うつ等)をスコアリングして評価するスケールで、

非常に有用です。

について学びたい方は、

http://www.palliative.org/PC/ClinicalInfo/AssessmentTools/esas.pdf#search='Edmonton%20Symptom%20Assessment%20System'

をどうぞ。そのうち私もまとめてみようと思っています。