神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 音楽堂シリーズ 第11回 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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「神奈川県近代美術館 葉山」からバスと京急で日ノ出町へ。
ゆっくり歩いて 成田山別院を抜けて県立音楽堂へ。久しぶりに成田山を通ると、見慣れた崖を降りていく明王などが並ぶ祠があった道が無くなって、冷たい崖崩壊防止のコンクリートが打たれた斜面になっていてビックリ。亀のいた池も小さくなったのかな? 風情のなくなったこと…

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 音楽堂シリーズ 第11回

15時~
神奈川県立音楽堂

神奈川フィルハーモニー管弦楽団
ヴァイオリン~コンサートマスター:﨑谷直人 


神奈川フィルのHPには
『神奈川フィルの定期演奏会として初めて「指揮者なし」の公演に取り組みます。第1コンサートマスター﨑谷直人によるモーツァルトの協奏曲弾き振りを含む、「古典への挑戦」で何が生み出されるのか。神奈川フィルにとっても「挑戦」となるコンサートに、お客様もお立会いいただきたいと考えております。

川瀬メモ
コンサートマスターの﨑谷さんによる指揮者無しの演奏会!僕は彼の音楽力に毎回驚かされます。本当に尊敬できる仲間であり、同僚ですね!指揮者のいない神奈川フィルも魅力に溢れているに違いありません!個人的には年間のプログラムで一番楽しみな公演です! 』
とありました。

今日のこの演奏会『神奈川フィル初の 指揮者なし公演…』とある。指揮者なしでの演奏ってあったように思っていたのは、気のせいかなぁ~
この演奏会、コンマスの﨑谷さんのお隣に日本センチュリー交響楽団のコンミス、松浦さんが客演。協奏曲ではコンミスを務めました。来週のいずみ定期には出るのかな?

座席は3列目の中央ちょい右と喜んでいたら、前2列撤去の実質1列目。スコア出しにくいじゃん!

プログラムはもう、私好みで完璧ともいえるもの。これで行かないなんてあり得ません。

10-8-6-6-4のヴィオラを上手手前にした通常配置。

前半はモーツァルト。集客に必要なプログラム
🎵モーツァルト:ディヴェルティメント ヘ長調 K.138
第1楽章、冒頭の4小節を序奏のように扱ってのスタート。しかしヴァイオリンのピッチが不揃いの感じは気のせい? ちょっぴり重心低めで厚着の様なモーツァルトは ちょっぴり私の理想とは対極。第3楽章はテンポも速めに少し軽めにはなったものの 音の厚みはもっさりしたままの様でした。
ちょっと﨑谷さん、遠慮気味だったのかなぁ~、もう少し細かなニュアンスを…という感じも残ったモーツァルトでした。

続いて﨑谷さんのソロで
🎵モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216
こちらも落ち着いたテンポで一歩一歩確実に歩む感じ。流麗さは影を潜め、その分 音楽の組み立てが明瞭に聴こえてきました。
その様式に合っていたのは 﨑谷さんのビブラート控え目の渋い音色。ちょっぴり古風なモノクロの様相のモーツァルトは 渋かったです。
特に第2楽章のしっとり感は絶品。
第3楽章ではロンドに戻るたびに しっかりと隈取りされたかのようなアインガングをしっかりと組み入れた﨑谷さんのモーツァルトが聴けました。
こちらは松浦さんのコンミス、ちょっぴりセンチュリーよりも控え目って感じでしたが、が神奈川フィルのメンバーと﨑谷さんをしっかり繋ぎ 安定した協奏曲が聴けました。

休憩のあとは 今日の一番のポイント。弦楽四重奏曲を入れたこと。オケの定期だからって変だっていう人もいそう。でもこれだって器楽合奏曲なんだし、響きの違いを比較できる楽しさも増えるのだから 私は大賛成。先週の水戸室内管では 前半に 弦楽合奏+管楽合奏という絶妙のプログラム構成を聴いたばかり。今回はそれに続く 凝ったプログラム。
でもこの選曲、ちょっとマニアック過ぎない?
🎵ハイドン:弦楽四重奏曲第1番 変ロ長調 作品1-1 Hob.Ⅲ:1「狩り」
実はこの曲、ハイドンが弦楽四重奏曲か弦楽4部の合奏曲か、どちらで演奏するために書いたのか不明な作品。なので、もしかすると弦楽合奏版(版といっても楽譜は同じ!)を演奏するのかとちょっぴり期待したのですが、弦楽四重奏でした。
メンバーは、﨑谷直人、直江智沙子、大島亮、門脇大樹の神奈川フィルトップによるアンサンブル。
標題の『狩り』のリズムの第1楽章。前半とは様変わりの爽やかな音に変わりました。4人の呼吸がピッタリ。インテンポで軽やか。第2ヴァイオリンの3小節目の4分音符をハッキリ聴かせるなど、狩のリズムよりも旋律重視のフレージングと感じました。
第2楽章は愉しいメヌエット。第1ヴァイオリンもソロさを強調することなく 4つの楽器がしっかりと響きました。そしてトリオではヴァイオリンピチカートがそれは絶妙。聴いて笑顔にさせられました。
作品1と2の緩徐楽章はみな『セレナーデ』の楽章。旋律の美しさが特筆される。もちろんこの作品も!4小節の序奏と6小節の後奏のついた 通作形式のハイドン渾身の楽章。ここでは序奏と後奏をセレナーデに組み込んだ感じ。特に後奏にはチェロのベース音が響く中、4分休符でヴァイオリンが弾き始めるのですが、この休符を長めに取るかと思いきや、休み短めで入りました。ここは交響曲『朝』の第2楽章を参考に考えても…と思いました。セレナーデの部分は 美しい音楽が楽しめました。ただ後半、装飾で華やかにしても良かったのでは?とも。
カノン風に開始するメヌエットの第4楽章。軽快な素敵なハイドンが聴けました。
第5楽章は短いなりにも第1ヴァイオリンが第2ヴァイオリンやヴィオラとの対話をしながら進む聴かせる曲。ハイドンらしい第2ヴァイオリンが第1ヴァイオリンやヴィオラとあっちこっちにくっつきながら、立体的に組み立てていく作品。第2ヴァイオリンの直江さんの目立たないけどハイドンの巧みをしっかりと聴かせる音づくりが絶妙でした。

オケの定期演奏会での弦楽四重奏曲、心配した拍手は前半以上。ホッとしました。

そして今日のメインは 耳には優しく愉しい曲。
🎵ハイドン:交響曲第55番 変ホ長調 Hob.I:55「校長先生」
驚いたのは、第2ヴァイオリンの直江さん、前半はトップに座っていたのですから ここでも と思っていたら、なんと一番後ろ 4プルトの内側。そこに強力な奏者を置くって、いいですね。それとも奏者の実力が変わらないってこと? 以前、京都市響でハイドンの『告別』(アンコールプログラム)を聴いた時、最後に残ったのが第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの一番後ろの2人だったってことがありましたが、それを思い出しました。
ここではモーツァルトで気になった重心の低さは気になりませんでした。というより 重心が低く感じませんでした と言った方がいいかも。テンポも速からず、遅からず。安定した好演。
輝いたのは第2楽章、弦楽器だけの前半の変奏のあと、最終変奏で突然に管楽器が加わる時、それは雲間から突然光が射してくるような、明るさの変化が鮮やかに決まりました。
第3楽章、メヌエットのトリオ。弦楽合奏でヴァイオリン2部にチェロがソロというスコアの指示。ちょっぴり違和感のある箇所ですが、今日はヴァイオリンを各4(2プルト)で演奏させました。それでもやっぱりヴァイオリンはバランス合わせに苦労? ソロチェロの響きに合わせるとヴァイオリンがppとなってしまうから。私はヴァイオリンもソロにした方が、と。
第4楽章では管楽器の活躍が印象に残りました。特に31小節からの管楽器だけのアンサンブル、第2ホルンの正確な動きはもちろん、ホルンからファゴットへの音の受け渡しがスムーズに決まりました。うっかりしていると楽器が変わったことに気づかないくらい。管楽器のおどけた表情が生きた演奏が楽しめました。

指揮者なしの演奏会、完璧とは言えませんでしたが、アットホームな雰囲気は普段以上。ホッコリする演奏会は良かったです。

私的には アンコールでの弦楽合奏の
♪バッハ:マタイ受難曲~コラール
の 締めがめちゃ良かったです。

終演後5分で帰宅できるから、掃部山をちょっぴり寄り道。井伊直弼の銅像の前に、全国都市緑化よこはまフェアの花壇がありました。