神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 音楽堂シリーズ 第9回 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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今日はお昼すぎまで家でのんびり。
サンダルにポロシャツという、風呂上がりか?と思われる普段着で 歩いて5分弱。
神奈川県立音楽堂へ

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 定期演奏会 音楽堂シリーズ 第9回

15時~
神奈川県立音楽堂

指揮:川瀬賢太郎
ヴァイオリン:郷古 廉


今日の席は3列だけど一番前。そのほぼ中央。

今日は川瀬さんのプレトークがありました。詳細は曲の感想の中で。

コンサートマスター:石田 泰尚

最初は
🎵バルトーク:弦楽のためのディヴェルティメントSz.113
今日の配置は上手手前にヴィオラの、現代オケの通常配置。
重心の低いざらついた音は神奈川フィルらしからぬ。しかしこれこそがバルトークらしい土の匂いの音。神奈川フィルのトップの4人のソロが活躍する場面での引き締まった音楽も見事でした。
バロック時代の合奏協奏曲のような組み立てに、ハンガリーの民族音楽と現代音楽が融合したかのようなこの曲こそ、川瀬さんいわく
「学生時代から最も指揮をした作品」
とのこと。
古典派でハンガリーの宮廷で活躍したハイドンの前にこの曲を置くプログラムもさすが。

そして私的にはメインの
🎵ハイドン:ヴァイオリン協奏曲ハ長調Hob.VIIa:1
1ヶ月ほど前に、群馬でこの曲を聴いてきたばかり。10年に1度レベルでしか聴けないであろうこの作品を、一月足らずで2回、それもオーケストラの定期演奏会で聴けるなんて、それは奇跡的。前回の群馬の演奏は、それは刺激的すぎの、破綻寸前ともいえる、会場が逆の意味で盛り上がったという演奏。
さて、今日は…

オケを大きく絞った編成にしたのは群馬と同じ。チェンバロ無しの弦楽器のみ。
第1楽章冒頭からメリハリのあるキビキビした熱い音楽。圧巻のヴァイオリン協奏曲を聴くことができました。
速めのテンポはバロックとの訣別を示しているかの如くの表現。郷古くんのアーティキュレーションは明快そのもの。どんなに速いところでも 16分音符ひとつひとつをしっかりと刻み、そのなかでしっかりと語っていくあたり、一本調子とは対極の音づくりはもう凄すぎ。
オーケストラもかなりの強奏で応えてくる場面も多くビックリ。しかし それがヴァイオリンとの対話として成立しているので、決して煩いという瞬間が無かったのは奇跡的。リハの充実ぶりが手に取るようにわかる。
第2楽章でのオケのピチカート伴奏が単純になりがちですが、今日はその細かな表情づけが素晴らしすぎ。最後にピチカートからアルコにかわり、ソロに和してくるところの温かみのある音の調和は、美しさの極み。

指揮者のプレトークで
「普段は2日で合わせる協奏曲のリハを、今回は3日間、じっくり 郷古くんとオケとでたくさんの会話をしながらの音楽作りをした」
と 言っていた成果がバッチリ。今まで聴いたこの曲筆頭の演奏が聴けました。
もちろん私の好みと合うかといえば、チェンバロ無し、両翼配置ではない、第1楽章が荒削りすぎる…、といくつかありますが、客観的に聴けば、ハイドンの魅力を存分に伝えることのできる素晴らしい演奏には間違いなしでした。

終演後の拍手はそれは大きく熱いものでした。普通より2回ほど多くのカーテンコールは納得。

休憩のあとは 
🎵ハイドン:交響曲第92番ト長調 Hob.I:92「オックスフォード」
なんと、第1ヴァイオリンの4プルト目にひとり 郷古くんが座りました。団員外のソリストがソロのあとオケに入ることは滅多にない。ヴィオラの川本さんがドレスのまま やはり一番後ろで弾いていたのを見たのは、確かシティフィルと宮本さんの時、それは本当にひっそりと聴衆にアピールすることなく。今日はそんなサプライズを聴衆にしっかりアピール(コンマスと指揮者が入る時に郷古くんと握手)してから。

そのハイドンですが、川瀬さんは
「繰り返しを何度かする中で、まったく同じに演奏することはない!」
と。これこそ私が古典派音楽を聴くうえで 最も不満に思っていたこと!反復記号を無視するのに不満を言うも、反復を守っても同じのをやられては… と。どっちにしろ不満の多いオーケストラの古典派演奏。

ところが今日のハイドン、私の理想像とはちょっぴり角度がありましたが(まずは両翼配置じゃない!)、それはもう、ワクワクの瞬間があとからあとからの、素晴らしいものでした。
まずは川瀬さんの言葉の通り、リピート記号のあるところでは、2回目には違う表情づけを行うなどの工夫が施されていました。ただ、その幅は強弱や休符を長めにしたりはよくわかるものの、楽器間のバランスやソロのフレーズに装飾を、求めたりというところまでは至らなかったのは、期待しすぎか…
そんな中、第1楽章では再現部の172~173小節目を(3/4拍子を2拍毎にアクセントをつけ)ヘミオラ処理を施したりと、目から鱗の楽しい仕掛けを見せてくれました。
第2楽章は神奈川フィルの管楽器の美しいアンサンブルにどっぷり。そんな中、私はチェロのソロのそれは地味な、そして雄弁に語りに耳が釘付けにさせられました。
メヌエットは反復による描きわけをしっかり、そして同じト長調のトリオに対しては、メヌエットとの接続をインテンポで流し、旋律を引き立たせた表現。
快速で走った第4楽章、プレストは、最初 ファゴットがバトンパスに遅れる前の走者の様でしたが、そんなことを些細に感じさせる ダイナミックな演奏に収斂させられちゃいました。
また、ヴィオラに思いもよらぬ表情を語らせるなど、ヴィオラを手前にした効果がてきめん!「両翼配置じゃなきゃダメだ」と言う私にガツンと一発でした。

今日は郷古くんのハイドンに焦点を絞って来ましたが、私には練りに練った交響曲の新たな発見に驚きの音楽会でした。

今日はなんと郷古くんがオケで交響曲を弾いたため?か、終演後サイン会。あまりに近い会場で油断し過ぎで、郷古くんと川瀬さんのCD持って来なかった😅 仕方なく、最後に今日のプログラムにサインをいただき
「先日のベートーヴェンも感動した!」
と 伝えて来ました。



そう、その先日のベートーヴェンは 日本センチュリー響のハイドンマラソン。センチュリーのハイドンより 神奈川フィルのハイドンの方が、どうみても格段に愉しく、会場の盛り上がりも倍レベル。神奈川フィルも川瀬さんとハイドンの交響曲全集やっては如何?と。神奈川県立音楽堂は80年代まで 日本ハイドンアンサンブルが ハイドン(時代)の未知の曲を紹介、そして大宮真琴先生が音楽講座、をしてきた土壌。かくれハイドンファンは横浜にいるはずですから。

今日はホールで拝鈍亭の住職さんや 中学校の同級生に会うなど、楽しく充実した1日が過ごせました。