東京文化会館 プラチナシリーズ~シューベルト『冬の旅』:東京文化会館 小ホール | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

旅と鉄道と温泉が大好き。
そして、クラシック音楽も好きなもんだから、音楽会を理由に、日本国内を旅しています。
音楽と旅を中心に、日記を書いていきます!

~はっぴい な雪女~

お昼過ぎに住宅街を歩いていたら 梅が良い香り。もう咲いていました。湘南はすでに春の薫りがただよっていました。

今日は仕事のあと、上野へ。

東京文化会館 プラチナシリーズ
シューベルト『冬の旅』 

東京文化会館 小ホール


今夜のプログラムは

🎵シューベルト:『冬の旅』

それを2回聴く音楽会。

今日は シューベルトの誕生日だから、というのもその理由らしい。

第1ラウンドは
ソプラノ:小林 沙羅
ピアノ:小原 孝

そして ユニークなのは、松本 隆訳の日本語歌唱ってこと。

最初の4曲、つまり菩提樹の前まで、小原さんのピアノの輪郭が際立ちすぎていて どうなるのかと。思わず、弾き語りなんとかをやってるのかと突っ込みを入れたくなる様。
しかし菩提樹からは、柔らかな印象派絵画のような フワッとした響きに変身。歌にぴったり寄り添いました。
でも 後半、また輪郭の際立つ音楽になっていたところもあったので、これは小原さんのスタイルだったのでしょう。

歌唱は素直な発声がいい。ホール全体にまんべんなく、過剰にならない響きが素敵でした。特にテンポの遅い曲に それが良く現れていました。
また、女声の特徴からでしょうが、短調から長調に変わるところでの鮮やかな色の変化は、まさに私のイメージする、雪の降るなか 突如太陽が顔を見せる、冬の風景にぴったりでした。

そして 前半のプログラムのポイント、日本語の歌詞は、およそ7割方は 聞き取れました。しかし 述語が最後にはいるところで、歌詞がわかりずらく聴こえてしまうのは私の頭のせい? 形容詞と名詞の組み合わせだとよくわかるのですが。
そしてもう1点、小林さん(女声)の歌なので、一人称の ぼく は、できたら 三人称の 彼 に変えて欲しかったかも。

最後にかなり主観的でどうでも良い私の要望を言えば、歌手の服装をドレスではなく、白い浴衣 もしくは和服にして、もちろん真っ白な顔にすれば良かった。私の日本語で歌う冬の旅のイメージ、『雪女』が歌うってことで…

ここで20分の休憩。

第2ラウンドは
バリトン:河野 克典
ピアノ:三ツ石 潤司

こちらは原語のドイツ語歌唱。

最初の音が出た瞬間、違いが明らかに。
因みに、ビアノは同じ ベーゼンドルファー。こちらの方が響きが豊かで潤いがある。人の温かさを感じる音ってことかもしれない。

歌唱は音の高さもあるけれど、ちょっぴりホールを響かせるまではいかず、ちょっぴり残念。私はQ列47番という、やや右寄りで聴いたのですが、河野さんがちょっぴり下手を向くと、明らかに音がデッドになってしまいました。
ただ 表情は細部まで整えられており、ビアノとの波もピッタリ合っていたのは 良かったです。
曲のまとめ方は 小林さんは1曲1曲丁寧に歌っていましたが、全体的な方向性を示したまとまりの点では河野さんの方がしっくり。小林さんは なぜあんなに菩提樹だけをしっとりと歌うの?って感じもありました。
また 三ツ石さんのピアノは、連続して歌う曲の間が それは絶妙。ホールの音が消えて、一呼吸置いて、ストレスなく始まるのは良かったです。

休憩を挟んで 同じ曲を聴き比べるという、楽しい、というか 演奏者には恐ろしい音楽会。大ホールではオペラが同時にスタートして、同時に終演。それが 3800円は格安すぎます。

最後におまけ。
私たちの年齢では はっぴいえんど や ルビーの指輪で懐かしい、松本 隆さんの菩提樹の第1節は 以下の通りでした。

≪泉のほとり そよぐ菩提樹
水濡れ陽あびて夢を紡ぐ

愛の言葉を木に刻んで
歓び嘆き語りに集う≫