「点と線」といえば、1958年の松本清張の推理小説、その後の推理小説ブームの火付け役となった作品である。トラベルミステリーの流れは、その後西村京太郎に引き継がれた。鉄道マニアである筆者は時刻表を眺めるのが好きで小中学生のころ西村京太郎と赤川次郎の推理小説を読み漁ったのを覚えている。世界初の推理小説は、エドガー・アラン・ポーの著作だと言われいる。日本の代表的な推理作家、江戸川乱歩が、ポーの名前をもじったものであることは知る人ぞ知る、かも知れない。

 

 

さて、いきなり脱線したが、今日は推理小説の話ではなく、ホルモンのお話しです。ホルモンの点と線。生殖医療とホルモンは切っても切れない関係です。といっても、2000年代前半はホルモン値を当日至急で結果を出せる施設はかなり限られており、体外受精と言えどもエコー所見だけで採卵周期の治療を行ってました。採卵決定日に一応LHとE2だけ採血を提出し、外注なので結果が出るのに数日かかり、運が良ければ採卵日に結果が出ているが運が悪いと採卵日以降に結果が出る、あくまでも後方視的に採卵を振り返ることができるように、という形のものでした。

 

日本で最初に体外受精に成功したのは東北大学、その後もしばらくは体外受精は大学病院が中心になっていました。当時も肝機能や腎機能、貧血の検査等は、総合病院ならどこでも1時間くらいで結果が出せたわけで、理論的には至急採血で結果を出すことはできたわけですが、当時1日数人いるかどうかの患者のために試薬を購入し、期限切れにならないように上手に使うのはコストの点で折り合いがつかなかったということなのでしょう。典型的な反応の場合は、ホルモン採血なしでも治療として成立したのですが、何しろE2値が分からない上、アンタゴニスト製剤がなかった当時はロング法とショート法が中心、ホルモン値を測定していれば防げたであろうOHSSは少なからずあり、重症OHSSの管理も大学病院婦人科病棟の大切な役割でもありました。

 

その後、生殖医療の実施数が増加するとともに大学病院から診療所(クリニック)にシフトし、治療精度の向上という点はもちろんなのですが、検査数的にコストの折り合いがつくようになったのとホルモン値が当日出ますよというのは大きな宣伝になりますので、徐々に当日ホルモン値を当日出せる施設が増えてきます。今でも、ホルモン採血を行わない施設もなくはないでしょうが、ほとんどの施設は当日のホルモン値を見ながら治療を組み立てています。

 

 

しかし、一言でホルモン値といっても、ただ数字を見ただけでは何もわかりません。例えば、黄体ホルモン(P4)が1.5だったとしましょう。これが示す状態はたくさんあります。①排卵直後 ②月経直前 ③排卵誘発剤を使ってE2が上昇したことによって上昇する早期黄体化 ④P4の基礎値が高いだけ(いつもP4が高めに出る方がおられる) ⑤薬剤性 ⑥黄体機能不全 ちょっと考えだけでもこれだけあります。つまり、数字がいくつであるかどいうことだけではなく、その前後のホルモン値の推移、超音波検査との関連、前後の周期のホルモン動向を踏まえて、「解釈」しなければならないのです。

 

では、ホルモン値は、どういった方法で解釈していくのがよいのでしょうか。FSH、LH、E2、P4に分けて徹底解説!後編に続く!

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