みなさん、こんばんは。

 

今日は、採卵計画の全容の続編です。(過去ログは、採卵計画の全容月経前の調整はE2製剤かピルかカウフマンか、それとも何もなしか)の続編です。ちょっと飛んで今日は排卵抑制についてお話します。

 

以前にも書いた通り、卵巣刺激には、

①採卵周期開始前

②採卵周期開始の時期(方法)

③卵巣刺激

④排卵抑制

⑤トリガー

の5つの柱があります。

 

低刺激とか刺激周期(高刺激)とか自然周期とかいうのは③の区別です。

ランダムスタート法や遅延スタート法は②の区別です。

これに対して、ロング法、ショート法、アンタゴニスト法、黄体フィードバック法(PPOS)などは、③のうち刺激周期を行う中で排卵抑制をどう行うかの分類、つまり④の分類となります。

少し難しいですが、一言で〇〇法といっても、着目点が色々違うので、本当は、(遅延orランダムor通常スタート)+(刺激周期or低刺激)+(ロングorショートorアンタゴニスト法)みたいに3つ4つ並べて書くのが正確なのでしょうが、面倒なこともあり、「今回は遅延法でやります」とか、「今回はアンタゴで行きます」などとだいぶ省略した表現になります。

 

 

さて本題の排卵抑制についてですが、卵巣刺激法とその薬剤 前編でも詳しく解説しているので、まずはこちらもお読みください。

 

自然周期の場合は、直前でボルタレン(ジクロフェナクNa)やインドメタシン等を使うのみであることが多く、低刺激の場合はクロミッドによる排卵抑制と、ボルタレンやインドメタシン等を併用することが多いことと思います。

 

これに対して刺激周期の場合は、卵巣刺激と併用してGn-RHアゴニスト点鼻薬[ブセレリン等]を毎日するロング法・ショート法(ロングは月経1週間前から点鼻薬、ショートは卵巣刺激開始とともに点鼻薬を毎日使って排卵抑制)が歴史的にも古い第1の柱となります。

 

第2の柱はアンタゴニスト法で、卵胞がある程度育ったところで排卵を抑える注射(セトロタイド、あるいはガニレスト)あるいは、内服(レルミナ)を使う方法です。

 

もしくは黄体フィードバック法(PPOS)で、黄体ホルモンを内服して排卵を抑えていく方法です。

 

 

排卵は抑えなければならないのですが、排卵抑制のやり方をしくじると、卵胞発育が停止したり、卵胞が縮んだり、あるいは卵の成熟が妨げられる恐れがあります。卵子の成熟については、こちら(卵子の成熟1)をぜひ復習していただきたいのですが、卵子の核成熟はトリガーでコントロールすることができますが、排卵抑制のやり方によっては、おそらく卵子の細胞質成熟がうまくいかなくなるケースが出てくるのではないかと思われます。

 

例えば、黄体フィードバック法(PPOS)は、ある程度卵巣機能が良い方(おおむねAMH≧1程度)ではうまくいくことが多いですが、AMHがそれ未満だと、それでもうまくいくこともありますが、うまくいかない頻度が上がってきます。

 

アンタゴニスト法はAMHという点では比較的オールマイティなのですが、セトロタイド等を使いすぎるとよくないと一般的に考えられており、12mmあたりからLHが高くなり始めて結果的にセトロタイドの回数が多くなる可能性がある場合や、卵胞発育のスピードが遅い場合は、やりにくいことがあります。アンタゴニスト法は、一般的には注射(セトロタイド、ガニレスト)ですが、レルミナという内服薬を使用することもあります。内服で排卵抑制ができるというのはコンプライアンス面でも価格面でもよいのですが、もともと開発の経緯が排卵抑制ではなく別の目的の薬の適応外使用であり、また注射に比べて強く効きすぎることがあり、思ったような結果が出ないこともあるため、当院では第一選択とはせずセトロタイド等注射を優先し、注射のアレルギー(セトロタイドやガニレストは比較的局所の発赤等のアレルギーが出やすい)があったり、セトロやガニでうまくいかなかった場合の第二選択として考えています(もちろん良い結果となることもあります)。アンタゴニスト法は、とても良い方法なのですが、黄体フィードバック法では何も考えず毎日黄体ホルモンを飲んでおけばよいので簡便ですが、「いつからアンタゴを始めるのか」等の判断が必要となり、シンプルとはいかないことがあるところが残念な部分です。

 

ロング・ショートは、黄体フィードバックと同様に、点鼻をずっとしておけば基本的には排卵抑制されてくれますので、アンタゴのように「判断」が入る必要がなく、その点ではやりやすいです。ロング法は、ある程度AMHがある方向けの方法で、ロング向きでない場合は、ショートと考慮します。ただし、ロング・ショートはダブルトリガーができないので(すでに点鼻してしまっているので)、卵の成熟率対策のカードが1枚少ないので、その点が難点です。

 

ロング・ショート、黄体フィードバック、アンタゴがLHサージを抑えるのに対して、自然周期や低刺激で使うボルタレン(ジクロフェナクNa)やインドメタシン等は卵胞破裂そのものを抑えますので、LHサージが抑えきれていない場合は、ボルタレン(ジクロフェナクNa)やインドメタシン等を併用します。ボルタレン等の薬剤が卵子に良くないとの意見を繰り返し表明する医師がおられますが、統計的根拠は皆無です(間違っています)のでご注意ください。

 

いずれの排卵抑制も、それぞれ特徴がありますので、利点と欠点をよく考えて排卵抑制法を選択、あるいは途中のコントロールを行っていくことが大切です。

 

あるいは抑えきれそうにない場合は、卵胞の大きさが多少小さくてもそのまま採卵を行う勇気も大切です。もちろん、翌周期に期待するだけの時間的余裕がある場合はそれでもよいのですが、1か月1か月が大切、あるいは卵胞発育そのものが貴重であるような場合、できるだけ逃さず毎月採卵していいきたいわけです。そういった場合、抑えきれそうにないLHサージが出てしまっていれば、それでもサージを抑えて卵胞発育を待つか、そのまま採卵してしまった方がよいか、サージが出ているので卵胞が小さくても成熟卵が取れることは、思ったよりも多くあります。

 

 

リプロダクションクリニックでは、自然周期や低刺激周期も含め、多くの引き出しの中から、皆様の体質や治療歴、ご希望に合わせた最適な治療法を提供することが可能です。結果が伴わずにお困りの方は、ぜひ当院での採卵をご検討ください。

 

 

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