今日は子宮内膜についてです。以前にも子宮内膜について書いておりますので、もしまだの方はぜひご一読ください。

 

子宮内膜(生殖医療解説シリーズ 番外編12)

 

さて、今日は子宮内膜が薄い時についてです。一言で子宮内膜が薄いといっても色々な場合があります。では、どういう時にどういう対処をすればよいのでしょうか。

 

①子宮内膜を薄くする状況がないか確認

新鮮胚移植を予定しているのに長期多量のクロミッドを使っているような場合は見直します。

 

②E2製剤の増量

ホルモン補充周期で移植している場合、エストロゲンを増量するのがセオリーです。

ジュリナ1T<プレマリン1T<プロギノーバ1T<エストラーナ貼付剤1枚<<<プロギノンデポー(ペラニンデポー)筋注

の順で強くなりますが、投与経路との相性もありますので、内服で厚くならない場合は、内服を増量するのではなく、貼付剤や筋注を追加する、等の方法がスマートです。

プレマリンは1錠内服でE2が20~30pg/mlくらいになります。エストラーナで100くらい(エストラーナは個人差や測定のタイミングによる数値のばらつきが大きい)、ペラニンは10mg打って翌日のE2は1500~3000pg/mlになります。筋注のE2上昇効果は段違いです。

 

③ホルモン補充周期と自然周期

ホルモン補充周期は、外部からホルモン剤を追加して排卵を抑え、薬だけでコントロールする方法、自然排卵周期は自力の排卵を利用する方法です。自然排卵周期でもホルモン剤を使って構いません。ところが、ホルモン補充周期だと内膜が厚くなるが自然周期だと全く暑くならない方、逆に、自然周期だと内膜が厚くなるが、ホルモン補充周期だと全く厚くならない方がおられます。過去の一般不妊治療や採卵周期を確認して厚い時があれば自然周期が向いている可能性もあります。

自然周期の場合、月経中からセキソビット1日6錠×5日間内服する、HMG製剤により内因性E2を増やす等の方法がお勧めです。その上で、自然周期でも多すぎなければプレマリン等の併用は可能です。排卵しないように、あるいはよりE2が増えるまで待つ意味でアンタゴニスト製剤を利用することもできます。

 

④サプリメンント・補助医療

アルギニン、ビタミンE+ビタミンC、バイアグラ腟内使用・PRP子宮内注入やG-CSF子宮内注入等が功を要することがあり、当院でも積極的に行っています。特に、アルギニンとPRPはよく効く印象です。

 

⑤いい周期を待つ

不思議なことですが、全く同じことをしていても、内膜が厚くなったりそうでなかったりすることはあり得ます。体調を気にされる方も多いのですが、よほどの絶好調、あるいはよほどの絶不調であれば別ですが、そうでもない限り、体調と治療成績は思ったほど関連しません。

子宮内膜は、いつも厚くて問題ない方でも、人によっては年に1~2周期調子が悪い周期が存在することもあります。逆に、いつも薄くて困っている方でも、待っていると数か月に1回程度、厚い(良い)周期が巡ってくることもあります。こうした場合によく、「今月はどうして調子が悪い(良い)のでしょうか」と聞かれるのですが、大体よく分かりません。しかし、不定期にいつもと調子が異なることは実際に存在します。内膜が厚くならずキャンセルが続いても、良い周期を逃さずに治療すればうまくいくことも少なくありませんので、難しいことではありますが、悲観せずに虎視眈々と厚くなる日を待つという姿勢も大切です。

 

ということで、今日は子宮内膜が薄い時にどうしたよいか、解説してみました。

次回もお楽しみに。