スターバックスの秋 | 宗慶二オフィシャルブログ~とある現代文講師の日常

宗慶二オフィシャルブログ~とある現代文講師の日常

大学入試予備校
現代文講師

河合塾→東進→登録者35万人YouTube予備校『ただよび』校長→online塾bridge+校長(←いまここ)

鬱屈した日常を、少しだけ斜に視ることで、風を吹かせられたら…
と思います。

受験勉強の箸休めに、どうぞ。


僕は元来、豆大好き人間。

トーストに塗るなら断然ピーナッツバター。

寝酒のツマミはマカデミアナッツ(またはバナナ)。

授業の合間に口にするならアーモンドチョコ一択。


の拙文末尾の句点「。」すら、豆に見えてくるほどの豆好き。だから節分には鬼が僕を見て回れ右してもまったくおかしくないのです。



さてそんな僕の目に本日飛び込んできたのが「アーモンドクロッカン」


今季スタバの秋の新作スイーツ。

表面をキャラメリゼしたクラッシュアーモンドが覆う長さ10センチ強の直方体クロワッサン。



色がまあなんと秋なのでしょう🍂





ちょい前から気になっていましたが、ついに賞味する瞬間がやって来ました。


噛み切る、ひとくち、この食感・・・


キャラメリゼの絡み付くような甘い香りの向こうに、上品なアーモンドの風味がほのかに、と思うやクロワッサンのバターの甘味も溶け出すように一緒になって口中に優しく広がります。苦味のやや強いスターバックスTOKYO ロースト豆から抽出した熱いコーヒーに、まー合う合う。交互に口にすると、至福の時間が僕の周囲にゆっくり流れます。






ふー







秋深き となりは何を する人ぞ   


いわく知れた俳聖松尾芭蕉の名句です。

晩年身体の自由が効かなくなった芭蕉が最後に身を起こして詠んだ句ですが、独り死を意識した芭蕉の諦念とも執着ともつかぬ、切なくも侘しい情感が、深まりゆく秋とともに見事に17文字に凝縮したものと読みます。初句をあえて「深し」とせず、連体留めにすることで、秋の風物をそれと指摘することもなく無限遠に含意する超絶技巧。死を前に絶対的な孤独を半ば覚悟しながらも、それでもまだ人の温かみをどこか求めているかのような切なさ。人間存在の極限を、深まりゆく秋になぞらえるかのように動的に描写するのに、たった17の文字列でしてのける。こんな人間がこの国には居たのです。



秋味に舌鼓を打ちつつ、ふと想起した一句を前にとてつもなく卑小な気分になりながら、芭蕉という人間の人間臭さにそれでもどこか慰められもしているかような、不思議な気分の今日のスタバでした。