二期会:ジューリオ・チェーザレ (エジプトのジュリアス・シーザー) | 北十字の旅と音楽会記録が中心の日記

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今日はこれからの私のオペラシーズンの幕開けになる公演!

二期会ニューウェーブ・オペラ劇場
ジューリオ・チェーザレ (エジプトのジュリアス・シーザー)
台本:ニコラ・フランチェスコ・ハイム
作曲:ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル

新国立劇場 中劇場
17時~
に行ってきました。


以下は二期会のHPからのコピーを引用します。

《ものがたり》
時代は紀元前1世紀。ローマのジューリオとその軍隊は政敵ポンペイウスを追ってエジプトに入る。しかし、すでに政敵はエジプト王トロメーオによって処されていた。ポンペイウスの妻コルネリアと息子セストは復讐を誓う。またトロメーオの姉クレオパトラも王座をめぐりジューリオに接近。ジューリオはその美貌に心を奪われ、クレオパトラも想いを真実のものとしていく。一方、トロメーオは、コルネリアとセストを捕え、将軍アキッラにジューリオの暗殺を命令、その見返りとしてコルネリアを報酬とすることを約する。アキッラに追われるジューリオは海に飛び込み逃走。もう命はないものと確信したアキッラだったが、王は邪な考えを寄せるコルネリアを譲らなかった。アキッラの忠誠心が揺らぐ。
ついにクレオパトラも弟王に敗れ捕えられる。だが、覚悟を決めた彼女のもとに、海を渡りきったジューリオが姿をあらわす。ふたりは喜びと闘争心を取り戻す。一方、トロメーオはコルネリアに迫る隙にセストに命を奪われる。アレキサンドリアの港で勝利を収めたジューリオがクレオパトラに戴冠し、人々の歓喜の声がこだまする。

スタッフ
指揮:鈴木秀美
演出:菅尾 友
装置:二村周作
衣裳:十川ヒロコ
照明:原田 保
振付:中村 蓉
原語指導:フラヴィオ・パリーズィ
演出助手:菊池裕美子
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:大島幾雄、多田羅迪夫
キャスト
ジューリオ・チェーザレ:杉山由紀
クレオパトラ:田崎美香
セスト:今野絵理香
コルネリア:池端 歩
トロメーオ:福間章子
アキッラ :勝村大城
クーリオ:杉浦隆大
ニレーノ:西谷衣代
管弦楽: ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ

コンミスに戸田薫さん、オーボエに三宮正満さん、通奏低音のチェロに山本徹さん、テオルボに佐藤亜紀子さん、チェンバロに上尾直毅さんと福間彩さんという古楽の大御所を配置。それに大学の学生を中心にした若手主体のオケ。

今日の席は 前から3列目、中央のやや下手寄りという、舞台を見るにはもってこいの席。ただ舞台左右の字幕はちょっぴり見にくい近さになりました。
ホールは満員。今日、明日とも完売とのこと。

この演出では 回転舞台(4分割の90°)をフルに活用した装置で 多くの人物が代わる代わる演じる場面を巧みに処理していました。

舞台上には開始10分ほど前から ワニの被り物をした舞踊のメンバーが演技を開始。以前にも同様の舞台開始前から演劇を始めた演出を観た覚えがある。同じ演出家だったかな?
ワニの意味はエジプトをイメージしたものなのでしょうか?
今日は有料のプログラムの販売がなく、B4を2つ折にした二期会のHPを印刷した程度の『プログラム』が配布されただけ。細かい幕の進行や演出のポイントなどがまったくわからないまま観ることになりました。開場と同時に入ったのにオペラで手持ち無沙汰って 有り得ないんだけど…

最初の序曲から オケの大きな生き生きとした表現でぐぐっと集中させてくれました。オケは最後まで とても充実した引き締まった演奏が見事でした。若い力の全力投球の賜物って感じ。第2幕や最後のオケの部分でのナチュラルホルンも健闘しました。オケについては某在京オケピ常連モダンオケの、練習時間がそこそこの楽譜かじりつき演奏などより、よっぽど安定した、弾力ある演奏を聴くことができました。

演出はその舞踊のメンバーのワニたちがちょうど黒子のように、舞台の後ろで大活躍。
また時折、そのワニたちが骨格だけを模した人形を操りながらの動きも。
そういえば 最初、ワニがシーザーの杉山さん他、最初に出てくるメンバーを担いできて、舞台上に配置していくところから始めていました。
幕切れの場でも、死んだ役の人たちが荷車によって運ばれ、舞台上にまた配置して終わるという演出。
そこから私の無い頭で考えたのは
・ワニの世界のマリオネットを観ている
・ワニが死者を甦らせながら 舞台を作っている
と いうあたり。
それが決定的になったのが第3幕、決闘の場面で ダカーポアリアの3場面で3回の決闘、つまり2人の決闘で3回死ぬ場面がある!など、夢の中のような演出になっているところ。現実の世界を考えながら観たら矛盾点満載になっている←オペラは元々矛盾点だらけですが… 演出でしたから!

権力と愛と野望の渦巻くオペラ。ジュリアス シーザーにクレオパトラが主役という高貴な題材で最後の大団円。シーザーとクレオパトラの二重唱なんですが、そこまではシリアスな感じでグイグイ進んでいたのに…

まるで木に竹を接いだような…

そう、シーザーとクレオパトラが
マゼットとツェルリーナになっちゃったんです。
もう笑わずにはいられませんでした!
狂言観ているのかって…

最後は赤ちゃんが降ってくるし…
これは最初に頸が降ってきたのの対比ですから 演出上はわかるのですが…

本当に愉しく、突っ込みどころ満載で、かつ 考えさせられる なかなか多彩な演出は脳みそフル回転で 眠くなる瞬間さえ与えてくれませんでした。

そしてオペラの醍醐味たる歌唱。
ダカーポアリアでは 反復時に簡単な装飾を入れてはいるものの、ハッと言わせるまでには至らなかったのは残念。しかし ビブラートの無い真っ直ぐな歌は 本当に美しく、聴き飽きない歌の連続でした。

タイトルロールの杉山さんは宝塚の男役的な凛々しさと堂々たる演技がそれは魅力的。ただ声量がホール全体、オケを相手に歌うにはちょっぴり不十分の感が残念。
歌唱で光っていたのは クレオパトラの田崎さん。ちょっぴり演技では学芸会的なところがお茶目でしたが、ダカーポアリアでは 繰り返したあとの装飾などはなかなかでした。
あとはアキッラの勝村さんはじめ、他の6名も安心して聴ける歌唱に驚き。なぜなら今日のキャストで聴いたことがあるのはもちろん、名前を聞いたことがある歌手は一人もいなかったのですから!

そして先程はちょっぴり辛辣な言葉を使いましたが、演技に関しては、全員、本当の熱演。素晴らしい舞台を観ることができました。

最後にオペラで印象に残った場面は
2幕の冒頭のアリアでは一部のオケのメンバーが舞台上で演奏したこと。ピット内のオケとの対比がエコーみたいに効果的。それは鮮やかでゾクゾクしちゃいました。これは私の席の位置あたりが最もわかりやすかったということもあります。

また そのあとのシーザーのアリアでは客席を巧みに利用した歌唱。
そう! 2幕の幕開きはクレオパトラが舞台後方から客席を歩いて入ってきたし!
また2幕半ばのセストのアリアは回る舞台を生かし、歩きながらの歌唱。観ているこちらが目が回らないだろうかと 心配しちゃいました。

今日はちょっぴり期待、ちょっぴり不安で、4時間なんて持たないよ~ って思っていたのに、あっという間の4時間でした。
2月のヴィヴァルディに続いて バロックオペラでこんなに楽しめるなんて、もう ビックリです。

明日は別の組の公演。それぞれの組が1回限りの公演なんて 勿体なさすぎる完成度でした。歌手の力量でダカーポアリアはその歌はまったく異なってくるから これは2日行っても楽しめるな!って印象でした。これが中ホールで最高の席が10000円って お得すぎる公演音譜