雑司谷拝鈍亭 ニコラウスの館 III | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

旅と鉄道と温泉が大好き。
そして、クラシック音楽も好きなもんだから、音楽会を理由に、日本国内を旅しています。
音楽と旅を中心に、日記を書いていきます!

今日はカーリング日本選手権の決勝。今年は予選の段階から NHKだけでなく 民放のニュースでも取り上げられるなど、驚きの注目度。
本当なら軽井沢へ(週半ばから)行こうと思っていたのですが、日曜の音楽会やテレビ中継もあることから、今回はパスしました。
今日は録画をセットして、午後から 知らないうちにスタートが変わっていた別大マラソンをワンセグで見つつ、都内へ。


雑司谷拝鈍亭 ニコラウスの館 III

17時~
雑司谷拝鈍亭

トリオ・シュタットルマン
バリトン:坂本 龍右
ヴィオラ:朝吹 園子
ウィーン式コントラバス:菅間 周子


ハイドンのバリトン三重奏曲全曲演奏会という途方もない企画の3回目。

最初の曲は
🎵ハイドン:バリトン三重奏曲第72番 ニ長調 Hob.XI-72
アダージョの第1楽章は共鳴弦のピチカートが旋律の中に組み込まれていて、とても魅力的な響きでした。
アレグロの第2楽章はコントラバスの低音の迫力のある冒頭が良かった。ここでもバリトンの共鳴弦は合奏の中で幽玄に響かせていました。
メヌエットの第3楽章は3拍子に聴こえないリズムの遊びがハイドンそのもの。
典型的な、共鳴弦の活躍する、ハイドンのバリトン三重奏曲からスタートしました。

ここから坂本さんのお話が入りました。このような珍しい楽器と曲の場合は、お話が重要。坂本さんのお話、なかなか上手い。
次の曲はバリトン三重奏曲の初期の作品。「バリトンを弾く領主ニクラウス様のバリトンの技術がまだまだの頃なので、バリトンは活躍しません」と
🎵ハイドン:バリトン三重奏曲第3番 イ長調 Hob.XI-3


↑うちにある第3番のスコア

アレグレットの幸福感いっぱいの第1楽章。バリトンとヴィオラの充実した響きがいい。ここではバリトンとヴィオラが繰り返し以降の装飾の掛け合いが分かりやすく、それは愉しげに弾く姿から出てくる音楽は最高でした。
ハイドンらしいきっちりとしたメヌエット。バリトン、ヴィオラ、どちらを主役にしてもいいようなトリオの第2楽章。私の耳には対等な響きで聴こえてきました。繰り返し前後でバランスを変えても面白かったのに…は私の勝手な考え。
疾走するプレストの第3楽章で明るく締めました。
私的には第72番より 格段に楽しめる演奏でした。

ここでは菅間さんのハイドンについての印象のお話。ウィーン式コントラバスはハイドンの交響曲のソロとして活躍した楽器だから…と
🎵ハイドン:バリトン三重奏曲第95番 ニ長調 Hob.XI-95
急-メヌエット-急というゆっくりとした楽章の無いこの作品。
変奏曲でアレグロというハイドンとしては珍しい第1楽章は3つの楽器の弦の音色を存分に聴かせてくれました。後半の変奏でのコントラバスの温かでふくよかな音色は最高でした。
浮遊感のある奇妙な開始で惹きつけられるメヌエットと、しつこいくらいの同音反復に終始するトリオ。無表情で弾くと面白そうなのですが、さすがプロ。リズムに乗って表情豊かにまとめちゃいました。
そして最後はまたまた疾走して締めました。

ここで休憩

後半は朝吹さんのお話から。小さな頃からハイドンのチェロ協奏曲を聴いていて、ガット弦に転向するきっかけは、クイケン四重奏団のハイドンのCDとか…
後半最初は
🎵ハイドン:バリトン三重奏曲第40番 ニ長調 Hob.XI-40
モデラートの第1楽章はハイドンの響き。共鳴弦の響きも堪能。センス抜群の装飾をハイドンとヴィオラで加えていくのを聴いている気分は最高でした。
典型的なメヌエットと3つの楽器がピチカート(バリトンは共鳴弦)で開始するトリオがユニークだった第2楽章。3つの楽器の音色の変化がとても楽しかったです。
カノン風に開始するアレグロの第3楽章。落ちついたテンポの中で コントラバスの温かな音が素敵でした。

ハイドンのバリトン三重奏曲の最後に近い充実した曲を この編成での最後に置きました。
🎵ハイドン:バリトン三重奏曲第125番 ト長調 Hob.XI-125
番号つきでは最後から2番目の125番。
アンダンテの第1楽章。3つの楽器が緻密に絡み合いながらの音楽は 充実。この小さなバリトン三重奏曲の中でのハイドンの進化を感じられました。
第2楽章のメヌエットはハイドンらしい真面目な風貌の音楽でオーソドックスなもの。楽譜通りに演奏すればそれなりに仕上がってしまう感じ。しかしちょっとした表情作りを巧みに加えて飽きさせませんでした。
3部形式のプレストの第3楽章は舞曲のように愉悦感あるれる音楽。バリトンにヴィオラが絡んでくる掛け合いが楽しめました。

最後の曲は
ナチュラルホルンにオリヴィエ・ビコンと藤田麻理絵を迎えて
🎵ハイドン:バリトンと2つのホルンとヴィオラとバスのための五重奏曲 ニ長調 Hob.X-10
これはハイドンでも極めて特異な作品で、もちろん演奏機会はもうないのでは…と思われる。今日のホルンはナチュラルホルンで音色の変化とその超絶技巧も楽しめました。
アダージョの第1楽章はバリトン三重奏曲にホルンがバックに色を加えたり、時に合いの手を入れたりという感じ。不安定な響き覚悟でしたが、その安定度は驚くべきもの。温かなバリトンの音色とともに 贅沢な癒しの時間となりました。
アレグロの第2楽章はホルンの音色をバックに聴きながらの典型的な明るいハイドンの室内楽。演奏する楽しみも伝わってくる音楽でした。
そして終楽章はメヌエット。天真爛漫な音楽。トリオのホルンのfのソロは 当初の不安は消え、安心して聴けて気持ちよかったです。

今日の演奏会は珍しいバリトン三重奏曲と五重奏曲をセンス満点の愉しい演奏で聴けました。ちょっぴり共鳴弦の演奏で不安定さがみられたこと、それと表情がまだまだ平坦な感じが否めないのが残念でしたが それは些細。この団体を聴くのは5回目になりますが、1回毎にどんどん良くなっています。

次回、期待はさらに大きくなりました。