みなさん、こんばんは。今日は、前回(「点と線」(ホルモン値の読み方)前編「点と線」(ホルモン値の読み方) 後編1「FSH」)に引き続き、ホルモンの読み方、後編2です。

 

今日はE2の読み方についてお話します。E2は、FSHほど深くはありませんが、ただ目の前の数字を見るだけでなく、薬剤との関連や、その推移を考慮して、「読む」必要があります。

 

再掲しますが、ホルモンを読み取るために、超音波検査の結果を踏まえたアセスメントも含めた目の前の数値(点:知識から判断)と、ホルモン値の推移(線:考える力が必要)を合わせて有機的に判断することが必要です。まさに、「点と線」です。目の前の数字(点)だけ見ていては正しい解釈はできません。ポイントは5つ。

 

①その数値が外因性なのか内因性なのか

 (自分から出ているホルモンなのか、それとも薬剤がホルモン値に反映しているだけなのか)

②そのホルモン値に関わる薬剤の影響

 (薬剤そのものがホルモン値として測定される場合、薬剤が体に作用してホルモン値が左右される場合)

③その数値は、検査の時期(月経中、採卵周期中、採卵日等)をふまえてどう判断できるのか

④その数値は、超音波検査の結果をふまえてどう判断できるのか

⑤その数値は、直前あるいは、そのさらに前のホルモン値からの推移をふまえてどう判断できるのか

 

E2製剤は、基本的にすべて、ホルモン値に反映します。プレマリン、ジュリナ、プロギノーバ、エストラーナテープ、ル・エストロジェル、ペラニンデポ(プロギノンデポー)等、厳密には成分はそれぞれ違いますが、すべてホルモン値に反映します。

 

黄体ホルモンが、薬剤によって血中P4値として反映したりしなかったりする(「黄体ホルモンが上がりません」)のとは対照的です。黄体ホルモンは、デュファストンやルトラール等の内服薬は血中P4濃度には全く反映しませんので、例えばデュファストンやルトラール内服中にP4値が低かったとしても、P4値として反映しないだけで広い意味での黄体ホルモンとしてはフォローできているはず、と考えなければならないのですが、プレマリン内服中にE2値が低かった場合は、プレマリンが効いていないと考える必要があり、ちゃんと区別して考えることが大切です。

 

 

例えば、プレマリンは1錠あたりE2値として15~30pg/mL程度、1日6錠内服して100~200pg/mL前後です。プレマリンは多少の個人差はあるものの、飲んだものがそのまま血中濃度に素直に反映されますので、例えば、プレマリンを1日3錠内服中に採血結果でE2が300pg/mL程度あれば、外因性E2(薬の影響によるE2)は50~100pg/mL前後だから残りは内因性E2(自力のE2=卵胞発育の反映としての真のE2値)、つまり卵胞発育あり、と判断します。逆に、プレマリンを1日6錠内服中に採血結果でE2が150pg/mLだったとしたら、自力のホルモンはほとんど出ていない可能性が高いと判断します。

 

エストラーナは1枚貼付あたり70~150pg/mL程度といった具合ですが、エストラーナは貼った日と貼った翌日ではホルモン値は異なりますので、例えば常に2枚貼っている場合、2枚貼ったものをまとめて2日に1回取り換える場合は、貼り換える方の日なのか貼り換えない方の日なのかで値は異なり、1枚ずつ交互に貼り換える場合は前者に比べて血中濃度は平坦となります。また皮膚のコンディションによって個人差、あるいは同じ人でも変動が生じやすい薬剤なので、エストラーナ自体はよい薬ですが、どこまでが外因性でどこまでが内因性なのかを見分けにくいため、ホルモン補充周期の移植など卵胞が育たない前提の時はよいのですが、FSH調節周期で卵胞発育を期待するためにエストラーナを使う場合、ホルモンの解釈に曖昧さが残ります。ル・エストロジェルも同様です。

 

ペラニンデポー(プロギノンデポー)は、10mg筋注すると翌日のE2値は1500~3000pg/mL程度となり徐々に低下して12日くらいで体から抜けてきます。5mg筋注だと、翌日の値は半分程度で10日程度で体から抜けていきますが、どのくらい体に残るかは、個人差と周期差があります。プロギノンデポー10mgを打って1週間程度で採血をした場合、どこまでが外因性E2でどこまでが内因性E2(自力のE2=卵胞発育の反映としての真のE2値)なのかは、筋注をして何日後なのかとともに、過去の検査結果やエコー所見等様々な情報から推定する必要があり、よく頭を使って判断することが求められます。

 

この他に採血結果に影響する薬剤としてはレトロゾール(フェマーラ)です。レトロゾールはE2の産生を阻害しますので、レトロゾール内服周期は内因性E2の値が1/2~1/4程度となりますが、外因性E2には影響しませんので、例えばレトロゾールとプレマリンを併用した場合、プレマリンによる外因性E2は、理論的にはレトロゾールの影響は受けません。レトロゾールは、半減期が短いというのが謳い文句ですが、レロトゾールを少量月経中に飲んだだけで、排卵期のE2はたいてい低めに出ますので、ホルモン値の解釈には注意する必要があります。

 

また、もしかしたら世界初の知見かもしれないと思っているのですが、どうやらセキソビットもE2に影響するようです。セキソビットは1錠あたりE2値として10pg/mL程度検出されます。多のう胞性卵巣症候群の方がセキソビットを内服してもほとんど効果がないのも頷けます(多のう胞性卵巣症候群ではレトロゾールが効果的なことが多く、E2を低下させるレトロゾールとは逆にE2を微増させるセキソビットは理論的にも効きにくいことになります)。

 

このように、ホルモン値(特にFSH、E2)は、使用薬剤やその特性、血中濃度曲線、体質や周期差なども考慮に入れながら、「点と線」を念頭に解釈する必要があります。私たちは、検査結果を見て瞬時に判断して方針を立てているように見えるかもしれませんが、こんなことを考えながら判断をしているのです。

 

それでは今日はこの辺で。

次回もお楽しみに!

 

 

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