スロバキアとポーランドの国境に沿って、
東西へと延びるタトラ山脈に挑む。

『レヴォチャ』から『ポプラド』と言う大きな町を経由し、
そこから巨大な壁のように垂直にそびえる山へと、
覚悟を決めて一気に走り出した。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Zakopane01


『ザコパネ』と言うポーランド南部の町を目指し、
延々と続く山道をほぼ自転車を押したまま歩く。

一日で着くのは到底無理だと思っていたので、
行ける所まで行こう。と、気楽に考えていたのだが、
想像以上に厳しい道と寒さに心が折れそうになる。

雄大な自然の中に身を置くと、
自分の存在の小ささが際立ち、
美しい風景が一変し脅威に感じる。

スロヴァキアの国家は『タトラに光る稲妻』
と、言う題名らしいのだが、
実際あちこちに落雷の痕跡が残り、
天候が悪化しない事を切に祈った。

日が落ちた頃から一気に気温が下がったので、
慌てて近くのモーテルに入り宿をとった。

翌日も朝から走り出し、しばらく音楽を聴きながら走っていると、
いつの間にかスロヴェキアを抜けポーランドへと入国していた。

ただ何処までも続く山道を、何も考えず、
修行僧の様に自転車を押して延々と進むだけで、
本当に体力的にも精神的にも精一杯な状態だった。

そんな状態だった。。。

と、言うのは言い訳なのだが、
途中の景色を写真に撮ったのだが、「SDカードを入れ忘れる。」
と、言う初歩中の初歩の失敗を人生で初めてした。
(まあ記憶には嫌って言うほど残ってるので良いか。)

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Zakopane06


『レヴォチャ』を出発して2日で何とか『ザコパネ』に到着。

基本的にはほぼ平原のポーランドにおいて、ザコパネは国に
唯一ある高原の避暑地であり、多くの観光客が訪れる。
町も観光化され、テーマパークの中を歩いているようで、
目抜き通りには土産物屋が軒を連ね、ポーランドの
伝統音楽があちこちのレストランから聴こえてくる。

雰囲気は軽井沢に本当に良く似ていて、
昔歩いた旧軽銀座を思い出した。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Zakopane03

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Zakopane02


ハイシーズンを終えても、紅葉やトレッキングを楽しむ客も多く、
小さな町には似つかない人の多さに驚いた。

あいにく天気が悪く、遠くの景色は楽しめなかったのだが、
国道をトラックと併走しながら吸う空気とは明らかに異なり、
マイナスイオンに満ち溢れた澄んだ酸素が肺を満たす。

少しここでのんびりしようとも考えていたのだが、
天気が回復するどころか翌日から崩れ始め、
2日後には雪が降ると天気予報に出ていたので、
一泊のみで山を下らざるを得なかった。

朝晩の気温は0度前後で凍える寒さだ。

小雨も降っているが、山を越えれば天気も変わるだろう。

ザコパネでゆっくり滞在するのは、また次の機会と言うことで、
荷物をまとめてそそくさと山を下り、『クラクフ』を目指す。

旅を再開してから感覚を取り戻すべく、
強引に早足で自転車を走らせてきた。

中欧で最も興味深く、以前より訪れたい。
と、思っていた、『クラクフ』が目前に迫った。

秋が極端に短く、一気に冬へと変わる季節の境目を、
紅葉の街路樹に囲まれながら山を下るのだった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Zakopane04

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↑無事なんとかポーランドへと入国しました。
スロヴァキアやハンガリーに比べると道が走りやすいです。
自転車世界横断!!TERU-TERU project-Spišský Hrad04

国土のほとんどが山地のスロヴェキアをゆっくりと走る。

スロヴァキアの世界遺産『スピシュ城』を見る為に、
コシツェから北西へと進路をとった。

上りと下りを繰り返しながら、少しずつ高度が上がる。

山地の中で自然が見せる景色は、実に雄大で美しいのだが、
坂道の険しさと厳しさは、景色を楽しむ余裕をなくさせる。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Spišský Hrad01

何処まで続くのかアップダウンを繰り返し、
ようやく峠を越え、坂を下っていると、
突然平野の中に悠然とそびえる城が見えた。

町を見下ろす高い丘に立つ巨大な城は、
雲の隙間から射す光に照らされ、
神々しく、まさに神がかった姿に写った。

ヨーロッパ最大級の城である『スピシュ城』は、
1780年の火災で焼け落ちて、廃墟と化しているが、
現在は復旧作業が進んでいる。

シリアの『クラック・デ・シュバリエ』を見た時の感動とは別に、
その規模の大きさに圧倒されながら、さらに
他を寄せ付けない程に、高い丘に立つ城を見上げる事で、
崇高であり手が届かない存在の様な感覚を得た。

周辺の城下町はこじんまりとしているが、
趣があり美しく、そこからしばらく城を眺めた。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Spišský Hrad05

$自転車世界横断!!TERU-TERU project-Spišský Hrad08

自転車世界横断!!TERU-TERU project-箭内孝行 SLO


東欧や中欧を旅行する人の多くは、
この周辺を素通りしてしまいがちだが、
ここまで来たのなら是非足を運んで見てほしい。

自然の風景の中でどの角度から見ても、
ここまで際立って美しく写る城はそう滅多には無い。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Spišský Hrad03

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Spišský Hrad02

その日はそこから10km程西へ走り『レヴォチャ』で宿をとった。

ツーリストインフォメーションで紹介された『OALA』と言う、
一泊10ユーロの安い民泊は、町の中心部に近く、
またオーナーもやさしく親切で本当に素晴らしい。

庭も綺麗に整備され、部屋も広くて清潔であり、
「しばらくここに住みたいな~。」と、思える。
今まで何度も民泊を利用したが、
間違いなくトップクラスの良さである。

少々疲れも溜まっていたので、
レヴォチャで2泊し次の目的地へと進む。

朝の澄み切った冷たい空気に首をすくめる事で、
季節が急激に変わって行くのを感じるのだった。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-レヴォチャ01

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Spišský Hrad07

自転車世界横断!!TERU-TERU project-レヴォチャ03
↑宿泊したOALA。
自転車世界横断!!TERU-TERU project-レヴォチャ02


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次回はおそらくポーランドから!
ブダペストを抜けて北東に続く国道3号線をひた走る。

都市を抜けるとすぐに、牧草とトウモロコシ畑が
延々と続く農村風景へと一変した。

ブダペストで5泊し、十分に体を休めた事で体力もつき、
心地良い風がかすかに背中を押してくれたおかげで、
一日で140kmも走ってしまった。

晴天の一日が最後に見せる夕焼けは実に美しく、
思わず見とれていると、いつの間にか辺りは暗くなり、
完全に夜へと変わる寸前に、適当な宿に滑り込んだ。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing01

ハンガリーは西部の町に比べると、東部の方が整備され
道路の状態もよく、町並みも美しく物も多く揃っている。

貴腐ワインで有名なトカイワインの産地も近く、
ワイン生産に適した地形や気候のせいか、
道路の脇には無数のブドウ畑が広がる。

様々な種類のブドウは、しっかり番号で整理され、
丘の傾斜に沿って、美しく綺麗に整然と並んでいた。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing02

ハンガリー最後の宿泊地は『ミスコルク』と、言う
割と大きな町だったのだが、土曜日であった為に
ツーリストインフォメーションが閉まっており、
宿情情報も、地図も無いままフラフラと2時間程
当ても無く町をさまよう羽目になった。

オフシーズンで多くの宿はクローズしており、
適当な宿が見つからず、段々イライラが募り、
「こう言う時は逆に良い所に泊って気を紛らわそう。」
と、町の中心部にある星付きホテルに泊る事にした。

流石に快適なホテルだけあって、
何不自由なくゆっくりと時間を過ごせた。
(まあ、たまには良いかと自分を説得。)

『ミスコルク』は、ハンガリー第3の都市でもあるのだが、
こじんまりとしており、派手さは無く、静かな地方都市である。
山々が近くに迫り自然に囲まれた町は、古い建物も多く残り、
趣深くもあり、町の目抜き通りには古いトラムが走る。

翌日目が覚めると、日曜骨董市が開かれており、
その目抜き通り沿いの歩道には様々な品が並び、
各地から多くの観光客が訪れていた。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing03

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing 12

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing05
↑何かのジンクスなのだろうか?
小さな橋には無数の南京錠がぶら下がっていた。
自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing04


ハンガリーでの最終日も真っ青な晴天に恵まれ、
しかも強力な南風に終止背中を押されながら、
ブダペストを出発して3日でスロヴェキアに入国した。

国境は驚くほどに荒廃しており、
天井の板は剥げ落ちて地面に落ちている。
廃墟のゲートをくぐるだけであった。

流石にシェンゲン協定実施国圏内に入っただけあり、
出入国のわずらわしさはなくなったものの、
国が変わる時の緊張感や期待感は薄れてしまう。

風景も突然変わるわけも無く、
そのままスロヴァキア南東部の町、
『コシツェ』まで走った。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing 09

スロバキアは最近まで独自の通貨を使用していたのだが、
2009年からユーロを導入して以来、現在は平行して
二つの通貨が流通している。

おそらく来年には完全にユーロに移行するであろう。

町に着くと、なにやらお祭りらしき催しが開かれており、
近づいてみるとマラソンのイヴェントであった。

既に終わりかけらしく、次々とゴールするランナーと
撤収を始めるスタッフとが混在している。

ヨーロッパのみでなく、アメリカやアジアからもランナーが集まる
かなり大規模なイヴェントだったようだ。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing 07

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing 06

ぼんやりと眺めながら写真を撮っていると、
色々な人から話し掛けられ、逆に写真を撮られる。
「日本から一年半位かけて自転車で来たよ。」
と、言うと皆「クレイジー」と声を揃えて驚く。

地元のテレビと新聞、オーストリアの新聞社からも取材を受け、
どうやって来たのか?本当に一人できたのか?
これから何処に行く?TERUTERU坊主って何だ?
等々、一時間程受け答えをした。

「そう言えば今までも何度か同じような事はあったけど、
その後どう掲載されたかはチェックしないので不明だな。」

そんな事を思いながら、
「先を急ぐので!」
と、適当に切り上げて宿を探した。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing 10

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing 08

スロヴァキアは未だに旧共産圏の雰囲気が至る所に見られる。
古い教会や町並みも多く残るのだが、居住区の多くは
巨大な四角い壁のようなコンクリートブロックである。

重厚な見た目には反して、造りが荒いせいで、
至る所が剥げ落ち歪んでいる。

古き良きヨーロッパの町並みと、
旧共産的な町並みとが重なり、
何とも奇妙な景色を写し出す。

夕日が沈もうとする中、
町の西部にある丘の上から町を見下ろす。

と、言うのも宿が見つからない。
町に着いて3時間近く経つ。

完全に黄昏ながら途方に暮れていた。

日曜である事でインフォメーションも閉まり、
思いも寄らぬマラソンイヴェントのせいで、
町の安ホテルは全て満室。
調べておいたホステルも全て満室。

治安は悪くは無いと思うが、
街中でのキャンプは危険が伴う。

さあどうしよう?

しばらく暮れ行く町を眺めながら考えていたのだが、
辺りの人に声を掛けまくり、なんとか適当な宿を聞き出し、
値段は安くは無かったものの、勢いでチェックインした。

自転車世界横断!!TERU-TERU project-Hungary crossing 11

予想外の出来事は、
予想外だからこそ起こりえる。

まさかフルマラソンが開かれているとは思わない。

しかし、このイヴェントの情報が事前に分っていたのなら、
一度参加してみたかったと思った。

フルマラソンは未だに走った事はないのだが、
「今ならそこそこ走れるのではないだろうか?」

スロヴェキア入国初日は、予想外の出来事と遭遇する事で、
僕に「フルマラソン」と言う、新たな野望を与えたのだった。

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スロヴェキアに入国しました。国土の全てが山地なので苦労してます。
何度か修復を重ねた靴も、本当にボロボロになってしまいました。。。