大晦日、NHKの紅白歌合戦を観ました。
私は何が何でも紅白を観る派ですから。
学生の頃のバイト期間からずっとサービス業(生花店・ファストフード店)の店長をしていたために、どちらも大晦日はかき入れ時であり、日が変わっても夜中ずっと店頭に立っていました。花屋の時はキーパー(大型冷蔵庫)などの大掃除でしたし、ファストフード店は八坂神社のおけらまいりからの帰り客を見込んでの24時間営業でした。ですので、20年間ほどは紅白を生放送で観ることなく過ごしており、“一般的な大晦日”に浸ることが全くありませんでした。ちなみに年間を通して日曜日も出勤していましたので、お昼番組の「NHKのど自慢」を観ることもありません。現在の仕事(主に公共相手の造園業)に代わってから、やっと「のど自慢」も「紅白歌合戦」も視聴できるようになりました。この“人並みの日曜日感や年末感”が愛おしくて、今でも両番組を観るとつい嬉しくなってしまうのです。子どもの頃はほぼ必ず家族と共に観ていましたから、そういうノスタルジーを求めているのかもしれません。
ところで一昨日の夜の紅白です。
私的には、コロナ禍にあって、どのような演出をされるのかが気になっていました。演出と書くと、いやらしい打算の響きも交じってきますが、今をどうやって表現するかのプロフェッショナルの技とでも言うか……歌自体は歌手の力ですが、ライブとなれば音響や照明、装置なども含めた総合力が問われます。
しかもこの日、東京都内での新たなコロナ感染者数が単日で1300人を超えたと発表。今年初めて四桁となり、再び緊急事態宣言の発出の可能性が現実味を帯びてきた中での大晦日の紅白歌合戦。
それぞれの歌手の、歌そのものを聞かせることに重きを置いた演出だったと思いますし、ディスタンスも計算されていたようです。聴きごたえはありました。歌番組としての王道をいかれたと思います。
が、例えば司会のウッチャンや大泉洋氏の現場テンションが、私のところまで届きにくかったのも事実です。ウッチャンが涙し、大泉氏が「ブラボー!」!と何度も叫ぶ根っこの部分が、私にはどこか異質というか……。そりゃ皆さんは進行役として失敗はできないというプレッシャーもあって、コタツに入ってほっこり観ている私とは、そもそも血圧状態からして違うでしょう。現場にいる人とテレビの前で視聴する人との感覚は、そもそも等しく共有することは無理だし、私自身、演劇は生で観るべきで、後日視聴するDVDの録画映像とは根本的に違うということも生理的に熟知しています。それでもあえて言わせてもらえるのなら、
私が思うところですが……ウッチャンも大泉氏も共にライブの人です。お客様を目の前にしたパフォーマンスで叩き上げられてきた人たちです。お客様が一人でもいてくださる有難さを熟知されているお二人が、NHKホールという大空間に、本来なら満席のはずの観客がたったの一人もいない、そんな客席に向かってリハーサルを超えた最高のパフォーマンスを伝えようとする歌手たちの想いを目の当たりにし、無観客の客席の、その先にあるテレビ視聴者に届かそうとする熱意や矜持に圧倒されたため、そこに涙されたのではないでしょうか。と思うのです。
本当に私の個人的な思い込みで申し訳ないのですが、
だとしたら、あくまで、だとしたら、
私などは、そこをもっと共有したかったと思うのです。
つまり、無観客という状況を更に強く感じたかった。
これは無理なことなんでしょか。
多分無理なのかもしれませんが。
演出では一定の客席をつぶし、会場をいくつかに分散し、もしかしたら曲終わりの拍手もSEで増強し、テレビの視聴者に対して「いつもとは違う紅白。観客がいないことを忘れさせるくらいに大規模な仕掛けと、会場にいる目の前の観客受けするMCを排したスムーズな進行の紅白。そして、いつもよりも歌を軸にした原点回帰の紅白」を目指していることは感じました。そこは流石にスゴイと思ったのですが……逆に観客が入っていないことを薄めていたような気がしたのです。隠していたとまでは言いませんが。
しかし、だからこそ現場では例年と違う空気というか、大ホールでの生放送では観たことのない世界……ウッチャンや大泉氏、二階堂さんや桑子アナには、歌の上手さだけでなく、無観客のほぼ誰もいない会場で渾身の力を振り絞る歌手たちやそれを最大限に引き出そうとされるスタッフの面々の必死の熱情に打たれていたような気がして……そこが、私も共有したかったと。
曲最後の拍手の音などは殆ど無く、客席には観客がいないという中での歌唱であることを、もう少し具体的に伝えていただければ、歌手さんや司会者さんたちの現場感に更に近づけたのではないかと思うのです。
無観客でも私たち視聴者を楽しませようとしてくれているパフォーマーやスタッフの想いは、例えば、その場にいなければ絶対に伝わらない病院で働く人たちや社会生活を維持してくれている人の献身と二重写しになってきたのではないかと。
2020年の最後の同じ時間に、顔が見えずともテレビの先にいる人に向けてライブパフォーマンスをする歌手たちの、スタッフたちの熱が更に伝わってくるような演出。
それが、どんな演出と問われれば……私にも答えようがないのですが、それでも、
ほんと、的外れな私見かもしれませんが……ウッチャンや大泉氏の受けた現場での感動を、更に共有したかったと思いました。