今日は、「排卵」をどう診断するのか、お話してみたいと思います。

 

排卵時に起こることは、

①排卵直前におりものが増える(排卵の兆候というよりE2上昇の兆候なので、E2が上昇している状況なら排卵前でもおりものは増える)

②排卵直前まであった卵胞が排卵後にはなくなる

③排卵後には排卵側の卵巣付近に腹水がたまる(ことがある)

④排卵前と比べて排卵して3~4日後から内膜の見え方が変化する

⑤卵胞期に上昇し続けたE2値は排卵直前から低下をはじめ、排卵ごろに最低値を示し、再上昇する

⑥卵胞が1個の場合、P4(黄体ホルモン)値は排卵1日前くらいから微増し、排卵日には1~2を超え、1日1~3程度上昇する。

 ただし、卵胞が多い場合や排卵前のE2値が高い場合、P4上昇開始時期や上昇スピードは上昇する。

 ホルモン値はそのホルモンの2~3日の流れや他のホルモンとの関連も含めて総合的に見るものであってP4値だけの絶対値をピンポイントで見ても大した役には立たないので注意

⑦基礎体温が排卵日ごろに低下して上昇することが多いが、「最低体温日が排卵日である」というのは迷信に近くて、実際には、排卵前日が最低体温日の場合、排卵日が最低体温日の場合、排卵翌日でも体温が低い場合などがあり、人によるので、「だいたい2~3日の間で排卵」ということがわかる程度の役には立つが、排卵日を厳密に推測する役にはほぼ立たない

 

こんなことが起こります。

 

これらは1つだけで判断しないでおかれている状況を加味して複数の根拠で判断します。黄体化未破裂卵胞だったら①は起こる、②③は起こらない(卵胞がまだ残ってるように見える)、応対機能不全になるので④⑤⑥⑦はちょっと怪しい、みたいになるし、③の腹水はあったりなかったり、④の内膜の見え方なんてそもそも個人差も大きいし、エコーの設定によっても全然違う。つまり、①~⑦までの情報を総動員した結果、総合的に考えて排卵したっぽいかどうかを判断するわけです。

 

たとえば⑥のP4だけ見ても、「もともとP4が高い人」もいるし、「E2が高いと排卵していなくてもつられてP4が上昇する(E2が1000を超えるとP4は1を超える)」なんて場合もある、逆に、①などは、プレマリンやエストラーナを内服していたり、採卵目的で排卵抑制しながら排卵誘発剤を使用していてもおりものは増える、などがありますので、使用している薬剤にも注意が必要です。

 

もちろん、卵胞チェックにちゃんと通っている、月経周期が順調、基礎体温もちゃんと測定できている方であれば、エコーしただけでも排卵は正しく判断できますが、判断に迷う場合や、急に来院された場合は、上記のうちできるだけ多くの情報を得て、総合的に判断することになるのです。

 

以前、「点と線」というシリーズを生殖医療開設シリーズで特集しましたが、排卵にも同じようなことが言えるのです。排卵といっても奥が深い!ということで、今日は排卵についての解説でした。

 

 

点と線シリーズはちょっと難しいですが、医師がどう考えて採卵チャートを読んでいるのかわかって面白いと思いますので、ぜひお読みになってみてください。おもしろかったら「いいね」をお願いしますね(昔の記事にもぜひ)。それではまた。

 

これを読んでいる産婦人科の先生方は、後編1「FSH」はぜひ読んでみてください。いろいろな流儀はあるでしょうから実際のプランニングには異論反論あるでしょうが、書いてあることは理解できると素晴らしいです。