具体的な商品名を書いてしまうのあれなんですが、HMGフェリングが出荷停止になってから半年になります。今後の見通しは不明であり、少なくとも現時点では供給再開の目途は立っていません。

 

HMGフェリングは、hCG活性を持つHMG製剤であり、この薬が合っている方がおられますので、当院ではかなり早期からlow dose hCG療法を行ってきました。

 

HMGは、本来FSH成分とLH成分を併せ持つものですが、生体内のLHの半減期はたった20分であり、1時間もあれば、すっかりなくなってしまいます。いわゆる排卵前に起こるLHサージの時は、脳からリズミカルにパルス状にLHが分泌されることでサージを作り出しています。それでLHの急激な上昇と急激な下降が起こるわけですね(パルスの頻度と1回の分泌量の両方でサージの曲線をコントロールしている)。

 

一方、hCGの半減期は24~30日程度であり、2日たってもまだ1/4くらいは残っていることになります。一応、「HMGだろうがuFSHだろうが、150単位なら同じ強さ」ということにはなってますが、これって動物実験の話であって、ヒトで同じ強さであることを確約しているわけではありません。もちろん個人個人で、この薬が効きやすい、効きにくいというのもありますが、やはり特に卵巣機能が低下しかかっているような場合は、LH活性が強い方がしっかり卵胞が育つこともあります。(一方、卵巣機能が正常前後の場合は、FSHのみで十分です)。

 

というわけで当院ではHMG製剤の代わりとして、ゴナールエフなどのFSH製剤にhCGを少量併用しています。特に決まったプロトコールはありませんので、1回に打つ量や頻度などは各医師の経験などから多少の試行錯誤はありましたが、現在はある程度形になってきたのではないかと思います。もちろん合う合わないはありますので、low dose hCG抜きがいい方もおられれば、low dose hCGを行うことで見違えるように結果がよくなった方もおられます(ただしこの治療は自費でしか実施できません)。

 

生殖医療が保険適応になり、標準化が進んでいるのが時代の流れであり、卵巣機能がある程度保たれている多くの方にとっては標準化の恩恵は非常に大きいと思います。ただ、この治療に限りませんが、創意工夫で良い結果を出していく姿勢も大切にしていきたいと思っています。

 

 

low does hCG療法については過去記事もご覧ください。