東京二期会オペラ劇場『魔弾の射手』~3日目:東京文化会館 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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連日猛暑の首都圏。
今日はエッシャー展でも…と考えるも、朝の暑さで行く気が失せてしまいました。
でもこの10年くらい、観たくて待っていたオペラがやっと開催ということで、期待いっぱいで向かいました。


文化庁委託事業「平成30年度戦略的芸術文化創造推進事業」
東京二期会オペラ劇場《ハンブルク州立歌劇場との共同制作》
🎵『魔弾の射手』
オペラ全3幕
日本語および英語字幕付き原語(ドイツ語)歌唱、日本語台詞上演
台本:ヨハン・フリードリヒ・キント
作曲:カール・マリア・フォン・ウェーバー

14時~
東京文化会館 大ホール


指揮:アレホ・ペレス
演出:ペーター・コンヴィチュニー
舞台美術:ガブリエーレ・ケルブル
照明:ハンス・トェルステデ
演出補:ペトラ・ミュラー
合唱指揮:増田宏昭
演出助手:太田麻衣子、木川田直聡
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:多田羅迪夫

オットカール侯爵:大沼 徹
クーノー:米谷毅彦
アガーテ:嘉目真木子
エンヒェン:冨平安希子
カスパール:清水宏樹
マックス:片寄純也
隠者:金子 宏
キリアン:石崎秀和
ザミエル:大和悠河
ヴィオラ・ソロ:ナオミ・ザイラー
合唱:二期会合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団


ホールに入ると、舞台下手端、袖の出入口のところに朱色のエレベーターの扉がある。階には狼~1~7となり、狼階は地下で、地上7階(回)って魔弾の数ですね。
モダンな演出が観れそうでワクワク。

今日の座席は1階5列中央。台詞が日本語なので字幕の見えにくい5列目でも大丈夫。それより2~4列目を占めた宝塚系ファンにビックリ。 

会場が暗転すると同時に、すぐに序曲の演奏が開始。拍手をするひまもなく、序奏の中で ホール全体のザワザワが静かになっていきました。序曲の間に聴く態勢をつくるっていう、本来の序曲の性格を感じることができました。途中で例のエレベーターの階が移動したのも、しっかり凝っていました。

今回は第1幕と第2幕をまとめて上演。休憩のあとに第3幕という演出。
今回は 斬新なペーター・コンヴィチュニーの演出ということで、ちょっぴり期待。

第1幕の村の広場。大胆だと感じる舞台や衣装ではないものの、舞台全体の動きでは、へーっというところがいくつも。後半のカスパールとマックスの場面の充実ぶりはなかなか。前半の合唱団の歌唱と動きも充実。

第2幕のアガーテの家の場面。落ちた肖像画が舞台に出てこなかったのは、初めて観る方には不親切に感じました。
ここからがとてもユニークな演出。
エンヒェンが帰宅して持ってくるくだりの薔薇の花束は、なんと1階1列12番に座っている(後半も!)隠者がエンヒェンの歌のあとに 舞台へ放り投げるというもの。
なんで隠者がこちら側にいるの?
アリアのあとに花束を投げるってどういうこと? 私たちに向かって 拍手を促すのはなぜ?
いろいろな?がここから増えだしました。

第2幕後半の狼谷の場面。カスパールとザミエル、そして後半のカスパールとマックスの場面。
最初にカスパールが舞台上に置かれたテレビ画面の中にいて、ザミエルと対話をする。
ザミエルは異界の存在だから?

休憩後の第3幕。
アガーテの部屋の場面。エンヒェンが婚礼の冠を持ってくる場面。普通はそのまま アガーテに被せようとして、驚くのですが、今回は音楽をしっかり切り離して、エンヒェンが冠を下に置いて、「さぁ元気良く歌を歌って」と言うところで、背後の冠を入れた箱がすり替えられて、再度歌いながら箱を開けると、葬儀用の冠で…となる。
そして代わりに作る薔薇の冠は、第2幕で隠者からもらった薔薇の花束からその場で作るというシナリオ。すり替えられるって、初めてでしたが、とってもしっくりくる演出だと思いました。
次の狩人の合唱では、男声合唱が舞台の上でないところ(袖かなぁと思っていたのですが、音の方向がどうもピット)から聴こえたのですが… そして、舞台上には女性が寝ている。そこにザミエル。何をしている?
そして大詰め。カスパールが死んで(エレベーターで死体を狼谷に送る)、マックスが魔弾を使ったことを言い、永久追放となったところで
『幕』??

すると1階1列13番から隠者が立ち上がって、歌い出す。
すると幕の間からオットカールが現れ、隠者の声に反省を示す。
すると幕が開きながら、ひとりひとりと舞台上に現れては 隠者の言葉に賛同しながら、最後は全員が舞台上に戻りの 大団円。
そして その最後の場には、エレベーターからカスパールとザミエルが出てくる。なんで死者が出てくるの?

この他にも舞台全体を使いながらの、大きな演出。1回観ただけでは完全な理解は不可能のような演出は、現代アートを観賞するのと同じようなワクワクでした。

そうそう、休憩時間にずーっと ホールのスピーカーから チクタクと時計の音がしていたのは、なぜ?

そんなこの舞台の一番良かったところは、台詞を日本語にしたこと。オペラというより劇を観ているような充実感がありました。そしてそこに『挟まれた』歌。そんなストーリー重視の私にはピッタリでした。

配役では、エンヒェンの冨平さんの切れのある演技とはっきりとした日本語が頭ひとつ出ている状態。新しい素敵な演技派の歌手を見つけることができました。
アガーテの嘉目さんは期待通りの素敵な歌唱。第2幕のアリア(特に前半)は圧巻!
そして悪役、カスパールの清水さんも 悪さぶりをしっかり。低音の魅力もあわせて見事でした。
そして舞台を『見ながら』待っていた金子さん。第3幕後半で舞台に上がってからの歌、歌いにくそうでしたが、すぐに喉が暖まったようで、安定した歌で締めました。
そして第3幕で花嫁の介添の4人。あの民謡調の素敵な歌を それは綺麗に聴かせてくれました。私的、今日の歌の白眉はここでした。
そして話題のザミエルの、元宝塚の大和さん。舞台映えは 群を抜いていました。ただ、PAを使わなくても良かったのでは? 今回の演出では 舞台裏の声にPAを使っていたので、大きな違和感はなかったのですが…


そして、器楽の方も健闘!
ホルンもドキドキせずに聴けました。
第1幕の冒頭では舞台上で、動きながらの演奏をさせたバンダの躍動感ある音楽(チェロまで!)。
ザミエルの化身として舞台上でヴィオラを弾いた ザイラーさんの音の綺麗なこと。容姿の素敵なこと。
最後に特筆すべきは、ピット内でのチェロのソロ。大きく歌う演奏(伴奏)は見事でした(NHKFMでもご活躍の遠藤さん)。

ちょっぴり私には難しい演出だったのですが、とても楽しめました。
これからプログラムを読み返して、復習します。

今日は終演後、お友達とアメ横近くの鳥料理屋さんで、反省会。ちょっぴりほろ酔い。そんな状態で書いた日記なので内容が薄くなりました。