新日本フィルハーモニー交響楽団:HAYDN PROJECT~第3回 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

旅と鉄道と温泉が大好き。
そして、クラシック音楽も好きなもんだから、音楽会を理由に、日本国内を旅しています。
音楽と旅を中心に、日記を書いていきます!

『HAYDN PROJECT』~第3回

すみだトリフォニーホール
19時15分~

フランス・ブリュッヘン 指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団


HAYDN PROJECTのザロモン交響曲全曲演奏会の3回目

🎵F.J.HAYDN
交響曲第99番 変ホ長調
交響曲第100番 ト長調『軍隊』
交響曲第101番 二長調『時計』
の3曲

1794~95年にかけての2回目のロンドン訪問で書かれた6曲の交響曲の最初の3曲。
最初の訪問の時のような実験的試みは潜んで、音楽的な均整がとれた素晴らしい作品。


第99番は木管楽器の扱いが繊細でとても美しい(難しいとも)。
2楽章の第2主題などは ハイドン屈指の美しい旋律。
それに対してメヌエットは、旋律が消えてリズム中心というユニークな19世紀のスケルツォ的楽章。
後半の6曲で一番美しい作品はあだ名の無いこの曲です。


打楽器が多数参加で、軍隊ラッパつきで有名なのが『軍隊』交響曲。実は後期で一番小さな作品。
そして有名な第2楽章は、そのほとんどをリラオルガニザータ協奏曲からの転用。同じ協奏曲からの転用は第89番の交響曲でも行なっています。もしかしてその頃作っておいて、お蔵入りにしておいた作品なのでは?私の勝手な説です。
シンバルにトライアングル、大太鼓というトルコ軍楽隊の楽器が入る「トルコ風交響曲」は明るく楽しい。
ビックリ交響曲とあわせて、初めてハイドンを聴くにはおすすめの交響曲。

第2楽章の伴奏音型がチクタク時計にそっくりで、あだ名がついた第101番。
しかしこの曲はシリアスで油断ならない傑作。
まず1楽章の6/8拍子から緻密な組み立て。
第2楽章は最初、ヴィオラ抜きで始めたり、木管合奏に第1ヴァイオリンだけ参加したりと、オーケストレーションの巧みさが際立ちます。
そして雄大に組み立てられた終楽章は、堂々たるハイドンの素晴らしい音楽の完成度を示しています。

今日のブリュッヘンさんに新日本フィルは、そんなハイドンの巧みな交響曲にハッとする仕掛けを加えました。
軍隊交響曲のトルコ軍楽隊は、第2楽章と第4楽章の一部に入るのですが、第4楽章はコーダの3つの部分のみ、そこで3人の奏者+もう1名~なんと軍隊帽子を被ってクレッセントを持って(クレッセントは指揮棒の起源といわれる身長くらいの木製の棒。リュリがこの棒を足に落とした怪我が元で死んだことで有名です)舞台上手から下手に、3人の打楽器奏者を率いて行進。もちろん下手に消えた瞬間に音楽は終了。最高に盛り上がったのは言うまでもない。

その後の真面目なハズの時計では…
その第2楽章の『時計』の場面で、最初に出てくるヴィオラのピチカート(三重音です)を、リピートの2回目にはわざとバラバラに、合わないように(それも3つの音をばらしてボロボロボロ~って)演奏。それは時計のバネがビヨ~~ォンってなった様。会場は「ミス?いや演出だ!」と驚かされる中、3回微妙に変化させてきました。ちなみにアンコールもこの楽章。大喝采になりました。

F.J.HAYDNの交響曲でここまで演出しちゃうなんて もう脱帽。ブリュッヘンさんの見識の高さには本当に驚きです。

しかし、そんなうわべだけではなく、演奏も見事でした。
第99番の繊細な管楽器の音色(半音の微妙な高さの調節やピアニッシモが決まった)。
第100番のパートが一体となって揃って進む推進力。
第101番の楽器毎の旋律にリズムに響きの綾を立体的に組み立てたアンサンブル。

F.J.HAYDNの交響曲の魅力、満喫です。

もちろん弦楽器は完全にヴィブラート無し。古楽器の奏者はチェロとヴァイオリンに1名ずつ。クラシカルの弓だけの奏者も。

素敵な演奏会でした。

最終回は 来週 28日の土曜日。今日はシティフィルの天地創造と重なったとはいえ 3階前プロックがだれも入っていないのが残念。1,2階は9割近い入りでしたが…