藍川由美「日本のうた編年体コンサート」第15回『國民合唱』と同時代の歌(1944-45) | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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祝日の日の密かな楽しみは、乗り合いバスに日の丸の旗がつけられているか、見ること🎌
街道筋の宿場町、特に街並み保存地区などでは そのような習慣もあわせて保存し、日の丸を掲げるべきだと思うのです。
と、古い街並み歩きに絶好な日にはなったのですが…☀
建国記念日の今日は🎌

藍川由美「日本のうた編年体コンサート」 第15回
『國民合唱』(1942-45)と同時代の歌(1944-45)

東京文化会館小ホール
14時~

藍川由美 (歌)
蓼沼明美 (ピアノ)
片山杜秀 (話)


前半は
<昭和19年>
「戰ふ花」(國民合唱 1944.2.21放送/深尾須磨子・橋本國彦)
6/8の揺りかごのような優しさあふれる曲。

「空の父 空の兄」(國民合唱 1944.3.6放送/与田準一・名倉晰)
話すような耳に優しい言葉重視のような曲。最終行の美しさが印象的。

「少年兵を送る歌」(國民合唱 1944.3.20放送/松田又一・林伊佐緖)
速いテンポの行進曲調。ラッパのようなピアノのリズムが生きていました。

「突撃喇叭鳴り渡る(一億總蹶起の歌)」(國民合唱 1944.5.1放送/勝承夫・古関裕而)
突撃ラッパの曲から始まる。軍歌調ですが、途中の転調が鮮やかな芸術的な曲。

「僕は空へ君は海へ」(國民合唱 1944.6.12放送/サトウハチロー・佐々木すぐる)
3拍子がサビの部分で2拍子に変わる作品。とても可愛らしい曲。

ここで藍川さんのお話。
・今、縄文の音楽に取り組んでいる。
・このシリーズは今回が最後。つまり戦後はやらない。
・この時代は官制の音楽。つまり検閲される→作詩、作曲者は発表されない→改作、改竄は普通に行われる!
「あゝ紅の血は燃ゆる」(國民合唱 1944.6.26放送/野村俊夫・明本京靜)
この有名な曲は、戦前は前奏を短調として録音されていたが、原曲は長調から短調へと転調させていた。

「若獅子の歌」(國民合唱 1944.9.4放送/佐伯孝夫・佐々木俊一)
プロペラの回転を模したようなピアノが印象的。配布されたプログラムには、16小節が4節のこの曲、レコードやラジオ放送のために、橋本國彦が前奏、間奏、降奏を編曲したとのこと。

「日本の力」(國民合唱 1944.10.23放送/八十島 稔・橋本國彦)
農民を讚美する歌詞の曲。軽い感じの前奏から、行進曲風の曲になる。田園調を予想するとビックリする。

ここで、藍川さんのお話。戦前は世俗の古賀の音楽は(戦時色の強い)国民歌謡とは相反したので、この時代の古賀の音楽は珍しい。しかし、この曲も検閲で改竄されている。現在残されているのはそちら。原曲は失われた。
「勝利の日まで」(コロムビア 1944.4新譜/サトウハチロー・古賀政男)
わかる範囲での編曲は、サビの部分が柔らかい表現から力強いリズムと音に変更された。今日もその演奏。

「ラバウル海軍航空隊」(日本放送協會 1944.1放送/佐伯孝夫・古関裕而)
推進力あふれる軍歌。

『あの旗を撃て』主題歌「あの旗を撃て」(東宝 1944.2.10公開/大木惇夫・古関裕而)
ゆるやかなテンポの追悼的歌詞の部分に合わせた曲。


休憩のあとは片山さんのお話から。
・今日のプログラムは 当時とは異なり、現在耳にすると、歴史の重みを感じるプログラムとなっている。
・藍川さんは縄文音楽に関心が移ったので このシリーズはここで終わる。
・この時代の音楽の役割は、国民に正気を保たせるためのもの。食べる不安と死の不安。
・音楽は国のために作られる。職場で歌えるように2部以上の合唱曲を流布。
・山本五十六の死では悲壮感のある曲、マリアナ諸島での苦戦では戦局の挽回を歌う曲が多くなる。
・航空志願者を増やすため、空を称える歌詞の曲が昭和19年頃から多くなる。
・昭和20年に入ると資材不足でレコードは作られなくなるが、日比谷公会堂の演奏会は毎日のように行われ、ラジオ放送も生演奏があり、新作は作られ続けていた。

後半は
「春夫の詩に據る四つの無伴奏の歌」(1944.5.15完成/佐藤春夫・早坂文雄)
戦争とはまったく無縁の作品。
歌を歌うというより、歌を吟うという感じの4曲。芸術的完成度の高い作品。

「比島決戰の歌」(讀賣新聞社/コロムビア 1944.3新譜/西條八十・古関裕而)
元気な4拍子の典型的な軍歌。歌詞にニミッツとマッカーサーが入っている!戦犯問題で話題となる作品。このニミッツとマッカーサーは読売新聞幹部と軍部将校の作詩。

『雷撃隊出動』主題歌「雷撃隊出動の歌」(東宝 1944.12.7公開/米山忠雄・古関裕而)
暗い曲調で 特にピアノの陰影が深い作品。

<昭和20年>
「勝ちぬく僕等少國民」(國民合唱 1945.1.21放送/上村数馬・橋本國彦)
2拍子の軽い、歌いやすく覚えやすい曲。

「必勝歌」(國民合唱 1945.2.11放送/杉江健司・大村能章)
4拍目から入る、芸術的センスのあふれる曲。節の後半の行進曲風との対比が明瞭。明るい曲。

「特別攻撃隊『斬込隊』」(國民合唱 1945.4.1放送/勝承夫・古関裕而)
ゆるやかなテンポの悲愴感と深い情感漂う曲。
 
「嗚呼神風特別攻撃隊」(日本放送協會 1945.3放送/野村俊夫・古関裕而)
生気みなぎる軍歌。節の後半にある一瞬、平安さを感じさせる転調が光っていました。

片山さんの充実したお話を含めて2時間。とても聴き応えのある演奏会でした。
来年度もいつやるのか、他公演と重ならないかと心配していたのですが、今回、戦時中の音楽までで終わりとは、残念。
岡林信康や高田渡、そして、吉田拓郎や中島みゆきまで聴きたかった。

次回って もしかして、縄文時代の音楽会なんでしょうか…
藍川さん、当時の環境に近い中で曲を見つめるために、石の上で歌うとか🌋
シューベルトに『ナントカの上で歌う』とかって言う曲あったような⁉
石じゃないよね💦