日本センチュリー交響楽団 いずみ定期演奏会 No.38 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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兵庫県立芸術文化センターからいずみホールへ移動。天王寺の旅館にチェックインしてから…が できない時間。ピッタリの移動でした。


日本センチュリー交響楽団 いずみ定期演奏会 No.38

19時~
いずみホール

指揮:飯森 範親
ヴァイオリン:堀米 ゆず子

ハイドンマラソンも早くも中盤。今日のプログラムはハイドンの魅力満載の名曲📖


センチュリーのHPによる聴きどころは、
『今シーズン最後のハイドンマラソンは、前回に続いて「シュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤(しっぷうどとう))」時期の作品をお届けいたします。第38番の「こだま」というニックネームは、第2楽章の1stヴァイオリンと弱音器を付けた2ndヴァイオリンの反復がエコーのように聴こえることから名付けられたようです。第26番「嘆き」はグレゴリオ聖歌の旋律を引用しており、「インチピト・ラメンタチオ(哀歌が始まる)」という旋律は他の曲にもしばしば用いられています。第47番は第3楽章のメヌエット、トリオ共に回文構造になっていることから「パリンドローム(回文)」という愛称で呼ばれることもあるようです。
個性的な3つの交響曲に加えて採り上げるのはモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番です。別名「シュトラスブルク協奏曲」ともいわれており、フランス的な要素が取り入れられた傑作です。この名曲を、ベルギーを拠点に世界中で活躍する堀米ゆず子との共演でお届けします。 』

もちろんヴァイオリンの両翼配置。バスは下手側にファゴットとともに置いて、チェンバロが正面。編成はヴァイオリン各6(交響曲第47番だけはヴァイオリン各8。モーツァルトではチェンバロはお休み)。コンパクトでホールに見合った大きさ。

今日のコンミスは松浦奈々さん。

座席は前から5列目の中央ブロックの下手側。ソリストが正面になる位置でした。

最初の曲は
🎵ハイドン:交響曲 第38番 ハ長調 Hob.Ⅰ:38 「こだま」
1766~68年頃、ハイドン30代前半の作品。タイトルは1970年代に編纂されたランドンのハイドン交響曲全集(楽譜)には付されておらず、それを使って録音された ドラティの交響曲全集のレコードにつけられたのが始まり(日本盤、それに米盤にも明記)。今回は、やっぱりタイトルの力を借りたいのか、もしくは曲を注意深く聴いてほしいのか『こだま』のタイトルをつけての公演。

アレグロの第1楽章は、ハ長調のドミソの上昇音で開始の、コテンコテンの古典派音楽。明るく開放的でリズミックなのですが、今日の飯森さんのテンポの速いこと!私の席では ヴァイオリンの<ド ミソドミソ~>の動きが管楽器にマスクされて<ドードミソ~>と聴こえてしまい、わき上がるような解放感が失われた感じがしました。私的にはそれよりソナタ形式の前後半とも反復をしたのですが、ほとんど同じような演奏だったのが残念。元気いっぱいの ハ長調の響きが堪能できただけに、更なるスパイスを期待しちゃいました。決して悪い演奏ではありません。

あだ名のアンダンテの第2楽章は、紹介にもあるように、第1ヴァイオリンのフレーズを、弱音器つきの第2ヴァイオリンが しつこいくらいに模倣していく。ここではヴァイオリンを各3にして、ヴィオラ以下を各1という室内楽的な響きは、このホールでは遜色なし。各3のヴァイオリンなので、反復時にもっとエコーで遊んで欲しかったです。

オーボエソロの活躍する後半の2つの楽章。
メヌエットとトリオの第3楽章。メヌエットでは第1ヴァイオリンとユニゾンで動きますが、トリオでは完全なソロ。なのでトリオではじけて欲しかったのですが、オーボエはまだ恐々としているような雰囲気。弦の伴奏が反復後、ピチカートに変えたのが良かったです。

アレグロのソナタ形式の第4楽章。こちらもオーボエソロが活躍ですが、カデンツァの箇所、反復後の2回とも、ちょっとしたアインガング程度だったのは 私にはちょい不満。


続いて堀米さんのソロで
🎵モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K.216
堀米さんの丁寧な演奏が印象に残りました。
第1楽章、端正にオケで主題が提示されたあと、ヴァイオリンが主題を紡いでいくところ、堀米さんは最初のフレーズの冒頭に独特の表情を加えながらの温かみのある音楽づくり。ちょっぴりオケが走る感じもありましたが、それこそ生きた音楽がそこにあるのを感じられました。

第2楽章も歌心がいっぱいの堀米さん。ビブラートを控え目に、真っ直ぐな音 中心で構成されたのが めちゃ良かったです。

異国情緒を感じられる第3楽章。ここでは堀米さんの重音のところでの 秋の湿原の上を渡る風のような響きが最高でした。

一見、オーソドックスなモーツァルトにも聴こえそうでしたが、わからないように加えられたスパイスが自然で良かったです。

アンコールは
🎵バッハ:無伴奏ヴァイオリンのパルティータ~ガヴォット
サラサラと流れるようなバッハ。こんな滑らかなバッハ、聴いたことがない!反復は一切省略で、主題が変わるところも一気に


休憩のあとは
🎵ハイドン:交響曲 第26番 ニ短調 Hob.Ⅰ:26 「嘆き」
この作品はスコアにも『Lamentatione』との副題がある。交響曲第38番と同じか、やや後の時期に作曲されたと考えられる作品。3楽章形式ということもあり、実際の時期より前の番号がつけられてしまった。私はこの作品の第1楽章と第2楽章は 単純ではあるものの、何度聴いても惚れ惚れしてしまう。

第1楽章、タイトルになった第2主題をオーボエをユニゾンに第2ヴァイオリンに与えるところが ミソ。そして再現部では 第2主題になったとたんに ニ長調に一気に転調させちゃう鮮やかさ!

アダージョの第2楽章もオーボエと第2ヴァイオリンが組んでの演奏。日本語のタイトルの『嘆き』はこちらに似合いそうと、私は思うのです。

fとpの対比が鮮やかな、実用からは離れた位置にあるようなメヌエットが終楽章。刺激的に演奏することも多いこの楽章ですが、比較的滑らかな表情でまとめました。

ちょっぴり内声を強調したりと、飯森さんらしい解釈がわかる演奏でした。


最後は
🎵ハイドン:交響曲 第47番 ト長調 Hob.Ⅰ:47 「回文」
1772年、ハイドン40歳の時の作品。
この作品のタイトルも『こだま』と同じように、楽譜にタイトルが無いのに、一部のレコードに 『Palindrom』「パリンドロウム」とあだ名されたために、時にその名前で呼ばれることがある。センチュリー響もあだ名つきで紹介。なお、この回文のメヌエットは、ピアノソナタ イ長調(第26番)にそのまま転用しています。

第1楽章はハイドンらしい 緻密なソナタ形式。ファンファーレのリズムに間の手を加えながら組み立てられている音楽。それが1小節ごとに繰り返されるので、緊張感を欠くと、それはバラバラな音楽となってしまうのですが、今日のこの演奏は、とても引き締まった緻密に木造建築を見るような充実した音楽に仕上がっていました。そして展開部の82小節からのヴィオラのドローン弦の響きを、26番の時と同じように 強調するスタイルは新鮮かつオリエンタル。CDを含めて今まで聴いたこの楽章の屈指の名演。

178小節からなるアダージョの第2楽章も緻密な反復のないソナタ形式。ここでは弦楽器を中震に 旋律を担当する組み合わせを変えながらの色彩の変化がしっかりと聴けました。

そして『逆行メヌエット』と題されたお茶目で短い『回文』のメヌエット。飯森さんは速めのテンポで一気呵成。これだと耳からは逆行の仕組みがわからないのでは?と 思ってしまう。

最後は流麗なプレストの第4楽章。この速い楽章では、第2ヴァイオリンを中心に ドローン弦の響きが書かれているので、(第1楽章に続いて)それを期待したのですが、ここではそれは無く、ちょっぴり残念。休符を自在に処理はしていたものの、響きの多様性をもう少し示しても良かったのでは…と思いました。

今日の演奏全般ですが、かなり細かく、fとpの箇所だけでの対応も、ヴァイオリンを半分に刈り込み、ヴィオラ以下をソロにしたりと、弦の厚さを細かく手を加えたり、今まで聴いたのとは明らかに違うフリージング処理を施したりと、飯森さんらしい工夫が随所に見られました。そのような新鮮な音にすんなり入れたり、違和感を感じたりと、頭がフル回転させられる楽しい演奏会になりました。
日本センチュリー交響楽団は 飯森さんの音楽をしっかりと音に出来ている様子。管楽器の弱音も安定した好演でした。

音楽会のあとは、首都圏からのハイドンファンの皆さんとの 反省会。今夜はフグ料理とお寿司でお腹いっぱい🐡🍣