小倉貴久子のモーツァルトのクラヴィーアのある部屋《第22回》J.ヴィダーケア | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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梅雨らしいジメジメの低層雲が覆う首都圏。歩くと暑い暑い💦
今夜は新宿まで移動。

小倉貴久子のモーツァルトのクラヴィーアのある部屋《第22回》
〔ゲスト作曲家〕J.ヴィダーケア
Jacques Christian Michel Widerkehr [1759-1823]

近江楽堂
19時~

小倉 貴久子(クラヴィーア)
三宮 正満(オーボエ)


コンサートの聴きどころ
『アルザス生まれのヴィダーケア。パリ、コンセール・スピリテュエルなどでチェロ奏者として活躍との記録がありますが、いずれの団体とも正規の契約は結ばなかったようです。彼は、パリのオーケストラのために独奏楽器を様々に組み合わせたサンフォニー・コンセルタントという、当時人気を博していたジャンルに筆を染め、1790年代にはこのジャンルで名声を獲得。また室内楽の分野でも弦楽四重奏曲をはじめ、愛好家の要求に応えるフランス流の軽快で気の利いた作品を残しました。〈クラヴィーアとヴァイオリンあるいはオーボエのための3つのデュオ〉は、当時フランスのみならず、ドイツでも人気のあった魅力的な作品です。クラシック期におけるオーボエと鍵盤楽器のための貴重なレパートリーといえるでしょう。
モーツァルトのヴァイオリンソナタのオーボエ版(ハイドンの弟子のI.プレイエルがオーボエ用に編曲)、ドラマティックな楽想をもつアレグロ ト短調 K.312もお楽しみ頂きます。』

ヴィダーケアという作曲家、18世紀音楽をたくさん聴いている私も 初めて聞く名前。18世紀のオーボエ音楽の作曲家として すぐにピン!と来るのは、ベゾッツィくらいしか思い浮かばない…
そんな超レアな作曲家の音楽。ワクワク度最大で新宿に向かいました。

最初は恒例の小曲から
🎵モーツァルト:小品 イ短調 K.15k
反復時の装飾の華やかな対比が素敵。かわいい作品の魅力を引き出した演奏。

三宮さんのクラシカルオーボエが加わり
🎵ヴィダーケア:オーボエとクラヴィーアのためのデュオ・ソナタ 第3番 ヘ長調
4つの楽章からなる作品。
第1楽章は ダイナミックなフォルテピアノとメリハリのあるオーボエとの丁々発止に釘付け。ピアノだからこその作品。ベルサイユの音色というより革命後の市民の音楽。
第2楽章のアダージョの歌はオーボエの独壇場。旋律の美しさにうっとり。
第3楽章では 牧歌的なトリオがとても愉しめました。

ここで三宮さんのレクチャー その1
ドイツのオーボエの変遷について。
バロック~クラシカル~ウィーン式 のオーボエを 実際に見て、聴いて その違いを確かめるという、丁寧なもの。
ドイツのバロックオーボエのどっしりした音にちょっぴりビックリ。

続いて同じドイツのクラシカルオーボエで
🎵モーツァルト:クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ ヘ長調 K.377(I.プレイエルによるオーボエ編曲版)
ヴァイオリンソナタからの編曲とは思えない フィット感は、編曲もありますが、三宮さんの余裕のある演奏にもよるのでしょう。
特に第2楽章の変奏曲の、特にマジョーレのところの、ヴァイオリンでは出せない艶やかな音色は絶品。
第3楽章、最後の1フレーズでの弱音器を着けた柔らかな音がそれは美しく印象に残りました。

休憩のあと
🎵モーツァルト:アレグロ ト短調 K.312(レヴィン補筆完成版)
未完成作品。ソナタの第1楽章の途中で作るのを忘れたって感じの、完成度の高い曲。小倉さんの第1主題から生気あふれる演奏。展開部の入りでペダルを効果的に使ったのは、まるでオーケストラの演奏を聴いているかのような色彩感。途中で書くのを中断されたことが本当に残念と感じさせる 躍動的な演奏が聴けました。

三宮さんのレクチャー その2がここで!
フランスのオーボエの特徴について。ここでもバロック~クラシカル~モダンとの対比と、前半のドイツの楽器との対比も聴くことができたのが、とても勉強になりました。特に印象に残ったのは、クラシカルオーボエのドイツ式とフランス式の音の違い!(管の太さの違い!)そして1840年にはクラシカル楽器だったのが、1870年には現代のキーがいっぱいついた楽器に変わってしまった、ってこと。30年でここまで変化しちゃうとは!

最後の曲は
🎵ヴィダーケア:オーボエとクラヴィーアのためのデュオ・ソナタ 第1番 ホ短調
4つの楽章からなる作品。
メランコリックな短調らしい第1楽章。古典派からロマン派への架け橋を渡っている曲って感じ。
第2楽章のメヌエットに続いての第3楽章のアダージョが一番印象に残りました。やはりオーボエの温かみのある歌が絶品。
第4楽章ではフォルテピアノとオーボエの会話が充実。三宮さんと小倉さんの愉しそうなアンサンブルは とても気持ちよく聴けました。

今日も完売公演。椅子が隙間なく並べられたクーラーが効いた近江楽堂に 温かい音が満たされました。

終演後、ゆっくりとホールを出ようとすると レクチャーで吹いたオーボエが目に入ったので写真をパチリ。特にクラシカル楽器の姿の美しさが際立っていました。



左から、ドイツバロック~ドイツクラシカルオーボエ~ウィーン式~フランスバロック~フランスモダン(現代オーボエ)