よく、子宮内膜が厚いから生理の量が多いとか、子宮内膜が薄いから生理の量が少ないなどと言ったりします。これってどのくらい正しい考え方なんでしょうか。そこで今日は、この推論はどのくらい正しいのかを数学的に考えてみましょう。
ということで、一体何のブログだって感じですが中1にタイムスリップ♡
では早速子宮内腔の体積(容積)はどのくらいなのか考えてみましょう。本来は境界線は曲線ですからいくつかの部分に分けて近似式作って積分してもいいし、エコー写真をAIに読ませて面積求めて回転させて体積ですってことにしてもいいのですが、それだと難しすぎて面白くないので、子宮内膜を「逆さの円錐(とんがりコーンのような形)」みたいな形であると仮定してみましょう。最も厚い部分(子宮底部)の内膜の厚みを10mm、高さ(子宮内腔の長さ)を70mmとします。つまりこんな感じです。
半径r、高さhの円錐の体積Vの公式は、
です。
直径10mmということは半径は5mmですので、これを公式に代入すると以下のようになります。
円周率を3.14として、体積は約1832.6㎣となります。1cm = 10mmですので、1cc = 1㎤ = 1000㎣ということになりますので、たったの1.8ccということになります。実際、私も計算してみて、「あれ、本当にこんなに少ない?」と思い、何度も計算し直しましたが、やはり間違いありませんでした。ちなみに本物の子宮内膜は円錐の形よりももっとクビレがありますし、下の方はほとんど厚みがありませんから、実際にはこの2/3程度の1cc少々と思われ、だいぶ少ない時の射出精液の量とほぼ同じくらいの量しかないことになります。
そうか、なんとたった1ccちょっととは!実際、子宮の内容量がこれほど少ないことを知っている患者さんはほとんどいないでしょうし、医師でもこの数字を実感として持っている人は少ないかもしれません。このことから、皆さんが「内膜が剥がれて出てきた」と思っている月経血の多くは、実際には「剥離面からの出血」であり、内膜そのものはごく少量であることがわかります。
また、子宮内膜が厚い場合で相当多めに見積もっても3~4cc程度、逆に内膜がたった5mmでも子宮内容積は0.5cc程度ですので、子宮内膜の厚みによる子宮内容積の個人差は思ったほどないことになります。
月経血の量は35歳前後から少しずつ減り始めることが多く、「そろそろ私は閉経なのでしょうか」とよく質問されますが、AMHが極めて不良(0.02未満等)で全く排卵しない等の場合を除いては、月経血の量と卵巣機能は無関係、ましてや閉経時期とはもっと無関係です。また、月経血が減っても子宮内膜を測定すると意外とちゃんとした厚みだったりすることもあるのですが、そもそも月経血の大半はただの出血であり、子宮内膜そのものの量と直接的な関係があるわけではありませんので、基本的に月経血の量を心配する必要はありません。
当院では、初診問診票だけには月経量を書く欄がありますが、書いていただいておきながら大変恐縮なのですが、カルテにはそれを転記したりあるいは毎月の月経量を記録する欄はありません。「今月は生理の量が多くて~」「少なくて~」というのは、多い場合は子宮筋腫や内膜ポリープの存在、あるいは極端に少ない場合はホルモン異常や子宮内膜の機能不全が隠れていることもあり、そうした診断のきっかけになることもありますし、あまりにも月経が多くて貧血になってしまいそう、あるいは日常生活に影響があるとか、ほとんどカスカスの量しか出ない等の場合はさすがに問題ですが、そうした場合以外は、子宮内膜の厚さと月経量には「なんとなく」以上の明確な関係はありません。排卵や移植前に内膜がしっかり厚くなっているかどうか――そこが重要なのです。
ということで、今日は子宮内膜についてちょっとだけ数学的に考えてみました。
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それでは、次回もお楽しみに。