Geometric Multiplicity: eignvectors (2) | Chandler@Berlin

Chandler@Berlin

ベルリン在住

ある行列の eigenvector が独立しているというのは嬉しい性質である.なぜなら,ある行列は eigenvector をカラムベクトルとする行列 S によって次のように対角化されるからである.

A = S λ S^{-1}

たとえば,

$Chandler@Berlin
である.

これの何が嬉しいかというと, A をかけ算するのが簡単になる点である.

$Chandler@Berlin


10回掛けてもあまりたいしたことではない.というのもλが対角行列なのでこの power は簡単だからだ.

A^{10} = S λ^{10} S^{-1}

かけ算が簡単になるとなぜ嬉しいかは, eigenvector を考えるのがなぜ嬉しいかと同じことである.eigenvectorはある行列の中の独立した basis であり,eigenvalue を使えば行列が一つのスカラ値で示されるというのが嬉しい.

しかし,ここでこの S 行列のカラムが独立していないとこのようにはいかない.それはS^{-1}が存在しないとこのこの式が成立しないからである.

ここで最初の私の疑問に戻る. eigenvalue λ が重解を持つ場合に,それは独立した eigenvector の数に関係しているかということである.これには実は名前がついている.

- Geometric multiplicity (GM): 独立した eigenvector の数
- Algebratic multiplicity (AM): eigenvalue の multiplicity

実はこれらには厳密な関係はない.(関係はある GM <=AM).

たとえば,4x4 の行列で AM が 3 の場合 (異なる λ の数は2), GM は2 になるかというとそうとは限らない.その例を示しておこう.

$Chandler@Berlin

ところで,この S はちょっと特殊で Hadamard 行列と言う.以前,私はこの行列を求める話を書いた.この行列は symmetric で orthogonal な上に 1 と -1しかでてこないというすごい特殊なやつである.

また,単位行列自身もこのような例である.4x4の単位行列の固有値は λ= 1,1,1,1 であり,固有ベクトルは
$Chandler@Berlin

の4つである.私はこれに気がつくまで一日かかってしまったが,Marcと話をしていたら,彼は最初の私の質問で単位行列の例を挙げてきた.

ただ,一般の場合には一つの λ の値に対して一つの eigenvector が対応するというのが普通だと今でも思っている. AM と GM の厳密な関係というのはあるのだろうか.独立した eigenvector の数というのは A - λ I のnull space の次元であるが,これは AM とどうかかわってくるのか.もう少し勉強しないといけない.

参考文献:
Gilbert Strang, Introduction to Linear Algebra, 4th Ed.