28日の深夜から、親父の横でひとり看病についていた。
息苦しくって、すこしゼイゼイしながら呼吸を続け、
時折目を開けて、こっちを見たりあっちを見たり。
何度も何度も寝返りを繰り返しては、手を差し伸べて
その手伝いをした。だって、親父ひとりじゃ寝返りうてないから。
肝臓が腫れ、肋骨を圧迫し、横隔膜を圧迫し呼吸しづらい。
だからずっとずっと、背中とわき腹と腰と・・・・
ずっとずっと、さすってた。
手と足と、低温だったから、ずっとずっとさすって温めた。
親父と2人だけの時間。
2人っきりの時間は、すごい暖かくって、すごいゆっくり時間が
流れて、声にならないけど、いっぱいいっぱい会話ができた。
ねー、とーちゃん。
俺がずっとさすってんのに、なんで涙だしてんだよ。
寝返りするのに、抱きかかえてあげてるのに、
なんで涙流してんだよ。
俺とーちゃんの前じゃ、絶対涙見せないって決めたのに
とーちゃんの涙見たら、つられて涙がでてきちゃうじゃん。
とーちゃん、一服してきていい?って聞いたら、
<うんうん>って頷く。
やっぱり耳はちゃんと聞こえてんだ。頭もしっかりしてる。
29日午前3時。
看護師さんが、心拍数の低下が少しだけあると話をしてきた。
親父の横で見守りながら、ずっとずっと腰も手もさすった。
29日午前5時55分。
看護師さんが、来た。
心拍数が低下してきているから、家族に電話をと。
兄だけに電話をした。母や姉にはまだ心配かけたくなかった。
29日午前8時。
姉が来た。9時からのお客さんだけはどうしても行かないと
だから、その前に顔を出しに来た。
おっかーは、もうすぐ来るよって言いながら、8時25分に行った。
29日午前8時35分。
看護師さんが、来た。急激に低下してると。
俺はまばたきひとつしないで、ずっと親父を見てた。
呼吸の間隔が、一回一回の間隔が長くなってる。
言葉にならない。
胸が締め付けられる感覚。
先生が、心臓は動いていませんと。
それでも、時折呼吸をしている。
最期なのかな、最期に大きく深呼吸をするように
苦しむ事もなく、声をあげることもなく、
本当に眠るように。
安らかに、病気の事なんか、何もなかったように、
永眠しました。
普段通りの顔で、今にも目を開けそうな顔で。
親父の、優しい顔で。
親父の横で、俺ひとり。
溢れでる涙が止まらなかった。
みんなに電話しないといけない。
声がでない。でるわけないよ。
かーちゃん、とーちゃんが・・・・。
おにー、とーちゃんが・・・・
みんなに電話した。
とーちゃんの横で、いっぱい泣きながら、声がでなくて
でもみんなに電話した。
かーちゃんが来るまで、親父の手を温めなきゃ。
顔も頭も手も足も温めなきゃ。
温もりある親父を皆に会わせなきゃ。
一生懸命さすった。
まだ冷たくなっちゃダメだよ。
あと、もうちょっとだけ、待ってくれ。
俺が一生懸命暖めるから。
おっかーが来るまで、いっぱいいっぱいさすった。
親父の前では泣かないって決めたのに、ずっとずっと
涙が出てくる。
程なくして、おふくろが来た。
とりみだして、親父に抱きつくおふくろ。
親父の鼻に付けてある、酸素ホースを見て
これついてるから、まだ大丈夫なんでしょ?
心臓のあたりをさすって、たたいて、一生懸命呼んだ。
とーちゃん、とーちゃん。って。
ほら、手も暖かいよ。
とーちゃん。ほら、起きて。
耐えられない俺。
限界だった。
声を出して、泣いちゃった。
姉と兄もその後すぐに駆けつけた。
もう病室に一緒にいられない。
廊下で、泣き声を聞くのが精一杯。
泣きながら、外に出た。
身内や親戚に急いで連絡しないと。
外でタバコに火をつけた。
声にならない声で、言葉にならなくって。
一生懸命電話した。