神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 音楽堂シリーズ | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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旅と鉄道と温泉が大好き。
そして、クラシック音楽も好きなもんだから、音楽会を理由に、日本国内を旅しています。
音楽と旅を中心に、日記を書いていきます!

初夏の横浜。富士山は靄の向こうで 見えなくなってきました。
今日はお昼前に日本大通にある フィルムライブラリーへ行きました。

目的は7月の音楽会で聴く曲の理解を深めるため。
倉本聡台本、実相寺昭雄監督、武満徹音楽の『波の盆』。1983年の約90分のテレビドラマ。主演は笠智衆。
ハワイに移民した日系1世のお話。
10年振りくらいに観ましたが 飽きない作品でした。そして 音楽も頗るいい!
次は戦争関連のドラマで エトロフ遥かなり を観たくなりました。

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 音楽堂シリーズ

神奈川県立音楽堂
15時~

指揮:宮本 文昭


宮本さんはシティフィルの音楽監督。一流演奏家の指揮転向だから…と最初は期待しないでいたら、シティフィルで聴くたび逆で裏切られっぱなし。筋肉質で躍動的で繊細な表情づけが私好み。地元、神奈川フィルへの客演で どこまでできるか期待大。プログラムが私の熟知しすぎた作品ばかり。これでは行かないわけにはいきません。

開演30分前に神奈川フィルの常任指揮者、川瀬さんが出てきての、宮本さんとのプレトークがありました。
お2人ともお話が上手で あっという間の15分。今回のプログラムは川瀬さんから宮本さんに、ハイドンの交響曲とモーツァルトのファゴット協奏曲を指揮して欲しいとの提案だった様。
それに対して宮本さん、
「番号に弱いから1をやるって言って決まった。どんな曲か知らなかった!」
「リード楽器だからファゴットのこと知っていると思われているが、ファゴットは組み立てすらできない。この協奏曲も初めて!」
「前半のプログラムを決め終わって、後半 ご自由に、って。これで 春の祭典やりたいって言ったら 事務局はダメって言うに決まってるでしょう。その 制限の中で決めました。」
というところで、時間切れ!
宮本さん、もっと話したそうでした。

今日は9列目のやや左。音楽堂の9列目は舞台より高い位置で 聴くに最高の場所。

そして最初は
🎵ハイドン:交響曲第1番 ニ長調 Hob.1:1
12型でチェンバロ入り。舞台はいっぱい。
第1楽章の冒頭、普通はpからクレシェンドしていくのに、mfでスタートは一瞬、大丈夫か󾬅って不安になりましたが、1つのフレーズ毎に細かい表情づけが生きていて、単純なクレシェンドを避けた揺れのある表情が新鮮でした。
第2楽章では 最初にチェンバロがかなり積極的に入ってきて これは!と思うも、12型の厚いオケの音に阻まれて それ以上聞こえなかったのが、残念。
第3楽章はフレーズの最後の部分のヴァイオリンを合奏からソロに変えたのですが、特に後半の部分で、リピートの前とあとで、このフレーズはこうも演奏できるよ!みたいにまったく異なる表情を見せたのには驚きました。宮本さんの指示か奏者からの提案かはわかりませんが 最後がすっごく輝きました。
鮮やかで 語り口が豊かな演奏に、目からウロコの台詞が聴くことができて 大満足でした。

続いて
🎵モーツァルト:ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191
ファゴットは5月に首席奏者で団員となった鈴木 一成。
オケは8型に縮小。ハイドンもこれでやって欲しかった。
16分音符での細かい動きが多いこともあり、正確に吹くことはバッチリでしたが、表情豊かかと言えば、まだまだだったのが残念。
第2楽章ではファゴットと掛け合うオーボエの方が魅力的だった…

休憩後は
🎵ビゼー:小組曲「子どもの遊び」より “行進曲” “二重奏”  “ギャロップ”
せっかくなら全5曲をやってもらいたかった。
元気いっぱいで表情豊かな演奏は、子ども って感じは皆無。
行進曲は高校生の体育祭の行進以上、軍隊の行進未満に変貌。
二重奏は平日午後のドラマに変貌。
ギャロップは等身大。
仔細なリハが効きすぎたかな?

続いて
🎵ビゼー:交響曲ハ長調
宮本さんのシティフィルで聴いている曲。
元気いっぱいの第1楽章。しかし若々しいだけの 一本調子ではなく、それぞれのフレーズに生命が吹き込まれている。
第2楽章はオーボエのソロが絶品。冒頭の長い旋律を第1オーボエと第2オーボエが交互に吹いたのですが、その2つのオーボエの音色の違いにビックリ!赤と紫くらいの違いがあり、それは聴いていて楽しめました、が 耳だけでしたら はたしてどのような感想になるかは 微妙ですね。
第3楽章ではトリオのチェロとヴィオラのドローン弦のような響き!ノンビブラートの刺々しい響きが鮮烈でした。
ただ私的には トリオあとのスケルツォで、主題提示の最初の反復をしないで素通りするのは反対。主題は2回耳にして落ち着くのだから!
常動曲風のフィナーレは、宮本さんの気配りのきいた、一本調子にならない ふくよかな演奏。リピートしたあとに大胆な表現変化を見せたりと、飽きさせませんでした。
シティフィルより細かい表情づくりに大きく踏み出した、より緻密な演奏になっていました。

宮本さんの指揮の完成度が1回1回上がっていくのがわかりました。
ただ、残念ながらオケの完成度はシティフィルの方が1段上。
今日のコンマスは4月から第1コンサートマスターに就任した崎谷さん。石田様なら少しは変わったかな?

神奈川フィル、なにわのスットコドッコイオケまでは落ちないとは思いますが、頑張って欲しいです!