先週から始まったKBS京都テレビの手話言語条例啓発番組『しゅわしゅわ京都』。毎週火曜日の夜8時55分から9時までの5分間。京都市の冠番組です。
この中で私たちの劇団が小芝居を演じております。
手話を理解する府民が増えれば、ろう者の日常もより良く変わる。例えば役所で、病院で、コンビニで……様々なシチュエーションで、その違いをビフォーアフター形式風に再現ドラマとして表現しています。
第1回は既に放映済み。何と私と団員のS氏(ろう者)による二人芝居。仕事の面接にやってきたS氏を、手話を理解しない先輩社員?(私)の場合と、手話を理解する先輩社員との場合で、どのように違うのかを1分程度の寸劇で表しています。
以後、【道端でろう者が突然お腹をおさえてうずくまる。その時たまたま居合わせた聴者は?】。【喫茶店へ入店したろう者に対して、喫煙席と禁煙席の座席の違いをいい加減な説明で済ませてしまう店員】。【地下鉄のホーム。電車が遅れているのは事故のためだとアナウンスが流れるけれど、ろう者には伝わらない。すぐそばで電車待ちをしている聴者は?】……等々、町中で起こりうる状況が、以後10週間に渡って毎火曜日夜に放映されます。
と、まぁ、ここまでは番組の概略です。
この撮影に先立ち、私たちが番組に出演できるのか様々な条件事情を把握するためにKBSの担当の方並びに番組制作会社の方と顔合わせをしたのです。
劇団員は殆ど演劇活動とは別に仕事を抱えています。番組の趣旨には大賛成でも、果たして撮影に参加できるのか、日程の調整などもしておかなければなりません。
顔合わせも最初のうちはお互いが堅い感じで始まりましたが、最終的には結構打ち解けた感じになりました。更に言うと番組制作側からシナリオの数週分は頂いていたので、それを踏まえて「何か撮影自体に対する質問はありませんか」の問い掛けに、「例えばこの回に登場するろう者は、仕事に行く途中ですか?遊びに行く途中ですか?それによって衣装(自前)が変わってきますので」といった至極まっとうな団員からの質問に、「いやいや、そこまで役柄の背景をキッチリ描くような芝居ではありませんので」と、たじろかれた返答をされることもありました。
この劇団……福祉関係の芝居愛好会ではないかも……みたいな印象は与えたと思います。
7月の日差しが照り付ける真夏の往来で第1回目の撮影は開始されました。初日は4回分を撮りだめるとのことで、朝の9時に某所で集まりました。制作側として6名(KBS担当者と制作会社からディレクターさん・ADさん・カメラさん・音声さん・照明さん)。劇団員は通訳者もいれて5名。それから番組の解説者であり撮影現場では手話をチェック監修される、ろうの担当の方。計12名が結構人通りの多い大通りの交差点付近で撮影を始めました。
団員の筆頭は我らがK氏(ろう者)。彼は京都のろう演劇を引っ張る重鎮で、聴者の演劇人との交流も深い。彼の、往来で腹痛に耐え切れずしゃがみこむ芝居を観たディレクターは、この時点でノリノリになられました。あきらかに「この劇団。なめたらアカン」みたいな。
撮影は続いてKBS京都のテレビ局内の二階で、先の会社面接のシーンと、喫茶店のシーンを撮影。
この日、最終の4本目のロケ地が、地下鉄烏丸御池のプラットホームの一番端っこ。端っことは言え、当然沢山の乗降客がおられるわけです。そこに照明がたかれ、風防付きマイクの棒が差し出される。そしてセンターには三脚に乗ったカメラが。撮影は駅長?さんには許可を得ているわけですけれど(ここいら辺は京都市が制作主体だという強みか)、一般の方には何の撮影だかわからない。
車両は当たり前ですが定時にはホームに滑り込んでくる。何も知らない乗客は一瞬何の撮影かと、こちらを凝視する。中でも女子中学生や高校生。「え? 撮影!……だ、誰か有名人がいるの? 福士蒼汰? 山崎賢人?」。熱い目が私に注がれているのが背中越しにわかる。わかるんです。そして、「な~んや……知らんオッサンや……」とあからさまな落胆。期待から落胆へ急降下。その温度差が居たたまれない。
“でも”と思う。今になって。
このコたちは一瞬手話を間近で見た。その一瞬が、もしかしたらやがていつかどこかでろう者に手話に関わっていく小さなキッカケとなったかもしれない。
いや更に言うと、あのコたちのうちに身近に既にろう者との接点があって、だからこそ凝視していたのかもしれない。
私の想像を遥かに超えて、冷静な目で、深く撮影を見つめていたのかもしれない。
温度差などと思い込んだ私自身が、勝手に偏狭に決めつけただけのような気もする。
現時点でも手話は、確実に広まりつつあるのだから。
放映日が嬉しい。火曜日夜8時55分。その直前、KBSは時代劇枠で今は『三匹が斬る!』のシリーズを放映中。大好きな役所広司さんが出ている。この時代劇のスグ後に『しゅわしゅわ京都』が続く。となると時代劇好きな年輩の方に観て頂く可能性がある。
撮影終了後、ディレクターさんが帰りの車の中で感想を述べられました。
「この劇団、想像以上に遥かにレベルが上でした。撮影が予定時間よりも早くスムーズに進んだのも皆さんのおかげです」。
二回目の撮影も先週に済ませ、残りはあと一回。放映日数で言うと3回分を残しています。
観て頂く方に少しでも何かが届くような芝居ができたらと思っています。