ジェネリック医薬品、飲んだことありますか。ジェネリックとは、後発医薬品のことで、いわゆる新薬(先発薬)の特許が切れる10年後から、特許切れの有効成分を使って発売される安価な薬のことです。以前は、10年たつと色々な薬がゾロゾロ出てくるので「ゾロ」「ゾロ薬」などと呼ばれたりもした。

 

ジェネリックは先発薬と比べて同じ有効成分で効能・効果、用法・用量が原則として同一とされている。しかし、主成分が同じというだけで、副成分や剤型、製造方法が完全に同じとは限らないので外見も違うし、人によっては効き目が違うこともあり得なくはない(料理で、違う人が全く同じ材料で料理を作っても、同じ味にはならないのと同じ)が、建前上は、効き目は同じですということになっている

 

値段はどのくらい違うのか。たとえば、誰でも知ってる解熱鎮痛剤ロキソニン60mg錠は、先発薬は1錠13.4円、後発薬や、メーカーによって7.9~9.8円、花粉症の薬の代表アレグラ60mgは、先発薬が52.5円、後発薬は18.1~27.9円と結構違う。高額な開発費をかけて作っても10年で半値以下で他社に特許切れの成分を使われてしまっては先発薬メーカーとしてはやってられないだろうが、医療経済上は、薬剤費の7割は保険から出ているわけだからジェネリックを推進するのは理解できる。

 

ジェネリックが安売りと違うのは保険診療の場合、あらかじめ認可された薬価以外で保険で処方できない点である。ジェネリック医薬品は、あらかじめ安い価格で認可されてはいるのだが、さらにそれ以上ディスカウントすることはできず、安いとはいえ、あくまでも定価販売しかできない点がドラッグストア等とは根本的に異なる。ただし、ピルなどの自費処方は自由に値段設定できる。

 

 

さて、今日は黄体ホルモンのお話。上記のジェネリックの部分では主成分が同じなら効き目も同じ、と一応まとめてはみたが、本当にそうだろうか。後発メーカーのほうが研究が進んでより良い薬となっている可能性もあれば、安かろう悪かろうで効き目が悪いこともあるかも知れないし、自分の体質との相性もあるだろうから、良いか悪いかはさておき、全く同じ効き目とは限らないよね、と考えるのが自然である。

 

黄体ホルモンの腟剤には、ウトロゲスタン200mg、ルテウム400mg、ルティナス100mg、ワンクリノン90mgがある。成分は全て同じだが、1日量に換算すると、ウトロゲスタンは1日3個で600mg、ルテウムは1日2個で800mg、ルティナスは1日2~3個で200~300mg、ワンクリノンは1日1個で90mgが標準一日量として定められている。同じ成分なのに、800mgと90mgじゃ9倍も量が違うのは不思議だなと思った方も多いに違いないが、学会報告レベルでは、用法用量を守って比較したところでは、妊娠率や妊娠継続率はどれを使っても変わらない、との報告が多い。

 

それぞれの薬の正式名称は、ウトロゲスタン腟用カプセル200mg、ルテウム腟用坐剤400mg、ルティナス腟錠100mg、ワンクリノン腟用ゲル90mgであり、それぞれカプセル、坐剤、錠剤、ゲルと形状が異なっている。

 

ウトロゲスタンはソフトカプセル錠であり、溶けて出てきてしまう部分も結構ある。それでもちゃんと効くように設計されているとは言え、ある程度無駄が生じる前提になっているものと思われる。

 

ルテウムは名前の通り、お尻に入れる坐薬そっくりの形である。カプセルではなく、いわゆる坐薬の形状であり、ウトロゲスタンほどではないが、白いおりものが出てくるのが特徴である。

 

ルティナスはその名の通り錠剤の形であり、カプセルや坐薬とは違ってスムーズに入らない可能性があることを考慮して、アプリケーターがついている。手を膣の中に入れることに抵抗がある方には好評だが、ゴミが多くなるほかプラスティックを腟内に入れることに逆に抵抗がある方もおられるだろう。形状はまさに錠剤といった形であり、おりものは前の2剤に比べて少ないので、残存率が高く、300mgでも効くのではないかと思われる。

 

ワンクリノンは、医師によっては毛嫌いする医師もおられるようだが、1日1回でよいのでとてもラクな上、おりものがダラダラたれてくることがほとんどない点が最大の利点であり、それが90mgでもちゃんと効果を発揮する所以と思われる。何日かすると、数日分まとめてキャラメルカスみたいなものがまとめて出てくることには賛否あるが、それでも回数やおりものの観点からワンクリノンをお好みの方も少なからずおられる。

 

しかし、これらを公平に評価しようにも、そもそもこれらは末梢血の血中濃度と子宮局所濃度が全く違うため、末梢血の血中濃度を測定しても効果判定にならない上、子宮局所の濃度は測定が困難であり、かつ個人差が非常に大きいのが膣剤の特徴であり、きちんとした評価が難しい。様々な少数意見はあるが、おおむね、どの薬剤を使用しても差はないため、各医療機関で採用している薬剤をそのままお使いになることに何ら心配はないと思われるが、筋注もしくは内服(ルトラールやデュファストン)を内服すればなお安心であり、当院では、投与経路により苦手な(効きにくい)ものがあることを心配して、膣錠、筋注、内服等、複数の投与経路でホルモン剤を投与している。以前の記事(ルトラールとデュファストン)でも書いたが、膣錠1日800mgとルトラール1日6錠単独は同等の効果を発揮するため、内服も意外としっかり効くようである。

 

ということで、今日は、ジェネリック医薬品の話からの黄体ホルモンのお話でした。次回もお楽しみに!