手術室に到着。
扉が開く。
深呼吸して中へ。
「蓮華さんこんにちは。」
？？？
何だか懐かしいこの声…
声の方を見ると
クリニックの主治医がいた。
4日前に会ったばかり。
…ちっとも懐かしくない。
「先生なんですね。」
とんちんかんな挨拶。
「そうです私です。」
負けずにとんちんかん。
そういえばクリニックの主治医が
出張で来て手術してくれるって言ってたな。
ちゃんと覚えとけ。
じゃあ一緒にスタンバイしている
満面笑顔のおっさん医師は？？
術後の経過を見てくれるってことか。
2人もいてくれるなんて安心。
全てを任せよう。
「よろしくお願いします。」
右腕を伸ばしてベットに横になる。
銀の布が全身にかけられる。
「まず麻酔をしますね。
少し痛いかもしれないけど
頑張って下さい。」
右腕にヌーンとした痛み。
すぐに感覚がなくなった。
「それでは始めます。
何かあったら声かけて下さいね。」
何かに引っ張られてるような
不思議な感覚が続く。
痛みは全然ない。
「大丈夫ですか。」
常に声を掛けてくれる。
局所麻酔なのに
またしても睡魔が襲ってくる。
ウトウト。
するとおっさん医師の声がする。
「蓮華さんの両親インフルエンザなんだって。
週末大変だったらしいよ。
ねー蓮華さん。」
まさかの世間話。
しかも話振られたし。
「はい。大変でした。」
「今流行っているから気をつけないとね。
ねー○○先生。」
今度は主治医に話振ってるー。
「あぁそうですね。」
そっけねー。
そりゃそうだ。
現在手術真っ最中。
「今から深いとこいきますね。」
ちょーっと待った。
淡が絡む。
「先生咳してもいいですが。」
「どうぞ。」
ちょっと咳込む。
「大丈夫です。」
するとおっさん医師。
「布かぶっているから暑いんだね。」
確かに。
暑いしへんちくりんな臭いがする。
「ここ持ち上げておいてあげるね。」
顔の部分の布を上げてくれる。
呼吸がしやすい。
ナイスおっさん！
その後も色々話をする。
柔らかい口調。
声も優しい。
耳にすんなり入ってくる。
最初はビックリしたが
おっさんなりに緊張しないように
配慮してくれているのかも。
それか単なる話し好きか。
だけどほんとに手術中なの？
というぐらいリラックス出来た。
「縫合しますね。」
早っっ。
おっさん効果ですごく短く感じた。
「終わりました。」
包帯をグルグルに巻かれる。
「それでは蓮華さん
明日クリニックでお会いしましょう。」
…そうだった。
帰りに寄らなくちゃいけないんだった。
「全然痛くなかったです。
ありがとうございました。」
笑顔の主治医。
いつもはクール。
初めて笑った顔を見た。
夕飯までは
安静にしているようにとのこと。
当日は腕を動かさない方が良いが
利き手側なので箸を持ったりぐらいなら
許容範囲内らしい。
時計を見ると4時少し前。
濃密な時間だった。
看護師さんと部屋に戻る。
「何かあったら呼んでくださいね。」
まずは殿にメール。
無事に終わったことを報告。
電話が出来る個室へ行き
おかんに電話。
「今終わったよ。全く痛くなかった。
インフルエンザの調子がどうなのさ。」
「ていうかあんた
安静にしていなくていいの？」
見えてんのか？？
さすがおかん。
「ほんとはダメだから手短に。」
両親とも熱は下がったらしい。
そりゃ良かった。
「今日は付き添ってあげられなくて
本当にゴメンね。」
…たぶん菌を運んだのは私。
「そんなこと気にすんな。
くれぐれも殿をよろしくね。」
おかんの元気な声を聞いて
一安心。
部屋に戻る。
一時はどうなることかと思ったが
ポートも入った。
やっと乳がん治療の
準備段階までこぎつけた。
よっしゃー！！！
とりあえず夕飯まで寝よう。
おちるように眠りについた。
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