東京藝大チェンバーオーケストラ 第33回定期演奏会:東京藝術大学 奏楽堂 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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今日は時間が取れたので、お昼前に都内へ。
神保町界隈でお昼を食べてから上野へ。


文部科学省国立大学機能強化事業「国際共同プロジェクト」
東京藝大チェンバーオーケストラ 第33回定期演奏会

15時~
東京藝術大学 奏楽堂

指揮:阪 哲朗
管弦楽:東京藝大チェンバーオーケストラ 


紹介文は
『今回のチェンバーオーケストラ定期演奏会は、「協奏曲」をキーワードに、バロックから20 世紀まで、4 つの作品が時を超えて出会う構成となっています。
独奏と合奏の目眩くような音のタペストリーを、ヨーロッパを中心に国際舞台で輝かしい実績を重ねる指揮者、阪哲朗氏と若き音楽家達がどのように織り上げるのか、いやが上にも期待が高まります。』

今回はプログラムが絶妙。ソロ対オーケストラというところに焦点を当てた、それもバロックと近代(現代)音楽を組み合わせた、めちゃマニアックなもの。協奏曲好きな私にはぴったり。そして指揮が20年近く、細々と応援をしている阪さん。なのでめちゃ苦手な作曲家も入っているにもかかわらず、まったく気にせず選びました。

阪さんが率いるので、チェロ、バスを下手に置いたヴァイオリンの両翼配置。第1ヴァイオリンは5~8という人数。チェンバロは今回、ストラヴィンスキーを除く3曲に加わりました。またストラヴィンスキー以外は ソロ楽器を指揮者の前を取り囲むように並ばせていました。
各曲のソロはヴィオラとコントラバスだけは同じ方でしたが、ヴァイオリンは8人が代わる代わるのソロで、コンマスも交代しながら という学生オケらしい取り組みでした。

前半は『合奏協奏曲』のタイトルをもつ作品の新旧作曲家の聴き比べ
まずはバロックから
🎵G.F.ヘンデル:合奏協奏曲 ト長調 Op.6-1 HWV 319
ヘンデルの作品の中では、有名な作品のひとつ。5つの楽章からなる作品。
モダン楽器で1000人以上のホールでのバロック~古典音楽の理想型が聴けました。
2つのヴァイオリンのソロとともに、オケもビブラートを気持ち掛けていきました。明るく艶やかな音がきっちりと揃う、清廉で美しい演奏がステージでした。チェンバロの音はオケの大きさに対して弱めにはなっていたものの、それは軽いスパイスのように効いてきました。
音量のバランスとダイナミックスをも巧みに使った表情づくりが 最高でした。このレベルで私の理解のできる演奏がこのあと並べば 年間ベスト10になるような完成度でした。
 
続いて
🎵A.シュニトケ:合奏協奏曲第1番
私の今まで実演で聴いた作品では、最も私と合わない作曲家といえるでしょう。苦手はブルックナーですが、シュニトケは拒否反応❎ だからこそ、このような機会でなければ耳にできないということや、怖いものみたさもあり、来た次第。
こちらは6楽章からなる作品。
冒頭、聴きやすいなぁ~と思っていると、ピアノが金属的な音を叩き出す。高音域をプリペアド・ピアノとして調律している様だ。音色の面白さに惹きつけられるも、活躍が限定的で 残念。それより、バロック的なスタイルで聴こえてくる弦の音が面白い。
ところが第2楽章のトッカータ(アレグロ)の冒頭の2つのソロヴァイオリンの掛け合いからは、どうしてここまで気持ち悪いのか…と言いたくなるような響き。そのあとのトーンクラスターで私はアウト!
以下、やっぱりシュニトケは私には厳しいという結論。第1楽章と第6楽章は(プリペアド・ピアノが効果的な響きが聴けて)良かったんだけどなぁ~

休憩のあとは
🎵W.A.モーツァルト:セレナード第6番 ニ長調 K 239「セレナータ・ノットゥルナ」
弦楽器4人を指揮者の前で立ち、その後ろにティンパニとチェンバロというようにソロ楽器を配置しての演奏。
第1楽章、ヘンデルと同じような明るい音で始まったのですが、ソロ第1ヴァイオリンの音が どうにも沈みこんだ音色と音量で 大丈夫か…と心配したものの、展開部に入るくらいから、音に輝きを増して、ホッとしました。
展開部では、ソロのアンサンブルにチェンバロがお洒落なソロパッセージを響かせたのが、とっても印象的。再現部以降、第3楽章まで チェンバロのソロとの掛け合いを期待したのですが、以降は オケの低音の補充として加わるだけだったのが、残念。
 メヌエットの第2楽章はモダン楽器の華麗な響きが効果的でした。それに対してソリ中心に進むトリオは、もう少しの遊びが欲しかったのも事実。即興的演奏が得意な人選で、もっと好きなように羽ばたかせても良かったように感じました。
第3楽章はしっかりとティンパニのソロカデンツァまで組み入れた構成。ただ第1ヴァイオリンから順に演奏されたカデンツァ(アインガング)は、ちょっぴり真面目で短め。大胆にもっと自分の主張を打ち出しても良かったように感じられました。そのような雰囲気が感じられた一番の原因は、カデンツァがこの先 発展するのかなぁ~と思う間もなく、ソロヴァイオリンが次のスコアに書かれたパッセージを弾きはじめてしまうところ。ここは もう少し 間が欲しかったと感じるのは、古楽を多く聴いている私だからでしょうか?
真面目で一生懸命の演奏として伝わってきましたが、この曲ではみんなで音のキャッチボールが もっと楽しめたら良かったのにな…が私の感想でした。そしてチェンバロが加わったこの曲の演奏が聴けたのは 大収穫でした。

最後は
🎵I.ストラヴィンスキー:《プルチネッラ》組曲
チェンバロを外したのに代わって、管楽器が初登場。ソロもオケの定位置につき、トップの席で座って弾きました。
前古典派の作品を引用して作り直したこの作品はとっても聴きやすい。ストラヴィンスキーは前衛的な作品でも抵抗なく(というより そちらの方が好き)聴けるのですが、このような古典的な作品も いい。ここでは阪さんの、オーケストラの細かな音色のパッチワークが楽しめました。
圧巻だったのは、第7楽章でのトロンボーンとコントラバスの掛け合い。どちらも表情豊かで見事でした。そして他の楽章は、とっても端正で襟を正したかのような 整えられた音楽。分かりやすい音楽として紹介されました。

ボッセ先生が育てた 東京藝大チェンバーオーケストラ。久しぶりに聴きましたが、当時と変わらない学生らしいきっちりとした演奏が聴けました。 

ホールから出ると、あいにくの雨。上野公園から散歩しながら帰ろうと思ったのですが、今日は上野駅からそのまま横浜となりました🚃💨