既に2ヶ月前の話だけど
小学校時代の
同窓会に参加した。

7年ほど前にも
呼ばれたのだけど

参加しようにも
参加出来ない
のっぴきならない事情があり

皆と顔を合わせるのは
20年ぶりだった。

「ならちゃん
今仕事何してんの?」

「ヒモ」

「すごいね~
どうやったら
なれんの?」

20年の年月を
感じさせず旧交を温めた。


「やばいよ、ならちゃん
声はでかいしドス効いてて
みんなビビって
ひきまくりだよ」


少々はしゃぎ過ぎたか?


私が通った小学校は
県境の小さな学校で

1年生から卒業まで
1クラス同じ顔ぶれで
成長したので

集まりもよく
妙に結束力が強い。

その中のひとりに
オデキと呼ばれる奴がいる。

40歳にもなって
またオデキなどと呼ばれるとは
いささか残念な奴だが

小学校高学年のころには
身長が175cmを超え
飛びぬけてデカかったのだが
中学からはさほど伸びず
至って通常の大きさに留まるという
話のネタにもならない
やっぱり残念な奴だ。

私とは小学校時代から
特に仲が良いわけでも
悪いわけでもなく
中学に入ってからは
なんの付き合いもなく

それこそ
顔を突き合わせて話をするのは
30年近くぶりだった。


オデキは
勉強はそこそこ出来る奴で
電機または電子系に進みたいという希望通り
高校は県内トップの
工業高校に進んだのだが

3か月ほどで自主退学し
翌年ワンランク上の
工業高専に入り直した。

それを風の噂で聞いた
同じ自主退学組の私は
自分との違いを痛感したが

「よほど勉強したいんだな」

程度の感想だった。

ヘタな大学を出るよりも
工業系では就職も
引く手数多の高専を
卒業したオデキに

「今何やってんだ?」

なんの気もなく聞いてみた。
ただ隣に座ってやがったので
仕方なく会話をしてみた
だけのことだ。


「いやぁ・・・・
皆さんにご迷惑お掛けしてます。」

「はぁ?泥棒でもやってんのか?」

「違うよ!!」

「じゃ何だよ」

「いやぁ・・・」

「隠したいのか?」

「そんな訳じゃないんだけど」

一度会話はここで途切れ
遅れてきた奴との
会話に移ってしまった。

良い感じに酔いが
回ってきた頃に
もう一度聞いてみたら
やっと答えた。

「東電だよ。なんだか肩身狭くて」

「馬鹿か?お前のせいじゃねぇだろ?」

「そりゃそうだけど・・・」

震災の液状化現象により
車が土中に沈んでしまい

「廃車だよぉ~」

と嘆いていたが

既に私は
他の奴を会話していた。


高校入り直してまで
望みの会社に入り
安泰とも言えるこれまでだったのに

上が馬鹿なばっかりに
リストラにまで
怯えるハメになるとは・・・

がんばれオデキ

ヒモよりは
少しだけマシだ。




新居には
カメラ付きインターホン
なるものが装備されている。

初めて扱うシロモノなので
早く誰か
鳴らしてくれないものかと
ウキウキしたのだが

早くもウザイ。

もちろん
いちいち出て行って
対応するよりは
格段に楽だし
モニターだけ見て
シカトすることも出来る。

でも
ついつい
正直に応対してしまう・・・

置き薬の営業くらいなら
「いらね」
の一言で
切ってしまうのだけど

先日の訪問者には
意表を突かれた。

以下はすべて
インターホン越しの会話である。

「突然すみません」

「はい」

「皆様にお伝えしたいことが
ありまして、訪問させていただいて
おります」

「は?」

お忙しいと思いますので
私が感銘を受けたお言葉だけ
お伝えして行きたいます


「え?」

「どんな災害も私達の心まで
砕くことは出来ない。主は・・・」

NTTの工事業者が線だけ繋いで
そそくさと帰ったばかりで
色々設定している最中だった。

忙しいと思ってんなら
玄関先でグダグダ
述べてんじゃねぇよ

とも思ったが
常識をもつ大人なので

「あ~あのもしもし?
本っっっっ気で忙しいんだよ。
帰ってくれ」
とだけ伝えた。

なぜ見知らぬアンタが
感銘を受けた言葉など
聞かねばならぬ?

俺が今もっとも必要で
聞きたいのは
失念したパスワードだ!





引っ越してから
1週間。

毎日毎日

必ず侵入者が
現れる。

ハエ目(双翅目:そうしもく)
に属する昆虫のうち
ハエ亜目(短角亜目)
環縫短角群(かんぽうたんかくぐん)
ハエ下目(Muscomorpha)に属する

通称ハエだ。

追い出しても
殺しても

毎日1匹づつ
どこからか現れ

部屋を移動する私に
追随してくる。

今日はいないな
などと
油断していると

洗濯物を干そうと
ベランダのサッシを
開けた途端に

「邪魔するよ!」

と言わんばかりに
侵入せしめる。

私が引っ越してきた翌日
階下の住人が
入念に掃除をして
出て行ったのだが

もしや誰かの
遺体を隠して・・・・

それじゃ
1匹じゃ済まないし
強烈に臭うはず。

そもそも
なぜ1匹だけなんだ?

そしてなぜ
私の後を付け回す?


そんな事どうでも
良いから仕事しろ?


了解!