鈴木秀美 KLASSIKの世界 Vol.4これがナチュラル・ホルンだ! | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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鈴木秀美 KLASSIKの世界 Vol.4
これがナチュラル・ホルンだ! ~古典派(KLASSIK)金管楽器の魅力~

15時~
パルテノン多摩 大ホール

指揮:鈴木秀美
オーケストラ・リベラ・クラシカ


4-4-2-2-2の両翼配置。
管楽器(とティンパニ)を雛壇1列に並べ、ホルンも2×2を両翼に配置。
難易度半端ないナチュラルホルン。先日の新日本フィルで「ナチュラルホルンの様な響きだ!」と絶賛したら、「あれって外しただけでしょ」と返された、そのナチュラルホルン!倍音列から外れた音の音色と微妙に生じる不協和も魅力。
第1ホルンから、エルメス・ペッキニーニ、ディメル・マッカフェーリ、飯島さゆり、藤田麻理絵
大ホールで中央通路の後ろを閉鎖しての公演。
今日は3列目のど真ん中で聴きました。

前半に交響曲を2曲。まずは
🎵ハイドン:交響曲第31番 ニ長調 Hob.I.31「ホルン信号」
タイトルの通り、ホルン4本が活躍する交響曲。同時期に書かれた交響曲第72番と双子のような作品。72番が地味、かつ超絶技巧にホルンを響かせるのに対して、31番は単純明快で派手に鳴らすのが対照的。知名度もタイトルのある31番が圧倒的に有名。すべての楽章でナチュラルホルンの妙技に圧倒されました。
威勢の良いホルン信号で開始される第1楽章。ここでは左右に分けたホルンの効果が最大限に発揮されました。第1ホルンを抑え目にしたバランスは、全体の響きを整えるには良かったですが、聴く方にとっては、ちょっぴり残念。派手に鳴らして欲しかったかも。
ヴァイオリンとチェロのソロと管楽器のソロが絡むコンチェルタンテの形式の第2楽章。ヴァイオリンの若松さんは ソロの多くの場面で簡単な装飾を加えるなど、積極的な姿勢の演奏。そしてそれに対応するチェロのソロの山本徹さんも しっかり応えての装飾が生きました。
メヌエットの第3楽章ではトリオの第2ホルンが見事でした。
アンダンテの変奏曲形式の第4楽章。
様々な楽器のソロを順番に聴ける、愉しい楽章。第7変奏のコントラバスのソロ(平塚拓未さん)も安定していて見事でした。
コーダでの冒頭のホルン信号の回想。第1(前の)楽章の主題を回帰させるという手法はハイドンとしては、珍しい。この作品では とても印象深く 効果絶大。

ここで鈴木さんのお話。やはりホルンを中心にしたハイドン、モーツァルトの時代と音楽のお話。特にナチュラルホルンの特質を、モーツァルトの交響曲の第4楽章のホルンパートが音を交互に組み合わされている件の演奏を交えながらのレクチャーは納得させられました。

その交響曲は
🎵モーツァルト:交響曲第25番 ト短調 K.183
この作品もホルンが4本ですが、こちらはナチュラルホルンで音の出しにくい音をカバーするために、第1、3、4楽章ではホルン2本ずつをB管、G管として配置。派手なハイドンの31番とは利用法が正反対。ハイドンの交響曲で言えば、もうひとつの4本のホルンを要する第13番や39番と同じような使い方。
この作品ではヴァイオリンの両翼配置が(ホルンよりも)効果的に楽しめました。
映画『アマデウス』で有名になった、シンコペーションのリズムが不安を煽る第1楽章。快速。ひとつひとつの音を明快に鳴らしたキビキビした第1楽章。ここでは再現部直前のヴァイオリンの掛け合いの緊張感がそれは素晴らしかった。
第1楽章から続くように入った、弱音器の響きが印象的な第2楽章。ここでは落ち着いた古楽器の響きを堪能できました。
メヌエットの第3楽章は、トリオの管楽器のみのアンサンブル。私はアルプスの響きを期待してしまうのですが、そこは純音楽的にサラッと流れた感じでした。
第4楽章はヴァイオリンの主題提示のあと、ホルン交互での旋律づくりの箇所ですが、鈴木さんの速いテンポでは、なかなかそのからくりを楽しむまでにはいきませでした。

後半は
🎵モーツァルト:セレナーデ ニ長調 K.320「ポストホルン」
モーツァルトの作品の中で、室内楽は余り聴くことが少ないところ。この有名なセレナードも 持っているCDといえば、小学館のモーツァルト全集以外には、OLCのライブともう1枚だけ。昨日 予習をしようと思ったら、OLCしか探せず、これは予習ではなくカンニングになるので、中止。スコア持参で行きました。
今日は当時のスタイルに則って、全員が立っての演奏。前から3列目で立たれると、ちょっぴり見上げるようになってしまいました。

第1楽章から生き生きした演奏。特に65小節から(と同じフレーズの)のクレシェンドは、マンハイムの音楽のようなゾクゾク感が最高!
第2楽章のトリオと第3楽章ではフルートのソロ(菅きよみさんと前田りり子さん)が とても美しかったです。
唯一の短調の第5楽章は、テンポも速めで それほどの深刻さを感じさせない演奏。
タイトルのポストホルンの出てくる第6楽章。先にピッコロのソロの第1トリオで、前田さんがピッコロに持ち替え、直前に舞台下手袖から出てきて オケの前で吹き、そのまま袖に戻る演出。そして第2トリオのポストホルンのソロは、トランベットの神代修さんが客室の入口から吹きながら舞台に登ってくるという演出。郵便ホルンだから 動いて当然なんですよね。歩きながらも完璧に吹き切りました。それにしても第2トリオのあと、最後のメヌエットに入るや 自分の位置に戻って すぐにナチュラルトランベットで演奏していたのは、さすがという他はないです。
終楽章も快速に飛ばして爽やかなモーツァルトで締めました。

今日は3曲とも、ソナタ形式の楽章では後半の反復を省略。メヌエット楽章でも、ダカーポのあとの反復を省略と、身軽なスタイル。ビギナーに優しい音楽作りに好感が持てました。

アンコールにポストホルンセレナーデ付属の行進曲を期待したのですが、それは空振り。反復を省略したとは言いながら、やはり相当なボリュームがあるプログラムでしてからねぇ~。アンコール無しで終わりました。

ところで、今日のナチュラルホルンは もちろん全てに完璧ではありませんでしたが、安定した音をしっかり届けてくれました。4人の奏者の技術に脱帽でした。

多摩センターから横浜は、何とも中途半端な位置関係。帰り方に悩みました。それより多摩センターって、東京都? それとも神奈川県?