Eigenvalue and transfer function (5) | Chandler@Berlin

Chandler@Berlin

ベルリン在住

Eigenvalue and Eigenvector

Vector case

次にベクトルに関して考えてみよう.読者は行列の計算に関して多少知っていると仮定する.行列はベクトルに作用して新しいベクトルを生み出す.たとえば,回転したり,拡大縮小したりする.この時ベクトル x に行列 Aを作用させるなどと言う.たとえば行列 A は回転という作用だったりする,すると新しく b が出てくるというわけである.

A x = b


これだけ見ると,スカラと同じような形なのだが,Aは通常とても複雑で,何なのかわかりにくい.しかし,もし,

Ax'= λ x'


のようなスカラλ とx' があったらどうだろう? もしあったら,

複雑な A は実は一つのスカラ λ と同じことをすることがあるということがわかる.
実は私はこの文が Eigenvalue について全てを語っていると思っている.この一文を理解するためにこの blog を書いているようなものだ.どんな x に対しても,というのは無理だが,ある特定の x' に対してならλ があるという場合だ.

これはすごい.100x100の行列の性質の「一面」を,一つのスカラで示すことができるからだ.100x100の適当な行列があった時,それが何をするのかなんてのは普通はわからない.

ここで,A はベクトルに対して「何か」をする「操作」だった.(例えば拡大,縮小,回転など) そういう操作の正体がこの λ で示されることがある.こういうλ とそれに対するx'を,行列 A の正体,ではなく,固有の値と固有のベクトルということで,固有値(eingenvalue),固有ベクトル(eigenvector)と言う.

なんで固有値(eigenvalue)とか固有ベクトル(eigenvector)というのを考えるのかわかっただろうか.行列 A そのものをそのまま理解することは難しいので,その一面で特にわかりやすものを取り出して行列 A を探ろうというのが,固有値を使う解析なのである.

ところで,一つの nxn の行列 A (n>1) に対して普通,固有値は一個ではない.一個で全部示すことができるならばいいんだが,世の中そんなに甘くはない.普通は複数あることに注意すること.だから行列の「一面」という言葉を使ったのだ.