仙台フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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~握手~

快晴の朝。
鳴子温泉の朝風呂で皮膚を引き締め、気持ち良く出発。
陸羽東線の車内からは、今まさに 日本的風景そのものが見えます。田植え直後で田んぼが鏡。雪型の残る山をバックに、東北の初夏の明るい光が満ちあふれていました。
そして 里山には自生のフジが満開。鮮やかな紫がきれいでした。

お昼に仙台に到着。
やたらテンションの高いお友達と待ち合わせ。お気に入りの演奏家のチケットが取れたことで舞い上がっていました。


仙台フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会

15時~
仙台市青年文化センター

指揮:ヘルムート・ヴィンシャーマン
仙台フィルハーモニー管弦楽団

🎵J.Sebastian Bach:管弦楽組曲 全曲


日本の合唱団との共演も多い、今年92歳の ヴィンシャーマンさん。昨年もマタイを狙いながらも、 公演がバッティングして行けなかっただけに、今回はしっかり日程調整をして向かいました。

演奏順は
🎵組曲 第4番 ニ長調
🎵組曲 第2番 ロ短調

🎵組曲 第1番 ハ長調
🎵組曲 第3番 ニ長調
大きな編成の曲を両端に、前半の締めをフルートが活躍する2番にした、納得の並べ方。

今回はまとめて感想を書きますね。

指揮のヴィンシャーマンさんのやわらかい音づくりは、とっても温かみのある演奏に仕上がっていました。
ティンパニはバロック型を使っていましたが、フェルトを巻いた撥を使っていたため、優しい音色に。
ヴァイオリン、全弦楽器と言ってもいい、は ほぼビブラートを掛けない演奏で通していました。ビブラートを掛けない場合、音程がバッチリ決まらないと 微妙な濁りが出て ハラハラすることがあるのですが、仙台フィルはバッチリ決まっていました。それどころか、フレーズの最後の音の伸びが素直に、とても美しく響いていたのが印象的でした。

今日、私の座ったところは、1列目ド真ん中。チェンバロは第4番、第3番では指揮の前に横置き、第2番、第1番では上手奥に縦置きで、ともに蓋を外しての演奏でした。そのため チェンバロの音が頭の上を飛んで行ってしまったのが残念。チェンバロは梅津樹子さん。

第4番、第3番ではオーボエ奏者を正面後列に立たせて演奏。第1番では指揮者の真ん前(チェロの前)に座らせての演奏。その第1番では装飾をかなり加えて演奏したりと、遊び心もしっかり。

第2番のフルートソロ(仙台フィルの戸田敦さん)では、それ程の遊びが感じられなかったものの、最後には打ち上げ花火のような華麗な締めをするなど、ハッとさせる瞬間も。

92歳のヴィンシャーマンさん、2時間近い演奏会に椅子はなし。元気いっぱい。
そして繰り返しもしっかり実施(3部形式のABAの最後のAの部分の繰り返しはカットしていましたが…)していました。ボッセ先生がしっかり繰り返しをしていたのを思い出しました。ドイツの戦前からの演奏家出身の指揮者は、反復記号も含めて作曲者の意図と解して、しっかり繰り返しをするのでしょうか。
もちろん繰り返したあとの表情は もちろん、1回目と同じというようなことはなく、その場によって変えていきました。
繰り返し後,弦のパートをソリ(各パート1名)にして 透明感のある響きに変えるなどは、私の理想のかたち。今回はソロになった身軽さから、コンミスの神谷未穂さんが 装飾を加えて演奏する、おしゃれなスタイルが素敵でした。できるなら弦楽器みんなで 装飾しながらの会話があれば、もっとワクワクしたのになぁ~
って、ここは過激な古楽器の団体ではないですね。

 今回の仙台フィルは、J.Sebastian Bachの本場ドイツの重鎮、ヴィンシャーマンさんを招いての 思い切ったプログラム。温かみのある、決して音楽を等身大以上の派手さを装うことのない音楽作りが 良かったです。例えば 最後の小節のティンパニの連打を、最後まで叩ききらないなど…

そんな中、3曲目の第1番が終わったあと、ヴィンシャーマンさんが拍手をいっぱい浴びていた時、突然 目の前に座っていた私に向かって 手を差し伸べてきて、あまりのことで呆気にとられる中、招かれるまま舞台の途中まで上がり(ここは舞台まで階段になっているのです)握手。大きくて柔らかい手が印象的でした。
そしてヴィンシャーマンさん、下手に下がる途中で もうお一人とも握手をしていました。

またアンコールの後には、舞台から降りて客席の前で挨拶するなど、偉大な指揮者(オーボエ奏者)とは思えない親しみやすさと、聴衆に対する愛情が感じられました。

そう、今日はなんとアンコールが1曲ありました。トランペットを舞台後ろのバルコニーに移動させて
🎵J.Sebastian Bach:『主よ人の望みの喜びよ』
最後、コーラスの部分(トランペットとオーボエのユニゾンが美しかった)が終わり、弦楽器の伴奏が最後にもう1回演奏される時にかかった テンポルバートから ヴィンシャーマンのこの曲に対する 込み上げる愛情を感じることができました。
そして 最後の音が消えたあと、ヴィンシャーマンさんが譜面台に両手をついて静止したままの数秒間、会場が静まり返っていました。音楽には『音の無い音楽がある』ってことを知っている 仙台の聴衆はやはり日本一です。

ヴィンシャーマンが最後に、J.Sebastian Bachのスコアを持って、J.Sebastian Bachに感謝を捧げている姿が印象的でした。

今日はとっても温かい素敵な演奏会に行くことができました。

終演後、後ろに座っていた定期会員時代の知り合いの方や、コンミスの神谷さんから
「来て良かったでしょう!」
と言われたり、音楽+αの忘れられない思い出もできた、一生忘れることのない素晴らしいコンサートになりました。