λ計算と函数 | Chandler@Berlin

Chandler@Berlin

ベルリン在住

(英語版 )

λ計算は計算とつくだけあって,数も計算できるが,実際,数というものをつきつめて考えていくと,よくわからなくなってしまう.たとえば数を知らない小さな子供にどうやって数というものを教えたら良いのだろうか.ただ,数についてのいくつかの性質は挙げることができそうだ.まず,どう読むかはどうでも良いことである.ガイドにおいて地球という既に失なわれて久しい星には多数の言語が乱立していた.たとえば英語とかドイツ語とか日本語とかいうものである.面白いことだが,どの言語にもどうやら数というものはあるようだ.そしてそれぞれ 1 2 3 (one two three, ein zwei drei, いち に さん) のようにいろいろな読み方がある.しかしどう読んでもその表すことは同じはずである.ガイドの内部では 1 2 3 は(ニシン サンドイッチ ニシンのサインドイッチ)と読んだりするかもしれない.しかし,しつこいようだが,結局どう読むかはどうでも良いことである.つまり読み方とか関係ない何かが,数の本質にはあるはずだ.ガイドの内には「何か」がつまっていて,読者に応じて「何か」は読者に理解できるような形に変換されて提示される.一つ前の章でガイドの内部表現と言ったのは,ガイドの内容そのものである.何語で書かれているかは本質的にはどうでも良いのだ.

λ計算とは函数について考える数学である.函数または関数(function)という便利な考えが数学にはある.何かを入れると何かが出てくる自動販売機のようなものだ.普通,1 アルタイルドルは何シリウス円なのかなどということを教えてくれる箱のようなものと考えることが多い.ガイドの中にもそういう函数があるのではないかと思う.

別に函数は箱である必要はないのであるが,私の場合,最初にたまたま自動販売機の例えで教わったせいか,はたまた函(はこ)という文字があたっているからかわからないが箱を思いうかべてしまう.このような函数を地球では標準的に fとか g とかと教えるが,教える方も教わる方もそれが何かはあんまり気にしなかったり,結局よくわかっていないようだ.コンピュータ学者はわかっていないことを素人に知られるとたいへん困るので,函数というような既にポピュラーになってしまった言葉を使わずに,いろんな言葉を使う.

λ計算というものもたいていの計算機学者は素人を誤魔化すための言葉として使っている.「不動点定理むにゃむにゃ」「計算可能性なむなむ」とかいう大学の教授がいたら,騙されないようにしないといけない.特にスーツを着ていて偉そうなのはあやしい.

でもλ計算は函数というのが何かを考える時には便利なこともある.ま,私もわかっちゃいないので,「チャーチロッサー性がむにゃむにゃ」とか言ってここで話を終わりにしても良いのだが,ものを書こうなどという人間の性で,ちょっとは知っていることを自慢したかったりするので,ガイドの中ので有名なロボット,マービンがやってくるまでは話を続けよう.ところでマービンは最低の気分を持っている最高のロボットのことである.シリウスサイバネティクス社が300人分の頭脳を持った天才ロボットを試作したところ,天才と正気は両立しないということが判明した.それがマービンだったりする.

私の大好きなマービンがようやく登場したので,今日はここまでにしよう.