新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会:JADE#625:サントリーホール | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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台風への吹き込みによる雲の雨に見舞われた首都圏。夕方、雨が小康状態になったので、傘を仕事場に置いて赤坂まで。折り畳み傘をささずにホールに入れました。


新日本フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会:JADE#625 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉

19時~
サントリーホール


指揮:熊倉 優
新日本フィルハーモニー交響楽団
ヴァイオリン:竹澤恭子

今日は定期会員の10月のトパーズからの振替。まったく知らない指揮者で、ちょっぴり不安。ソリストはJFJや水戸室内管弦楽団を中心に、何度も聴いている竹澤さんなので、こちらは安心。

今日交換してもらった振替のチケットは1階3列13番。下手ブロックの内側から3つめ。指揮者、ソリストとも斜め60°~45°の位置。指揮を見るには理想的な角度。

今日のコンマスは豊嶋さん。

前半は竹澤さんのヴァイオリンで
🎵ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77 
中学生の頃、交響曲第1番と裏表に入ったお得すぎる廉価盤LP(ギンペル/グリューバー)で好きになった曲。
冒頭の弱音の響きの美しいこと。目の前にチロル地方のU字谷の風景がはっきり見えました。このあと竹澤さんの熱いヴァイオリンが来たら 喧嘩しちゃうじゃん、と思いきや、第3楽章まで その涼しい高原の風を感じたままだったのには、驚きました。
第1楽章はオーケストラの弱音の美しさが際立ちました。fのところでは 音をひとつにまとめて 硬質にまとめる感じ。荒々しさとは真逆のスタイル。竹澤さんとの足並みも揃った、私の好きな響き。
第2楽章も透明感のある幅広い音楽。そうなると ちょっぴりオーボエの音が硬かったのが気にはなりましたが、それは些細。
第3楽章で熱く豹変するのを期待したのですが、その対比はなく、同じ方向性の統一感のある表現。端正な音楽は 実演では珍しいかも。だいたい一気に燃えて 拍手喝采にもっていくのですが、今日はそんなことを一切考えず、スコアと真正面が向き合って、客観的にブラームスの意図を随所に反映させたかの様。私は このような音楽作りが好きなので、良かったです。

ただ、竹澤さんのヴァイオリン。立つ位置と向きがしっかり定まっており、そのうち指揮者の方を向く角度が ちょうどヴァイオリンと身体が一直線に並んでしまい、音が急激にデッドになったのが残念でした。気持ち良く聴いていると、ソロヴァイオリンが急に聴こえなくなってしまうのですから…

竹澤さんのアンコール
🎵J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのパルティータ第2番~サラバンド
気持ちの籠った、濃厚な音楽。ここで驚いたのが、竹澤さんのヴァイオリンが身体で隠れた時、ヴァイオリンの音が天井の反響板からキラキラと降ってきたこと。柔らかなヴェールを纏った間接音の美しいこと。
協奏曲だとこのような美しい音がオケに消されてしまったということがわかりました。残念!

休憩はロビーでお友達と歓談。

後半は
🎵チャイコフスキー:交響曲第4番 へ短調 op.36 
チャイコフスキーの交響曲で特に苦手な作品。聴かず嫌いなのではなく、実演も20回程度聴いています。同じ苦手な第3番は スコアを見れば仲良くなれそうなのですが、こちらは…って感じ。
ということで、今日のこの演奏、初めて聴く指揮者でまったく期待していなかったのですが、今まで聴いたこの作品で、一番良かった(私好みだった)。
第1楽章、金管の煩さがまったくない(座席の関係もあるかも。管楽器はまったく見えない席ですので)。第2主題で思い切ってテンポを落として、そしてテンポを揺らさない 粘りの無いスタイルで響く弱音が、こんなに美しく 優しく聴けたのが、めちゃ良かった。
そうなると第2楽章も同様の聴き方で待ってしまうので、不気味なfが、なぜか弦楽器の響きが泥炭地を歩くようなフカフカの心地好さに変わってしまいました。とっても温かな第2楽章でした。
第3楽章は適度な速さの余裕のある音楽作り。弦楽器の表情がはっきり描け、まとまって伝わってきました。ただトリオの管楽器のアンサンブルが それに比べると、ちょっぴり攻撃的。あそこまでアクセントをつけなくても良かったのでは…って思いました。
そして しっかりと間を取ってからの第4楽章。第3楽章の最後、演奏の最中に弦楽器奏者が弓を取ったり 楽譜を捲ったりとの慌ただしい動きがなく、落ち着いて聴けたのが良かったです。
呼吸を整えて開始された第4楽章。冒頭のffはやっぱり強烈でしたが、煩さを感じなかったのは ここまで聴いてきた中での私の気持ちの問題でしょうか。煽ることもなく、端正な音楽作りの第4楽章。自然な響きの中で、丸みを帯びた 刺激的な音が聴こえた時の爽やかさが、特にトライアングルの音が、素敵でした。

第1楽章の展開部の意味不明さには、やはり慣れませんでしたが、これだけ耳にしっくりと落としこめたこの作品の実演は 初めてでした。

ブラームスもチャイコフスキーも、優しさいっぱいでした。私好みの音楽、行って良かったです。もしかすると、10列目あたりや、2階席だと印象が大きく変わったかもしれませんね。