論文、教科書、商業誌

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医学雑誌には2種類あって、いわゆる論文が載っている「医学雑誌」のほかに、いわゆる、週刊朝日とか女性自身みたいな、いわゆる商業誌があります。医学系の商業誌は、一般的な商業誌よりはちゃんとしていますが、出版社が、読者が興味を持ちそうな特集を組んで、書いてくれそうな人に依頼するみたいなスタイルで、そこは一版商業誌と似ていると言えば似ています。

 

医学雑誌と商業誌の最大の違いは、査読があるかどうかで、医学雑誌というのは、著者が応募したものを編集者が審査し、そして大半の場合は、そこそこの手直しをさせられ、これならOKとなった一部の論文のみ載せてもらうことができます。世知辛い話ですが、雑誌にもランクがあり、一流の雑誌に載るのは大変でかんたんに断られてしまいます。ランクが下がるほど載りやすくなりますが、どうせ載るならいいところに載せたいですので、いくつかの雑誌に順番に投稿して、アクセプトされたところに載ることができる、という形です。

 

商業誌は、編集者が著者に依頼することが多く、依頼された時点で掲載は(ほぼ)決定しています。医学雑誌が最新のデータを発表するのであれば、商業誌は、そこまで最新ではないもの、「私はこうしている・こう考える」的なもの、あるいは一般的知見について解説するものみたいなものになります。例えが適切ではないかもしれませんが、当院のブログで言えば、松林ブログが医学雑誌に近く、このブログ(公式ブログ)は商業誌に近い形です(一応そういう感じで棲み分けしています)。

 

産婦人科の3大商業誌は、「産科と婦人科(診断と治療社)」「臨床婦人科産科(医学書院)」「産婦人科の実際(金原出版)」があります。そんなに分厚い雑誌ではないのですが、一丁前に3000円くらいするのと、著作権の関係でブログでは内容は紹介できませんが、産科と婦人科 12月号に当院から一篇掲載されましたので、興味がある方はぜひご一読ください(どうやらこれが言いたかったらしい)。

 

 

書いておいてなんなのですが、もちろん内容はちゃんとしたものを書いたつもりではあるのですが、いわゆる医学雑誌と違い、商業誌は、誤字脱字や明らかな大嘘以外は、実質無審査で書いたままそのまま掲載されます。最新論文などではないのでガチガチの審査等は必要ないため、その程度の内容なら審査なしで大丈夫な人が書いている、というイメージです。

 

学会発表は変な発表も結構ありますが、商業誌は、変なことを書きそうな人には依頼は来ないはずで、そういう意味で一応内容の正確性は担保されている「はず」であり、大体はそれでよいのですが、例えば執筆者が独自のワールドで理論を展開したとしても、自分の経験だけでコンセンサスに乏しいことを書いたとしても、よほどおかしなことを書かなければ素通りして掲載されてしまいます。所詮商業誌ですので、そこが面白いところだったりもします。

 

問題は、いわゆる「教科書」で、最近は1冊の本を多人数で分業して書くことが多いですが、1人の著者が1冊全て書くこともあります。いずれにせよ、審査がないので、こちらも書こうと思えば何でも書けてしまいます。一応その道の専門家っぽい人が書いているはずなのですが、著者独自の理論を書こうと思えば書けてしまいます。また、教科書は同じものを長期間売っていたりしますので、ほぼ内容が古いというのも難点です。

 

医学雑誌と、学会発表・商業誌・教科書は、どちらがいい悪いではないのですが、それぞれの特徴を生かしながら上手に活用する必要があります。教科書の正確性に疑問があるからでしょうか、最近は学会がガイドラインや解説書を出版するケースが増えてきています。こうしたものは信ぴょう性がアップします。

 

研修医時代、商業誌を読んでいると、「そんなもの読んでないで英語で論文読め」なんて叱られたものですが、商業誌は結構面白いので、昔はよく読んだものです。

 

というわけで、今日は、医学雑誌、商業誌、教科書、ガイドライン等について色々書いてみました。