みちのおくの芸術祭 と 山形交響楽団 第255回 定期演奏会 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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旅と鉄道と温泉が大好き。
そして、クラシック音楽も好きなもんだから、音楽会を理由に、日本国内を旅しています。
音楽と旅を中心に、日記を書いていきます!

鉄道の廃止。私が受けた一番の衝撃は、青函連絡船の廃止ですが、それは青函トンネル開通の前向きな理由。だからまだいい。

しかし、後ろ向きの理由での廃止は、悲しい。特に北海道は悲しいなんて言ってられないレベル。今や駅までもどんどん廃止され、宗谷本線、石北本線なんか、路線図がスカスカ。降りたかった神路と上越はその前に無くなってしまった…

今世紀に入って、廃線は落ち着いたか…に思えたら、先日の、私も何度か利用をした、岩泉線の廃止。お別れができなかったのが本当に悔しい…

今度は 三江線。
私にすれば新しい路線なのに…と言ってしまう。まぁ、もっと短命な白糠線や大隅線もありますが…
陰陽連絡線として作られたのに、その役割を果たさず、優等列車が走らずに廃止。そりゃあ、県境で深い谷を形成する無人地帯と言ってもいい江の川に沿って作った路線ですから、沿線の利用者は期待できないですよ!北海道でいえば石勝線みたいなものですから。

赤字で運賃を上げに上げた国鉄のしっぺ返し!安全で大量輸送のできる鉄道。途中駅を通過させれば、バスより格段に安く輸送できるのにね。ある程度の利用者でもあればJR九州のように およそ半額の特別運賃も設定できるのでしょうが…
東日本エリアでは仙台~山形の都市間輸送も同じ。特別運賃を設定して30分ヘッドで仙山線に旧特急型車両(白鳥の余剰分があるでしょ!)を転用して走らせれば、十分応戦できるのに…

東京~大阪では 夜行を5000円で途中ノンストップのカーペット車でも走らせれば、バスの客を一気に奪えるのにね。今は3つの会社に分割されてしまったから、無理でしょう。地球温暖化にもいいのに…

そう、三江線の廃止ね。私も2回乗りましたが 本当に淋しい路線。途中下車したい場所もあるので、もう一度乗っておきたいです!冬休みからは、混みそうですね。

そんなことを言いながら、今日は三江線とは逆方向の列車に乗っています。

本当は昨日の夕方から北関東に入り、今朝 目的を達成したかったのですが、昨夜の音楽会のお誘いを選んでしまい、今日朝の出発。そのため今回の本来のお出掛け目的は達成できず、目的後の時間で組み入れた音楽会の方が目的になった感じ…

ちょっぴり遅いお昼は山形名物、冷しラーメン。今回は『冷しみそラーメン』に初挑戦。
ピリ辛の効くスープは食べたあとからお口ファイヤー🔥になりました。

ラーメンのあとは 市内散歩。山形中心部には歴史を感じる洋風建築や蔵がまだまだ多く、無秩序に残っているのが目につく。
今日はその中でも代表的な、旧山形県庁の『文翔館』に行くと、
~みちのおく芸術祭~山形ビエンナーレ2016



が今日からスタート。
ちょうどきな粉餅の振るまいに当たり、ラッキー!



慌てて文翔館に入ると、常設の展示と並行し、いくつかの部屋で様々な作品が展示されていました。オープニングということで、どの部屋にも作者が居り、作品を作り続けていたり、来客対応をしたりという姿が見られました。
作品じたいは、こじんまりしたおとなしい感じ。もちろん比較対象がともに有料の『瀬戸内』や来週から行く『あいち』ですから。こちら山形はすべて無料で 簡単なリーフレットも無料配布ですから…
今日観た作品の中では、東北芸術工科大学の『ひじおりの灯』という8月に肘折温泉を照らしたという行灯(描かれた絵画)の作品が印象に残りました。

到着が遅かったため、文翔館の作品を観て時間切れはちょっぴり残念でした。





その後30分近く歩いて移動。
ホールのレストランでデザートでクールダウン。



山形交響楽団 第255回定期演奏会

山形テルサホール
19時~

指揮:マックス・ポンマー
クラリネット:川上 一道


『自由なる精神…80歳の巨匠ポンマー 待望の再登場!
2013年の初共演で、”楽曲の本質を徹底的に叩き込んでくれた”と、楽団員に感銘を与えたポンマーの再登場。心の中に広がる自然への愛を描いた「田園」。ヒンデミットがベニ―・グッドマンに捧げた牧歌的な作品を、当楽団首席奏者の川上が演奏する。』

今日は自由席。17列目の中央。後ろから2列目だけど前だけ見ていれば、とても良い位置。

演奏前にロビーコンサート、今日は金管アンサンブル、も楽しめました。そのあと なんと聴衆が席に着くのと同時にホール内でポンマーさんのプレトーク。ここまでやるかというサービス満点超えの山響には頭が下がります。そこで、ポンマーさんのが「御先祖がライプチヒでメンデルスゾーン一家に家を貸していた!今は博物館として譲渡した。」と 驚きのエピソードまで。
もうひとつ、ベートーヴェンの田園交響曲の第1楽章については「ドイツ、オーストリアの田園風景ではなく、ユーゴスラビアを中心とした 旧東欧の音楽だ」と。

本プロの最初は
🎵メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」作品26
重心の低い落ち着いた演奏。金管はクラシカル楽器を使用。弦楽器のしっかりとした刻みまで聴こえる丁寧な演奏は私好み。描写音楽としてどこまで見えてきたか…といえば、それほどくっきりとはいえませんでしたが、転調の場面場面でのはっきりとした色彩の変化は鮮やかでした。

続いて
🎵ヒンデミット:クラリネット協奏曲
もちろん初めて聴く作品。4つの楽章からできていました。ちょっぴりモダンな第1楽章。クラリネットはオケの管楽器と対等になるような箇所もあり、オケとのアンサンブルが重視される場面が多い曲でした。
第2楽章は冒頭、アメリカ民謡か? と思わせる面白さ。ヒンデミットがアメリカで活動したことを考えると、そうかもしれない。
美しい第3楽章を経て、躍動的な第4楽章が楽しめました。
安定した演奏の川上さんに地味な曲にもかかわらず、熱い拍手が贈られました。

休憩のあと
🎵ベートーヴェン:交響曲 第6番 ヘ長調「田園」作品68
こちらもメンデルスゾーンと同じく、金管がクラシカル楽器。ホルンの活躍が光りました。弦が9-7-5-5-3と奇数だったのがとても不思議。
旧東独出身の現在80歳のポンマーさん。私の旧東独という個人的先入観もあり、私好みの演奏を期待しちゃいました。そしてそれに違わぬ演奏が聴けました。
ベーレンライターの新版のスコア持参で全楽章聴きました。
第1楽章こそ、やや快速気味と感じましたが、第2楽章からは 太い骨格が見えるような安定した音楽づくり。楽器のバランスは見事すぎて スリリングな面白さとは真逆の表現。旋律をしっかり繋いだり、第1ヴァイオリンの旋律を重視し、対旋律を抑えたりと、真っ向勝負でどう料理するかを存分に味わえました。ここではスコアからの情報がとても役立ちました。
バランスの良さにあわせて、ダイナミックスは 今のような大胆さはなく、あえて言うなら p~fの範囲で音楽を作っていました。最弱音は第2楽章の半ば、79小節目のpの場面で ぐっと絞ったのに ハッとしたのが唯一。fは第4楽章ですが、乱暴にならず、安定したテンポで8分音符の動きがしっかりと聴こえてくる弾かせ方でした。
テンポの弛緩はほとんど無く、主題の接続も滑らか。ここで来るか…と期待すると サラッと流されたって思うかも。ただ、第2楽章のコーダ、フルートのナイチンゲールの囀りの入りの遅さにはビックリ!2回ともでしたので、音楽的に というより、ナイチンゲールの囀りは…という感じでしょうか。
ナチュラルホルンの音色を満喫できたのが 最大の収穫。第3楽章のソロはハンドストップの操作の妙と音色の変化がしっかり味わえました。この不安定さを技術がイマイチって感じてしまう危惧も心配。そこはプレトークなりで説明して欲しかったかも。
ヴァイオリンを中心とする弦のはっきりとしたビブラートを掛けない渋い音色のロングトーンの魅力も存分に味わえました。山形交響楽団は ビブラートの使い方が日本一上手いモダンオケではないでしょうか。ポンマーさんはその音色のパレットを見事に使い分けていました。

派手でも 刺激的でもない、まるで70年代のLPのような演奏でしたが、味わい深いベートーヴェンを聴くことができました。

終演後、サービス満点以上の山響は、恒例のソリストや指揮者とのお話が聞けるふれあい広場に参加。私はそのあと 持参したCDにポンマーさんのサインをもらっちゃいました。

今日は朝から 長くて充実した1日になりました。