新居には
カメラ付きインターホン
なるものが装備されている。

初めて扱うシロモノなので
早く誰か
鳴らしてくれないものかと
ウキウキしたのだが

早くもウザイ。

もちろん
いちいち出て行って
対応するよりは
格段に楽だし
モニターだけ見て
シカトすることも出来る。

でも
ついつい
正直に応対してしまう・・・

置き薬の営業くらいなら
「いらね」
の一言で
切ってしまうのだけど

先日の訪問者には
意表を突かれた。

以下はすべて
インターホン越しの会話である。

「突然すみません」

「はい」

「皆様にお伝えしたいことが
ありまして、訪問させていただいて
おります」

「は?」

お忙しいと思いますので
私が感銘を受けたお言葉だけ
お伝えして行きたいます


「え?」

「どんな災害も私達の心まで
砕くことは出来ない。主は・・・」

NTTの工事業者が線だけ繋いで
そそくさと帰ったばかりで
色々設定している最中だった。

忙しいと思ってんなら
玄関先でグダグダ
述べてんじゃねぇよ

とも思ったが
常識をもつ大人なので

「あ~あのもしもし?
本っっっっ気で忙しいんだよ。
帰ってくれ」
とだけ伝えた。

なぜ見知らぬアンタが
感銘を受けた言葉など
聞かねばならぬ?

俺が今もっとも必要で
聞きたいのは
失念したパスワードだ!