東京シティフィルハーモニック管弦楽団 第316回定期演奏会 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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今日は朝イチから仕事、午前中で完結して、午後は相模原市内でお友だちとお昼のあと現代アート談義。その後、1人で都内へ移動。


東京シティフィルハーモニック管弦楽団 第316回定期演奏会

19時~
東京オペラシティコンサートホール

指揮とチェロ:鈴木 秀美
東京シティフィルハーモニック管弦楽団


今日のプログラムはマニアックで絶妙すぎるもの。秀美さんのモダンオケのコンサートとしては、私的には昨年暮れの神戸市室内合奏団に次ぐ もの。一般的には神戸市…よりはるかに魅力的ではないでしょうか。

今日はチケットには1階4列とあり、最高の席と向かったのですが、前2列が撤去されての実質2列目という、まん中ということもあり、協奏曲で寝れない席になってしまいました☀️😵💦

前半のハイドンとシューマンはバロック音楽やピットでの配置と同様の、舞台上手手前に管楽器を並べたもの。
これは前に 秀美さんに「シューマンの弾き振り大丈夫なんですか?」と尋ねたところ、「管楽器を手前に持ってくるかも…」とおっしゃっていた通り。シティフィルがそれに従ったということですね。
配置は下手から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、正面上手にチェロ。後ろの雛壇にコントラバス。そして上手の1プルトがヴィオラで後列がオーボエ。ヴィオラの2プルトはチェロ側の後ろという、考え抜かれた配置。そしてその後ろに金管とティンパニ。モダンオケ中心に聴いている方には異様な配置に映ったかもしれませんね。

最初はハイドンの初期の交響曲の傑作のひとつ
🎵ハイドン:交響曲第26番 ニ短調「ラメンタツィオーネ」
第1ヴァイオリンを10でヴィオラが4と思われる、第1ヴァイオリンを多めに置いた編成(もしかしたら10-8-6-4-2かもしれない)のように見えました。
第1楽章は秀美さんらしい溌剌とした音楽づくり。ラメンタツィオーネの旋律の第2ヴァイオリンとオーボエが左右から、離れているにもかかわらず、完璧な音の融合をもった響きで、前方席の私に届きました。それは美しくて鳥肌ものでした。そして分散和音を弾く第1ヴァイオリンは多めの人数らしく、尖らない音でラメンタツィオーネの主題にしっかりと寄り添うところが 絶品でした。
唯一 私的に残念だったのは、再現部でニ長調となって第2主題が演奏されるところで、その効果を高めるホルンの主題吹奏のバランスが良すぎたこと。つまりバランスが良いため 転調の効果は全体の響きだけ。私はハイドンがホルンをそこに組み入れた工夫を前面に出して、ホルンの明るい音色をくっきりと浮かび上がらせて欲しかったのです。
第2楽章も主題を奏でる第2ヴァイオリンとオーボエのソロの絶妙のバランスが光りました。そんな中、第1ヴァイオリンの対旋律やオブリガートの優しい表情が良かったです。特に11小節目からのラドドドドの8分音符での同音反復が 音が高くなっているように耳に届く効果は 目が点になるくらいの驚きでした。
第3楽章では私にとってはフレージングが好みにピッタリとはまり、違和感なし。fのアクセントも重心低めで安定感のあるアクセントが良かったです。トリオやダ・カーポ後のメヌエットで、弦を刈り込むなどの音色や装飾の彩りがあれば最高だったかも。
ちょっぴり気になったのは、上手2プルト目のオーボエの2人。ファーストが舞台奥で手前がセカンドだったこと。なんで舞台手前にファーストを置かなかったのでしょうか?←チェロ協奏曲も同様でした。
第2楽章後半の反復とダ・カーポ後のメヌエットの反復は省略。どちらも今日の演奏(プログラム)では納得。特に第2楽章は後半まで反復したら みんな寝ちゃいそう!
ちょっぴり不満を書きましたが、今まで聴いた26番の交響曲の実演で 飛び抜けての1番になりました。だってそれしか気になるところがなかったのですから!

続いて秀美さんの弾き振りで
🎵シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 作品129
秀美さんのチェロは もちろんガット弦、エンドピンなし。指揮台のところにチェロの台を2段重ねての演奏。私の位置からだとちょっぴり高め。
それより心配とビックリしたのは、秀美さんが袖から出て来て、そのまま演奏し始めたこと。調弦なし。そしてこのシューマンの協奏曲は楽章間が切れ目なく演奏されるので、秀美さんの調弦すること無し。そして楽章内でのオケのみの演奏の時には しっかりと斜め後ろ、管楽器方面を向いて指揮してるし… 思わず ガット弦だよね~と尋ねたくなるくらい。重奏のところでは ちょっぴり苦しい場面もありましたが、1本の弦で当てるところでは、第3楽章後半でもど真ん中大当たり的な それは聴いていて清々しいくらいの強靭な音を聴かせてくれました。
第1楽章の室内楽的なオケとの絡みは、弾き振りならではの親密感が見事。
第2楽章の重奏は 美しいの極み。そこでのヴァイオリンとチェロのピチカートの優しいこと!
第3楽章はもう圧巻。音の安定で唖然とする上に、最後まで元気いっぱいのシューマンをこれでもか…というくらい!
凄すぎるシューマンが聴けました!カーテンコールは楽器を持たないでの登場のあとも2回。それだけの熱演、好演は聴衆全体に伝わりました。

休憩時間に拝鈍亭でのお馴染みの方々で、前半の感想をおしゃべり。

後半はシューベルト。下手にチェロ、バスを置いた普通の両翼配置に配置変え。まずは
🎵シューベルト:劇音楽「魔法の竪琴」D.644
さらに編成が増えて、舞台いっぱいのような感じに、私の席からは見えました。
序奏の豊かな響きから前半とはまったく異なった世界が広がりました(シューマンとハイドンの間なのに…)。
アレグロのところに入ってからの元気いっぱいの音楽は、そのイケイケ度は、まるでショスタコーヴィチ! 「もう、めちゃ、楽しめました。以上」って感じ。

続いて
🎵シューベルト:交響曲第7番 ロ短調 D.759「未完成」
この曲は強烈な実演(上岡:東京フィル)を聴いているので ハードル高め。しかし 今日の演奏を聴いて 比較することができないことがわかりました。それは上岡さんは等速運動でゆっくり落ちていく蓋の樺細工、もしくは10手以上の箱根細工のような精巧なもの。それに対して秀美さんは欅の1枚板大テーブルを前にするような雄大さ。同じ木の工芸品をそう見比べる様。
その1枚板のテーブル、様々な模様が不規則に散りばめられていました。秀美さんの独特の休符の取り方、まるでホールの残響に次の音が混ざらないような間。前方席の私には後ろからの音のシャワーをしっかり聴けたのが、最高。
第2(終)楽章の最後、ティンパニの音が ちょうど竹の子が顔を出す直前の地面の盛り上がりのように、管弦楽の響きの平面から柔らかく飛び出して聴こえたのが。とても新鮮でした。

今日は本当に 素晴らしい演奏会になりました。

そんな中、未完成の第1楽章で気がついたのですが、シティフィルの皆さん、譜めくりがそれは丁寧。なにしろ前から2列目で譜めくりの音が気にならない!未完成の第1楽章は 展開部のpのところで捲りましたが、すべてのプルトでそれは慎重にされていました。
メンバー全員が良い音楽を作ろうとしているのが しっかり伝わってきました。

そんな素敵な楽団の 最高の演奏会だったのに、1階席の入りが4割を切るよう。本当に残念でした。LP時代の人は『未完成』がメインでも違和感はないかもしれませんが、CD時代の人には『未完成』は前座のプログラムと感じられるのかもしれませんね。そう、メインプログラム欠落の演奏会って。
私は 神戸市室内…を超える 最高のプログラムだと思ったのですが…