Cool な Matrix (1) | Chandler@Berlin

Chandler@Berlin

ベルリン在住

まずは簡単な線形代数というものはなにかなという導入をして,そして Cool なMatrix の話をしようと思う.

ここでの Matrix と言うのは映画の Matrix ではなくて,数学の Matrix である.Matrix というのは何かというのはそれだけで長い話になってしまうが,簡単に言えば線形の演算を書く方法である.

とはいっても,これでは Matrix という言葉を線形の演算と言いかえただけである.人を煙に巻いているようである.これは「Cat とは猫のことである」,みたいに翻訳したのとあまり違いはなくて,猫を知らない人には全然意味がない.

線形の演算とはもう少し言えば,足し算とかけ算のできる世界で可能な演算である.不思議なことに日本語で「線形代数」というとなんかそれだけですごい感じがしてしまう.なぜなんでしょうね.高尚なことをしているとか勘違いする人すらでてきて,まったくやれやれと思うこともある.一方で,まったく同じことなのであるが,線形代数と言うかわりに足し算とかけ算を勉強しています,というと,なんか「いい大人が足し算とかけ算を勉強していますだって?」みたいなことになってしまう.

足し算とかけ算というのも,結構奥が深い.それは多分,一つの数(スカラ)というものから抜け出して,ベクトルというものが足せるということになってその深さを増したんだと思う.たとえば自宅から会社まで 5km で,自宅から映画館までは 10 km,でも会社から映画館まで 11 km というような場合もあるだろう.3つの建物,自宅と会社と映画館が一直線上に並んでいる場合には単純な足し算で距離の関係がわかるが,そういうのはまれである.そういう場合には方向というものも重要である.でも方向を含めたものもやっぱり計算できるはずで,そういうものをベクトルというもので示したりする.このようなある意味``拡張された''数のようなもの(*注)というものでもやっぱり足し算やかけ算ができるとうれしいわけで(会社から映画館に行く距離がわかったりするから),足し算やかけ算とあなどることはできない.でも,結局は足し算かけ算が線形代数のやっていることではある.

思ったよりも長くなってしまった.今日はこのへんにしておこう.

(*注) ベクトルを拡張した数と呼ぶのは,どっちが大きいのか比較したり,割り算をどうするんだ,とかいう普通の 3 とか 7 とかいう数でできることがはっきりしないので語弊がある.もし,数というものは大小の比較ができるものであるとか,割り算ができるものであるというふうに定義されるのであれば,ベクトルを数と呼ぶことはできない.こうなると数とは何かという問題になるので,ここでは深入りしないことにしよう.こういう数についての話はペアノの数という話で以前私はブログに書いたことがあるので興味があったらそちらもどうぞ.また,他にもいろんな種類の数があります.