精神科でECT(電気痙攣療法)という治療があります。
今日初めて見学しました。主に重症で薬剤抵抗性のうつ病や統合失調症が
対象となります。手術室で全身麻酔下に、こめかみ(前側頭部)に通電し、
全身痙攣を誘発します。麻酔下とはいえ、通電すると患者さんは顔をしかめ、
ぐぐーっ、と突っ張った後、ビクビクッと痙攣が起こります。
何人かにひとりは数秒間心停止します。すごい治療法ですよね…。
どうしてこんな治療法が生まれたんだろう、と興味ありませんか?
『ECTマニュアル』(医学書院)によると、薬物を用いた痙攣療法は18世紀から
記録は散在するものの20世紀になってから本格的に行われるようになってきた
ようです。当時、統合失調症とてんかんは拮抗する病気と考えられていました。
てんかんの患者さんが統合失調症になると、てんかんの予後は良くなる、と
報告されていたようです。実際、薬物による痙攣療法を行った結果、4年間昏迷
状態であった患者さんが数回で完全に回復した、という記録があります。
…つまり、間違った仮説から誕生し、偶然上手くいった治療法だったのです。
ちなみに今でも何で効いているかよくわからないようです。
薬物療法の進歩に従い、電気痙攣療法は一時廃れてしまいますが、
ここ最近で再び脚光を浴びるようになってきました。
もともと劇的な効果の出る治療法でしたが、安全面での改良がなされ、
麻酔の方法や施行法も研究されてきました。
旧式のサイン波治療器に代わり、定電流パルス波治療器が開発され、
より安全に施行出来るようになってきました。
【適応と禁忌】
適応はうつ病と統合失調症、その他一部のパーキンソン症候群、難治性てんかん、
慢性疼痛等が挙げられていますが対的な禁忌はありませんが、脳の占拠性病変や
最近の心筋梗塞や脳出血等が挙げられます。妊娠は禁忌ではなく、むしろ薬剤より
安心という意見もあります。ペースメーカでも基本的には施行出来ます。
【効果】
どれくらいの割合で効くか、ですが、精神科の先生曰く、「鬱病なら、診断があっていれば大抵効くよ」
とのこと。経過は、3、4回と繰り返すうちにまず不眠や食欲が改善し、本人の自覚は
もう少し遅れて回復するそうです。2ヵ月くらいの入院で見違える程元気になることも
珍しくありません。効果はどれくらい続くかは人それぞれで、そのまま治ってしまう
人もいれば、何ヶ月かでまた悪くなってしまう方もいます。重症度により様々です。
【合併症】
気になる副作用は、施行後の健忘、せん妄ですが、脳に恒久的なダメージが残る
可能性は今のところないと考えられています。痙攣により、頭痛や筋肉痛、
時に腰椎の圧迫骨折を起こす場合があります。致死的な合併症は主として心疾患に
かかわるもので、50000件に1件との報告があります。
【何処で出来るの?】
大学病院クラスなら何処でも出来ます。ただ、古いサイン波の治療器しか置いていない
場合があります。
担当の鬱病の患者さんも今2回目が終わったところです。まだ回復の実感はありませんが
今日初めて笑顔が見られました。