ベートーヴェン、シューマン、ショパンが愛したピアノたち~3台のフォルテピアノで聴く贅沢な夜~ | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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そして、クラシック音楽も好きなもんだから、音楽会を理由に、日本国内を旅しています。
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今日は仕事を早めに上がって、都内へ。


北とぴあ国際音楽祭2017
ベートーヴェン、シューマン、ショパンが愛したピアノたち
~3台のフォルテピアノで聴く贅沢な夜~

19時~
北とぴあ さくらホール

フォルテピアノ:小倉 貴久子
テノール:ルーファス・ミュラー


紹介文は
『ウィーン古典派&ロマン派の銘器ヴァルターとJ.B.シュトライヒャー、パリの香りプレイエルで味わうピアノの名曲と歌曲』

フォルテピアノの弾き比べだけでも贅沢なのに、それに歌がついちゃうという、大サービス!
それで2800円という破格。1階席完売で、当日券で2階席解放という盛況のコンサート。

私はチケットを取るのがちょっぴり遅かったので11列目。それも右ブロック内側という状況。私的には声楽つきだったので 満足いく位置ではありましたが…

舞台には3つのフォルテピアノが並べられていました。演奏する楽器を中央に置いての演奏。

まずは
【A.ヴァルター(1795年製の楽器のレプリカ)】
のフォルテピアノで
🎵W.A.モーツァルト:フランスの歌「あぁ、お母様聞いてちょうだい」による12の変奏曲 ハ長調 K.265 (きらきら星変奏曲)
小倉さんでは ヴァルターで数えきれないくらい聴いた作品。今日は広いホールなので、いつもとはちょっぴり違うニュアンスで聴くことができました。
反復するたびに適度な装飾を加えての演奏は何度聴いても新鮮。
フォルテピアノでのモーツァルトでは、間違いなく日本一!

ここで小倉さんによるヴァルターの楽器についての解説(このあとも楽器ごとの解説あり)。
🎵L.v.ベートーヴェン:ソナタ 嬰ハ短調 作品27-2「月光」
もちろん第1楽章は、ダンパーを上げっぱなし、モデレーターも入れての、(私好みの)モヤモヤの響きのベートーヴェン自身が記した『幻想的ソナタ』に相応しい音楽が聴けました。モダンピアノでやったら モヤモヤではなく、ワンワンになっちゃうでしょうね。
明快な第2楽章、音が重なってももっさりすることのない、第3楽章。
やっぱりこの作品はフォルテピアノが良く似合います。3つの楽章の対比がハッキリと現れた演奏が楽しめました。

前半の後半は
【J.B.シュトライヒャー(1845年製)】
で、ミュラーさんのテノールをまじえて有名な歌曲のプログラム。
🎵F.シューベルト:ます D550、セレナード D957-4、音楽に寄せて D547
楽器がかわると音も変わる。ここでの差は大きかったです。シュトライヒャーの楽器では音域による音色の違いがとても楽しめました。
最初のシューベルトの歌曲では、『ます』で楽器がバッチリとはまりました。フォルテピアノの色の変化が 川の流れを表すのにピッタリって感じてした。
『セレナード』はこの項のあとで。
『音楽に寄す』の優しいピアノの伴奏を、ちょっぴり武骨になるフォルテピアノをどう捉えるか。私は好きなのですが… 

続いて
🎵F.メンデルスゾーン:歌の翼に 作品34-2、春の想い 作品9-8
より言葉と音楽が密接になってくる。フォルテピアノの音色がとっても効果的に活きている感じを受けました。

🎵R.シューマン:献呈 作品25-1、僕は夢の中で泣いた 作品48-13、ぼくの美しい星 作品101-4、
『献呈』はこの項のあとで。
続く2曲は伴奏より歌がメインとなる作品。ピアノ伴奏無しで歌い始める作品ですから。ここでは ミュラーさんの歌に耳が持っていかれちゃいました。

さて、この歌曲で私が感じたこと。
『献呈』のリスト編曲を5月にアルヘリッチで、『セレナード』のリスト編曲を先月ブニアティシヴィリで、どちらもアンコールで聴いたばかり。そしてどちらも強烈な印象をもらいました。
今回、その原曲を聴いたわけですが、今回の伴奏のフォルテピアノを耳にしての感想は…
まるで、編曲で聴いた2人のピアノが精巧緻密なクリスタルを超してダイヤモンドのような輝きと、磨きあげられたオパールのような滑らかさと色合いの変化を持っていたのに対して、今日のフォルテピアノは、まるで円空仏!セレナードの最初の伴奏を耳にして、飛び上がらんばかりの衝撃でした。
まったく価値観の違う音となっていたのです!
この2曲を聴けただけで、私には来た価値ありとなりました。

↑休憩時間中の写真。手前から ヴァルター、シュトライヒャー、プレイエル

後半は前半に引き続き シュトライヒャーのフォルテピアノを独奏で
🎵R.シューマン:パピヨン ニ長調 作品2
この作品は 何度か耳にしたものの、それほど馴染み深い作品でもないので、普通に楽しく聴けました。ただ、最後のドイツ民謡を引用した箇所では、ドイツ民謡の大好きな私には、色のバレットを多彩に使えるシュトライヒャーの演奏がピッタリに思えました。

シュトライヒャーは音域による音色の違い、多彩、不安定さ、が私には とても魅力的に聞こえました。

続いて
【I.プレイエル(1848年製)】
のフォルテピアノで
🎵F.ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 作品35「葬送」
シュトライヒャーよりも重心低めで、音域による色も3パターンくらいに収束しているかの様。
有名なこのソナタ。そのめちゃ有名な第3楽章の中間部はこの上ない美しさに溢れました。ここでプレイエルの魅力が一気に開花した感じ。今日の白眉はここでした。

アンコールはミュラーさんの歌で2曲
🎵ヴィアルド~ショパン原曲:愛の痛み
ショパンのマズルカが原曲だそう。有名な作品ばかりを並べ立てと思いきや、やっぱり小倉さんらしく、マニアックな作品を織り込んできました。
🎵グノー~バッハ原曲:アヴェ・マリア
アンコール2曲、ミュラーさんの美声にうっとりでした。

今日は2時間の中にこれだけ詰め込んでの、中味の濃い演奏会(レクチャーコンサート)でした。

終演後はサイン会。小倉さんのCDは持参したのですが、ミュラーさんのCDは2枚あるはずなのですが、家の中から見つけ出せず、チラシにサインをいただきました。

大きなホールでのフォルテピアノの演奏会。ちょっぴり後ろの席で心配をしたものの、特にミュラーさんの歌では、ホールに響いた音に包まれることができました。最良の位置だったのかもしれません。

ホールから外に出ると、小雨。その湿気を含んだ空気を、気持ち良く感じながら帰りました。