前回は、採血部のお仕事前編として、採血までの流れをご紹介しました。

 

 

その後みなさまの血液はどのように処理されていくのでしょうか。

当院で行っているホルモン測定と血球算定(CBC測定: 貧血や炎症の検査)の血液をピックアップしてみましょう。



血液は調べたい項目によって処理方法が異なります。ホルモンを測定するために使用している採血管はこちらになります。


術前にとらせていただいている採血セットに含まれる血球算定を行うための採血管はこちらになります。


この2本、見た目からすでに違いがありますので患者さまの中にも不思議に思われた方がいらっしゃるかもしれません。中をよーく見てみると…前者は底に白っぽい塊があり、菅壁がうっすらくもっています。後者は白いつぶつぶが見えますね。この中身の違いは検査をする上でとても大切な役割をはたしています。

まずは血球算定用スピッツから説明いたします。名前の通り血球を算定する検査は血液中の赤血球や白血球の数を数えるものです。私たちが一つ一つ数えているわけではないのですが、数えるには血液はさらさらで均等であってほしいのです。私たちの代わりにこちらの測定機が血球を数えてくれています。

 


固まってしまった血液をこちらの装置にかけることはできません。血液が固まらないようにするのが採血管の中にある白いつぶつぶの粉なのです。これを「抗凝固剤」といいます。検査を補助する成分が入っているものもあり、私たちは検査の種類によって採血管を使い分けているのです。

時折、診察後に2回目の採血が必要になることもありますが、これは1回目の採血時に使用した採血管の血液では新しく追加する項目の検査が行えないからなのです。他にも1回目の採血時の検体量では新しく追加する項目がまかなえない場合に2回目の採血を行わせていただきます。

血球算定の話に戻ります。こちらの抗凝固剤が入った採血管の血液はずっと液状の状態を保つことができます。測定機にかける前によく転倒混和し、ほとんどそのままの血液を使用し検査しています。
血液の処理もほとんどなく、測定機も5分以内に結果を出します。OHSS疑惑で来院された際、炎症反応を見るために血球算定の採血をさせていただいていますが、結果が出るまで長く待ち時間を必要としません。(混み具合によりご案内が遅れることもございます。)


一方、ホルモン測定のためにとった血液は血球算定よりも結果が出るまでにいくつかのステップを踏みます。
まず、血液が固まるのを待ちます。使用している採血管に抗凝固剤は入っていません。この中で血液が固まるとぷるぷるのゼリー状になります。

 

しっかり固まったところで遠心分離装置にかけます。すると採血管の中は分離されます。

 

血液が固まるのを待たずに遠心機にかけると分離した後、黄色の部分(血清)がぷるぷるになってしまいます。これをフィブリンといい、検査する際に除去しなければなりません。除去がうまくできていないと正しく測定が行えなくなり、測定がやり直しになるとさらに時間がかかってしまいます。

血清にぷるぷるや泡などがなく、また血清量がすくなすぎないかを確認しホルモン測定機にかけていきます。
この装置の中でバーコードをもとに依頼を確認しE2、P、FSH、LH、HCGのうち必要なものを選び出し、自動で必要な血清量を分注してくれます。血清量が少なすぎると機械がエラーを起こし、測定がやり直しになるためさらに時間がかかってしまいます。また、万一、血清が完全に足りないと再採血が必要になってしまいますので、項目数に応じて必要な量の採血を行う必要があります。

この装置はホルモン値が算出されるまで少しだけ時間がかかります。また、値がでてからもスタッフが電子カルテに値が反映されるように作業がありますのでホルモン測定の検査ではみなさまに少々長く待ち時間をいただいております。

ここまでが採血した血液検体の採血後の流れです。

採血をする際、腕を動かさないようにお願いしたり、血液量をとるために時間がかかってしまうことがある理由は、採血を滞りなく行い、お預かりした血液で検査をスムーズに且つ正しく行うためなのです。

いつもご協力いただきありがとうございます。

これからもみなさまの治療に寄り添ってサポートをさせていただきます。