Veach 論文に関する私的補足の blog を書いた理由 | Chandler@Berlin

Chandler@Berlin

ベルリン在住

これは論文の話というよりも,私自身の話で,数学や計算機科学の話ではありません.よろしかったらおつきあい下さい.

今日(2010-9-15(Wed))ついに Veach の論文を読み終えた.すばらしい論文だ.まだところどころわからないところはあるが,アイデアに関してはある程度の理解を得ることができたと思う.この論文は私の専門からは外れるが,会社の基礎技術に関連しているので,同僚らからすすめられていた.しかし印刷しただけで長いこと本棚に置いてあった.ただ,この4月に一部分は読み,とても面白いとは思っていた.

私の現在の仕事は顧客の対応で,顧客が我々の製品(library)を使ってプログラムを作る手伝いをしている.私は入社して最初の二年ほどは開発の部署にいて,才能のある同僚と良い上司に恵まれた.製品の開発に貢献できたことはとても楽しかった.2008年,我々のチームは製品を作り,アプリケーションは他の我々の製品の速度を10倍以上にするという成功を収め,そのデモも夏に行なわれた,しかし 2008 年秋の危機のため,製品ができた直後で顧客のいない部門は解散するということになり,私の部門は消滅した.私はちょっと悲しかったが,理解もした.私は顧客に専門に対処するという部署ができてそこに移った.最初は私はお客様と直接話をすることもできなかったが,今は重要な顧客と直接やりとりするなど責任は重くなった.また,顧客の要求に対応するために,同僚に仕事を割りふるようになった.あるプロジェクトでは上司の仕事のスケジュール管理までした.マネジメントの仕事が増えた.結構マネジメントも上手くこなせる自分に気がついた.しかし,今年の五月になって,私は技術的な問題を解くことがなくなったことに気がついた.

私は技術的な問題を解くことが好きであり,だからこの仕事についたはずだった.それに気がついた途端,私は幸せでなくなってしまった.これは問題だ.問題を解くのは私の得意なことだ.私はこの問題を解くための計画をたて,実行に移すことにした.私の上司は理解がある方なので,まずは上司に相談し,6月には公式に上層部に会合を申し込み,技術的な開発に戻して欲しいと頼んだ.具体的な開発チームを挙げたところ,私では能力的に無理だろうという返事を頂いた.確かに私には経験が不足している分野である.ただ,そのチームには経験豊富な開発者が数人いる.そのチームの一員として会社に貢献するチャンスが欲しいと思った.知識ならば学ぶことができる.私は上層部との会合で,論文などを読んで勉強すると申し出たが,私に必要な知識は5年や10年勉強したところで何ともなるわけではないことだという意見を頂いた.私は挑戦が好きだ.この言葉は励みになった.論文を理解したいと思った.それに,ここにはプロの専門家の友人が多数いるので,疑問をすぐに聞くことができる.これ以上学ぶに最適の環境はないだろう.ここまで読んだ方はなぜ私が突然 Veach の論文を細かく読んだのかおわかりだろう.私は他にもいくつか学んでいることがある.これらはいずれも会社にとって有益になる知識だと思っている.

Veach の論文はとてもわかりやすく,読むのは楽しかった.いくつかの数学は私の使っているものと同じであり,なじみもあった.たくさんのことを学ぶこともできた.その上,今日,私は自分のした約束が守れてとても嬉しい.

謝辞

これまで私の多数の馬鹿げた質問に辛抱強く答えて下さった友人達に感謝します.その結果の記録の一部が20回に及ぶ「Veach 論文に関する私的補足」である.このテーマの blog はもう少し続く予定である.