仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門、セミファイナル:第3日 | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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旅と鉄道と温泉が大好き。
そして、クラシック音楽も好きなもんだから、音楽会を理由に、日本国内を旅しています。
音楽と旅を中心に、日記を書いていきます!

今日も仙台。
朝食後、のんびりスタート。まずは床屋で頭をスッキリ。一番町を歩いたので昨日に続き、井ヶ田に立ち寄り。昨日はぜんざいパフェだったので、今日は抹茶パフェ。



地下鉄で旭ヶ丘へ。駅は国際音楽コンクール一色。



日立システムズホールへ。



まずは2階の交流サロンへ。一般の人も入れるそこには、大震災時の仙台の音楽による復興の写真や 小さな七夕飾りなど、仙台のおもてなしが感じられる休憩室がありました。




仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 セミファイナル
第3日目
14時~
日立システムズホール コンサートホール



指揮:広上 淳一
仙台フィルハーモニー管弦楽団
コンサートマスター:神谷 未穂

セミファイナル
次の①②の両方を演奏する。
① シューマン: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
② 次の曲目から1曲を選択すること。
・サン=サーンス:序奏とロンド・カプリッチオーソ op.28
・サン=サーンス:ハバネラ op.83
・サラサーテ:カルメン幻想曲 op.25
・ラヴェル:ツィガーヌ

審査員
堀米 ゆず子(審査委員長)
堀 正文(審査副委員長)
ロドニー フレンド(審査副委員長)
ボリス ベルキン
マウリシオ フックス
ホァン モンラ
加藤 知子
ヤンウク キム
ギドン クレーメル
チョーリャン リン
レジス パスキエ
竹澤 恭子


昨日終わった段階で、私のお気に入りの演奏をした(CDの予約をした)人は3名。ところが選択曲に私の好きな『カルメン幻想曲』を弾いた人がいない。このまま『カルメン幻想曲』のCDを買わず…になるのか? 今日『カルメン幻想曲』弾くの1人だけ!

ということを考えながら席に着きました。今日は前から4列目の左ブロックの内側から2番目の席で聴きました。ソリストは間近で オケの音もそれほど悪くない席。一昨日のひとつ外側。
今日の演奏曲目はすべてスコアを持参したので 目からも情報を入れながら聴きました。

最初は
14:00~
藤江 扶紀、FUJIE Fuki:日本
・シューマン: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
オケがとても温かい音色で開始。広上さんの演奏がソロにしっかりと寄り添う伴奏をしているので、この段階で 音楽の方向性が予測できるのが、3日目の良いところ。第2主題でテンポをグッと落としてpp。私の好みの音楽の予感。
ソロが入り、16分音符の同音反復のひとつひとつが語るよう。それに続く16分音符のフレーズは1小節ごとに言葉を語るようなイントネーションの違いが聴きとれました。第2主題もオケの提示の通り、ゆっくり優しさいっぱい。そのあとの重奏のところは2人での会話の様。もうここで完璧に魅了、夢の世界に惹きこまれました。
シューマンがどのような時に作曲したのかは知りませんが、愛があふれる時期の曲なのかなぁ~って。
そのように丁寧に感情豊かに演奏していたのですが、再現部の最後、重奏のところで乱れたのが本当に残念。夢の世界から現実がちょっぴり見えてしまった感じ~ディズニーランドで航空機が間近に見えたような…
第2楽章もそれは美しい演奏。チェロのソロとしっかりと対話。そしてこの曲の最も美しい(と私が感じている)19~20小節の第1ヴァイオリンとの響かせかたも絶妙。本当にもっともっと聴いていたい…と思うような演奏でした。
第3楽章では137小節からのチェロが第2楽章の主題を奏するところで、チェロとヴァイオリンのソロどうしの掛け合いが呼応し合ったのは 今回随一。
コーダのホルンの旋律もハッキリと聴かせながらのソロがそれを装飾していくようなバランスは それは見事。
私の聴きたいポイントをすべて押さえたような演奏。
ソロが引っ込み過ぎとか、地味とか言われそうですが、『協』奏曲として オケとともに音楽をつくると聴けば 私の理想の演奏でした。
もちろん「ブラボー!」

・ラヴェル:ツィガーヌ
この作品では藤江さんのスタイルは ちょっぴり小粒かなって感じも。派手に技巧を見せびらかすくらいの『俺様根性』が欲しかったかも。
安定した技巧でキッチリと聴かせてくれましたが、特殊奏法~ピチカートとフラジォレット~で音量が一気に落ちてしまうのが(特にピチカート!)が気になりました。

続いて
14:40~
小川 響子、OGAWA Kyoko:日本
・シューマン: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
この前に私好みの演奏が来てしまったので、ちょっぴり比較しちゃいながら聴いちゃいました。
こちらも冒頭のオケが第2主題を それは優しく演奏したので 期待の高まりがありました。
ソロが奏でられると同時に、ソロがオケに寄り添いながらの音づくりにホッコリしました。16分音符の動きが続くところでは、1拍(16分音符4つ)ごとに大きな表情をつけながら 小節の言葉を紡いで行くのが素敵でした。
第2楽章ではチェロとの対話をしっとりと聴かせてくれました。温かみのある演奏が良かったです。
第3楽章もオケとしっかり組んだ構築感が感じられる、それでいて温かみのある演奏が良かったです。
小川さんの演奏で私が特に魅力的に感じたのは、ソロがオケの中から浮かび上がって来るような瞬間が幾度か有ったこと。ソロがオケと一体化したあとにフワッと出てくる幻想的な感じ。また、16分音符の連続した動きに、だいたいは弓を返すタイミングで音を明瞭に切るのですが、小川さんは意図したのかはわかりませんが、拍節感を消した音の連続として聴こえるところの浮遊感も独特な雰囲気があり、本当に素敵でした。
「ブラボー!」

・サラサーテ:カルメン幻想曲 op.25
立ち位置をシューマンより一歩前に出た感じから意気込みが伝わりました。
鮮やかで
『ハバネラ』のそれぞれの部分の描き分けは見事!特にオケに1拍遅れてくるところのオケに退けをとらない鮮やかさは見事でした。
『トゥララ…』のところではこれほど美しく演奏したのを聴いたことが無いくらい。感動!
最後のジプシーの踊りに入ったところで弦が緩んだか?音が不安定になったのが残念。しかしすぐに持ち直して堂々と締めました。
「ブラボー!」

休憩後
15:40~(実際は16:00~)
メルエルト・カルメノワ、Meruert KARMENOVA:カザフスタン
・シューマン: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
前半の2名とは異なり、オケのスケールの大きいこと。広上さんと仙台フィル、ちゃんと心の準備をさせてくれました。
第1楽章では第2主題もちょっぴり骨太。繰り返しのフレーズもグイグイ行く感じ。ここまで3日で10回聴いた私の中では この演奏は対極の位置に来てしまった感じになりました。
全体的にソロを前に出した音づくり。オケの対旋律や絡みの部分を控え目にした様。安定感はありましたが、私の心にはちょっぴり届かなかったのが 素直な感想です。

・ラヴェル:ツィガーヌ
元気いっぱいで ソロを弾き始めました。楽器の音の豊かさは比類ない。「民族音楽ってこうなんだ!」と言うように。
藤江さんとは対照的。100m競走でいうなら、中学生の県大会選手とインターハイ出場の選手くらいの迫力の違い!
特にピチカートの音の圧力は凄すぎ!楽器のせい?それとも筋力の違い?もちろんカルメロワさん、名前からわかるように 女性です。
日本風にいえばこぶしを効かせた音楽と最後の舞曲での捲し上げもなかなか。
私的にはもう少しじっくり目の方が好みでしたが、とても熱い演奏が聴けました。


セミファイナル 最後は
16:20~
岡本 誠司、OKAMOTO Seiji:日本
・シューマン: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
スケールの大きな堂々たる演奏。序奏のオケも第2主題でテンポをさほど落とすことなくアッサリ目。これは私好みではないなぁ~
ソロが入るや楽譜を真正面に ソロがメインだ!~協奏曲なんだからそれが当たり前といえば その通り~という演奏。
第2楽章もチェロのソロを伴奏の音型のひとつのよう。
第3楽章もコーダのホルンはソロを引き立てる照明のひとつの様。
私好みではない…と感じていたのは第1楽章の提示部まで。その後は岡本さんのスケールの大きな演奏に耳が釘づけにされてしまいました。
まるで大きな山の裾野の湿原の緑の中で 爽やかな風に吹かれるような感じがしました。
私好みの演奏ではありませんが、スケールと音楽の充実感は、他を圧倒するものがありました。
ブラボーを考えたのですが、私好みではなかったので 掛けませんでした、が、今となってはやっぱり掛けておけばとちょっぴり後悔。凄かったことには間違いないのですから!

・ラヴェル:ツィガーヌ
冒頭のソロ、(一昨日の人も含め)他の演奏者に比べると、ゆっくり。ホールの響きをしっかりと利用しながら 休符の長さを、否、テンポを決めている様。ホールの残響が上から降ってくるのをじっくり聴ける。このテンポと間は それこそ私好み。
オケが入ってきてからはそれぞれの舞曲を色彩鮮やかに弾き分けました。後半のテンポの変化もオケとピッタリ、フラジォレットの挿入も安定していて、コンクールというよりは、演奏会を聴いているような安心感。つまり曲にどっぷり浸れました。


これで3日間にわたる仙台国際音楽コンクール、ヴァイオリン部門のセミファイナル、12人の演奏が終了。とても楽しい3日間になりました。
コンクールではセミファイナルが一番楽しいと思っている私ですが、今回は 課題曲を見て「これは行かねば!」となりました。 地味だけど知れば知るほど魅力がじわじわと出て来そうな、実演を聴いた記憶がない、シューマンの協奏曲。それに選択曲に私の好きな派手なヴァイオリン曲ばかり!シューマン12回、飽きるどころか 聴くたびに新しい発見にワクワクの連続でした。スコアを持参したのも良かったです。


最後にファイナルに進む6人は?

既に発表になっているはずですが、この日記を挙げてから見たいと思います。
昨日までに「ブラボー!」をかけた3人と、今日の最後の岡本さんの4人は行くとみましたが、あとは…。
私好みのオケとの対話を重視していたらソロのコンクールの意味は薄れそうだし、楽器の鳴り方や音の質、演奏のミスなどの不安定要素をどこまで減点とするかでしょう。初日の青木さんの楽器の鳴り方や、今日の前半の2名の方向性や不安定さが、どれくらいの影響するのかがわかりません。私なら今日の前半の2名を加えた6人としたいです。ただ。初日の前半2人を聴いた時の、特にシューマンに対する耳(聴きかた・理解)は、今の耳とはまったく違いますから…
昔、吹奏楽コンクール(県大会)では金賞当てが得意だったのですが、やはりこのレベルになると甲乙つけ難く みなそれなりに説得力を持っていますね。

それより私は広上さんと仙台フィルの相手に合わせる音楽作りにこそ、大きな「ブラボー!」を叫びたかったです。

今日はお友だちと仙台駅でわかれて夕食は新幹線で仙台らしいおにぎりを軽く食べての帰宅となりました。